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本のタイトルからの考察

最近、書店の会計コーナーには『ROIC経営』や『資本コスト経営』という言葉がたくさん並んでいる。ROICとか資本コストとかのややこしい言葉がついに一般化したのかと驚いた(笑)

経理や財務の専門家ならROICも資本コストも知っていると思うし、上場企業の経営者なら知っていて当然って感じはある。ただ、一般的な書店に大々的に並んでいると中小企業経営者まで浸透している言葉なのか?と疑問に思ってしまう。

購入はしなかったが、興味が湧いたので調べてみると、2018年に『コーポレートガバナンス・コード』というものが改訂されてから自社の『資本コスト』を的確に把握して事業経営に活用することが求められるようになったらしい。そして、自社の『資本コスト』を意識している上場企業は約半分程度だったらしい。

その当時の上場企業数って3,800社くらいだからその半分ってことは約1,900社。日本の企業数が380万社くらいだから0.05%程度が『資本コスト』と意識していると。なんだかとてつもなくニッチな感じがするけど、今後の経営方針の中心的な存在になっていくってことなんだろうな。

たしかにうちの親会社さんもROICは活用し始めているし、便利な指標ではあると思う。資本コストも上場企業ならさほど難しくなく計算できる。

ちなみにROICは、Return On Invested Capitalの略称で投下資本利益率といわれるもの。
計算式は『NOPAT÷投下資本』となる。
このNOPATってなんやねんって話だと思う(笑)これは税引き後営業利益のことで、計算式は『営業利益×(1-実効税率)』という感じ。

仮に営業利益が100で実効税率が30%だとすると、
NOPATは100×(1-30%)=70ってことになる。

次に『投下資本』だけど、これは『有利子負債+株主資本』とする場合と『運転資本+固定資産』とする場合がある。まあ、右目で見るか左目で見るかって話しで、BS(貸借対照表)の右側を使うか左側を使うか。BSの右側はお金の調達先を表していて、左側はそのお金の運用先を表している。

基本的にはどっちもほぼ同じになるんだけど、会社全体で考えるか事業セグメントごとに考えるかとかで細かく違ってくるから、その辺を知りたい方は専門書を確認して欲しい。

求められたROICは『事業活動のために投下した資金を使ってどれだけ本業で稼いだか』がわかる指標となっている。『投下資本』が有利子負債と株主資本となっているのを見てわかる通り、資金提供者の視点で事業を評価する指標ってことだね。

資本コストの方はもっとややこしくて、『負債コスト』と『株主資本コスト』の加重平均っていうのが一般的で、ってちょっと何言ってるかわからないよね(笑)

まず『負債コスト』ってのは、借入金にかかる金利のこと。なので『無借金経営』とか言ってる会社には関係ない。これは、銀行さんがお金を貸すのに求めるリターンのことだよね。

次に『株主資本コスト』ってのは、投資家さん達が求めるリターンのこと。自社の株式を買うという行為を通じてお金を出してくれているので少なくてもこれくらいはリターンしてねって感じかな。この『株主資本コスト』の算出が結構面倒くさい。専門書に任せるがCAPMと呼ばれるモデルで計算する。

で、負債と株主資本の加重平均で『資本コスト』が計算される。ちなみに、株主資本コストは負債コストよりも高くなる。借入金に対して嫌悪感を抱く経営者は多いだろうけど、実際は銀行さんのが少ないリターンでお金を貸してくれるんだよね。なので、『最適資本構成』という考え方が出てきて、負債コストと株主資本コストの加重平均が一番低くなるように借入額を調整したりする。まあ普通の中小企業には関係ない話だね(笑)

上場企業の経営は、『資本コスト』を上回る利益を上げ続けないと、株主に見放され株価が下がり他社に買収されるかMBOして上場廃止するか、資金不足に陥って倒産するかって悲しい流れになる。

なので、どちらも資金提供者の視点による指標の『資本コスト』と『ROIC』を重要指標として経営していきましょうってことなんだと思う。勝手な想像だけど。

ちなみにROICはいくつかの指標に分解できて『ROICツリー』というものが作られているので検索してみて欲しい。
税引き後営業利益を『税引前』に戻して、売上高営業利益率と投下資本回転率(売上高÷投下資本)に分けて、さらに売上高営業利益率を原価率と販売管理費率に分けてみたり。

こうやって分解していくとROICがなぜその値になっているのかの原因を探すことができる。投下資本回転率は悪くない(例えば小売業だと1.7倍が一般的)けど、営業利益率が低すぎるとか、営業利益率が低いのは原価率が高すぎるとか。そうやって掘り下げて課題や問題のある所を改善していく。

中小企業だと資本コストよりもROICの方が活用しやすいと思うので、ぜひ経理担当者にこれらの書籍を買ってあげて欲しい(笑)私にお仕事いただけるのならなお嬉しい(笑)

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