「ラジオの記憶」㉞「食欲の情報」--------『鈴木聖奈 LIFE LAB〜○○のおじ様たち〜』
カレーのレトルトを購入して、それは自分にとっては高価なものだったのだけど、最初に期待に届かなくて、なんだか悔しくて、もう一度買ったら、おいしくて、余計にまた食べたいと思っていたら、すぐに売り切れになってしまった。
だから、頭の少し上に、そのカレーの味をイメージしたような、形のない物体が浮いていて、それははっきりとしたものではないにしても、しばらくそのことが意識から離れないような時期があった。
そんなとき、カレー、という単語だけで、知らないラジオ番組を聴いてしまった。
鈴木聖奈 LIFE LAB〜○○のおじ様たち〜
それは、女優の鈴木聖奈がパーソナリティをつとめ、あるジャンルに詳しい「おじ様」たちを招いて話を聞く、という番組だった。失礼だけど、鈴木聖奈さんという人を知らなかったし、女性が年上の男性に話を聞く、というシステムを、なんとなく避けるような気持ちになっていたせいもあって、それまでは聞いたこともなかった。
個人的には、プロが昔から好きなので、どちらもプロ同士(話すプロと聞くプロ)が、きちんと話をする、ということを、ラジオはテレビなどと比べると、一人当たりの話す時間が長いからこそ、個人的な好みで言えば、聞いてみたい思いが強いので、よけいに聞いていなかったのだと思う。
でも、当たり前だけど、それは個人的な好みに過ぎないので、正しいわけでもなく、だから、ラジオもいろいろな番組があって、それぞれにリスナーがいて、成立しているのは、当然のことだった。
それに俳優だからといって、聞く力がないかも、などと思うのも、自分の偏見にすぎなかった。
カレーの気持ち
そのときは、「カレーのおじ様」として、元祖カレー研究家・小野員裕(おのかずひろ)という人が出演していた。
元祖、という表現をするのは、カレー評論家や、カレー評論家と名乗る人が今はとても多いことを改めて思い出させてくれたし、そのプロフィールを見ると、年齢的にも還暦を超えているし、横浜カレーミュージアムの初代名誉館長ということで、どこかで目にしていたはずなのに、すぐには思い出せなかった。
ただ、自分自身のカレーへの欲望のようなものがかなり高い時期だったせいもあって、今日はカレーのおじ様、という言葉で気持ちが集中し、カレー屋を紹介してくれるというので、少しボリュームを上げた。
カレー屋
ラジオを聴きながら、久しぶりにメモを用意した。
そして、その小野氏が、どうやら偶然に見つけて、おいしそうだと思って入店したら、その通りだった、という、さらに期待が上がるようなエピソードと共に紹介されたのが、『サンギュリエ』という全く知らないお店だった。場所は、東京・芝公園。
それも、大きなチキンがのったカレーがあって、それがとても柔らかくおいしいと聞いて、メージが浮かんで、やっぱり食べたいとも思ってしまったが、ほとんど外出もしないし、芝公園に行く予定もないし、と勝手に自分の中で思ってしまい、ちょっと元気もなくなった。
それでも、ここで聞かなければ、知らないままのはずだった。
しかも、塩ラッシーという、これも知らない飲料も美味しい店ということも知り、こうした情報を知らなければ、もし入店することがあっても、選ぶ候補から外してしまいそうな名前だった。
さらに、話題は、これまでも行ったことがあるし、今後も必ずいつかは寄る機会のある「CoCo壱」に移って、ちょっとうれしかったけれど、小野氏が言うには「3辛」から「4辛」がいいのではないか、という言葉があった。
私は値段と基準を知らないために、最初は「辛」を使わずに食べて、物足りず「2辛」で食べて、おいしかったのだけれど、これでいいのだろうか、という思いが残っていたことも思い出したので、次は「3か、4」と、ひそかに決めることもできた。
さらには、どこからその話に流れたのか分からないのだけど、グリーンカレーは甘い。レッドか、イエローにしている、ということも聞いたので、これまではグリーンカレーしか目に入っていなかったので、次は、レッドかイエローも食べてみたいと思えた。
カレーへの気持ちが高まっているときだったから、イメージするスピードもいつもよりも早いように、自分では思えた。
さらに、もう一軒、紹介されたのが『夢眠』(ムーミン)という店だった。その店は、昔は別の場所に長くあって、それが長く閉店していて復活し、その店も閉まった後に、移転して復活した、といった歴史も持つようだった。
時々、そうして閉店をしながらも、また復活して生き残っていく店はあるけれど、優れた店でないと、そういう過程はないはずだから、その話だけで、おいしそうだった。
虎ノ門という場所は、最近、美術館やギャラリーができたはずだから、もしかしたら行けるかも、と夜にラジオを聞いているだけで、ちょっと想像が外出していた。
それも、「ベーコンエッグ野菜カレー 辛さ4倍」がおすすめされていた。
今は、気持ちが前のめりだけど、それでも実際に行くことは難しそうで、そこまで聞いて、また来週になった。久しぶりに予約録音してしまった。
レトルトカレー
来週がちょっと楽しみというのは、珍しかった。
そして、その来週が来て、元祖カレー研究家・小野氏が、また話をしている。
紹介されるのは、レトルトカレーと知り、それならば、極端な話で言えば、翌日にも食べられるのだから、より食欲が具体的になった。さらには、長年の経験があるのならば、カレー屋と同様に、私が全く知らない名前が連発されるのではないか、と勝手に期待が高まっていた。
そこで、まず紹介されたのが「デリー」の「デリーカレー」。
まだ行ったことがないものの、有名なカレー屋といえば必ず出てくるのが「デリー」という名前で、これまでに何百回も聞いてきた店名だったし、コンビニで食べた「デリー」のカレーは、しっかり辛くて、おいしかったのを、すぐに思い出した。
それでも、販売しているレトルトは、具が入っていない、ということも聞いて、なんだかかっこいいと思ったのだけど、基本は鶏肉とじゃがいもを入れて欲しい、という言葉も聞くと、レトルトに一手間をかけることを想像するだけで、ちょっと気持ちの腰が引けていた。
ぜいたくなことで、恥ずかしいことでもあるのだけど、次に紹介してくれるレトルトカレーも、楽しみにはなった。
そして、出てきた名前は「稲川淳二の身の毛もよだつカレー」だった。
意外だったけれど、稲川淳二がカレーまで出しているのは全く知らなかったから、そこで、いったん落ちた期待が再び高まったのだけど、さらに続く話の中で、このカレーの監修を、小野氏がしていると知って、また落胆した。
それは、宣伝がからむと、すぐにガッカリしてしまう現代の人間の悪い癖なのかもしれないし、自信があるから紹介しているのだろうと思い直したのだけど、その値段が「1000円」と知ると、また気持ちが少し冷えていくのを感じていた。
勝手なものだった。
だけど、たとえば、ここで、他のおすすめのレトルトカレーをすすめてくれた後に、自分が監修したのですが、とさらにこの「身の毛もよだつカレー」が紹介されていたら、全然、印象は違っていたのに、と思った。
それは、ラジオリスナーの勝手な感想にすぎないけれど、同時に、カレーに対しての食欲が高まっている時だけの、厳しい見方なのかもしれない。
食欲の情報
それから、しばらく経って、カレーに対しての欲望のようなものはかなり落ち着いたので、今は、カレーという言葉への感度は明らかに下がっている。
とても勝手なものだけど、あのタイミングでラジオを聞かなかったら、知らないことばかりでもあったのだし、今から振り返ると、あれは、食欲が情報を連れてきてくれたのだと思う。
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