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「アンダーカバー」が欲しくなった「不確かな動機」。

 1日に何通も、商品販売促進のためのメールがくる。

 何かに登録したり、買い物をしたりすると、根気強く送られてくるのだけど、それは、自動的に送られてくるのだから、と思うと、時々、嫌にもなる。

 その中でも、最近、お、と思うメールが来て、クリックをした。

春のコラボレーション

 今年の春に、同じように「GU」と「アンダーカバー」のコラボレーションがあったときは、発売日の午前中に、サイトに接続したのだけど、すでに結構売り切れていた。

 それでも、コーチジャケットと、Tシャツと、下着を買って、シューズは迷ったけれど、サイズ的に厳しそうだったので、あきらめた。

 だけど、久しぶりに、欲しいと思ったものを買えたので、微妙な高揚感があった。

「在宅服」

 2020年までは、外出するために買った服が古くなったら家で着る、という「セルフお下がりシステム」を個人的には採用していた。

 だけど、家にいる時間が長くなり、「セルフお下がり」ばかりだと、私以上に、その服を見る時間が多いのは、もしかしたら、一緒に暮らしている妻だから、なんとなく気持ちを下げてしまっているのではないか、と思うようになった。

 自分には似合わないと思っているような明るい色の服でも、妻が見て、気持ちが少しでも快適になったりするならば、そういう色を、家で着るために買って、新品で着るようになった。

 そして、服を購入するときは、妻と相談をして、妻が見ても気持ちがいい服を選ぶようにした。自分だと、もっと暗めの色が多くなってしまうから、着る色が変化したことで、自分の気持ちも少し変わったかもしれない。もちろん、そんなに高額なものは買えないから、「ユニクロ」や「GU」の通販の利用が多くなった。

 それは、自分にとっては「在宅服」というジャンルだと思った。

少し変わった服

 そして、コロナ禍が長くなり、在宅傾向が強いままの時間が長くなると、気持ちまでこもりがちになるのは、自分でもわかった。

 だから、服を明るめにするだけでなく、自分にとっては、少し変わった服も買うようになった。「ウルトラマン」や「エヴァンゲリオン」のTシャツ。「仮面ライダー」のソックス。「コジコジ」のTシャツは、妻に似合いそうなので、レディースを買ったし、トートバックは、自分も使わせてもらうようになった。

 最初は少し恥ずかしかったが、そういう小さなことでも、気持ちは、ちょっと変わった。

「アンダーカバー」

 ファッションにそれほど興味はなくても、「イッセイミヤケ」のファッションショーのビデオを見たときは、その強いアイデアと、モデルが仕事を超えて、どこか誇らしげにランウェイを歩いているように見えたし、美術系の雑誌で読んだ「コム・デ・ギャルソン」川久保玲のコメントは、素直にかっこいいと思っていた。

 そして、今になってみれば、何で見たか覚えていないけれど、あるファッションショーに関する記事が印象に残っている。もう20年くらい前のことだ。

 今はなくなってしまった旧・国立競技場の室内のトレーニング場。その中に、短距離用のトラックのように、真っ直ぐ伸びているアンツーカーのような場所があったらしい。

 そこで、ファッションショーを行なった、という写真と文章を見て、その場所で行なったこと自体に、新鮮さと、凄さを感じてしまった。

 予算から言えば、おそらくは大きいイベント会場などよりは安いはずだし、この場所をファッションのことに使った人は、それまでいなかったと思う。

 いろいろな意味で、強い意志を感じさせる方法だと、勝手に思ってしまい、それが、どうやら「アンダーカバー」というブランドが行なったショーだと知った。その頃、自分自身が厳しい状況にいたせいで、こういうやり方に、勝手に希望を見てしまっていたと思う。

 それから、自分の中では、「UNDERCOVER」は、ごく個人的に、特別感のある響きになった。

「GU」とのコラボレーション

 その室内練習場のファッションショーの印象以来、ずっと、興味が持続していたようだった。

 もちろん、そんな思いがあるならば、自分にとっては値段が高いとしても「アンダーカバー」を手に入れるべきだったのだけど、あまりにも貧乏だったし、ファッションへの情熱も足りなかった。

 だから、2021年春の「GU」とのコラボレーションによって、初めて自分にも価格的に手が届くものになったと思った。

 この機会に少なくとも「アンダーカバー」の意志がこもっているはずの服が欲しくなり、妻と相談をして、普段なら買わない色や、ちょっと思い切ったものも、「在宅服」と思えば着られるし、自分の気持ちに、少しでも刺激を与えてくれるものとして、購入した。

 最初は、それまでの自分だったら買わないような、背中に大きめのイラストが入ったコーチジャケットを手に入れた。妻のアドバイスで、ブルーを選んだけれど、デザインや色も含めて、ちょっと恥ずかしかった。(自分だけの判断だと、黒を選んでいたし)

 だけど、そのうち、近所の買い物だけでなく、図書館に行く時にも着ていけるようになったし、肌寒い時にはおるのが、日常になった。

 ちょっと気持ちは、変わったと思う。

 だから、秋のコラボレーションでも、ブルゾンと、スウェットパンツと、ソックスを購入した。

 商品には、こんな言葉が並んでいる。

Freedom.
Hear the sounds of the times.
Elevation through combination.
Eliminate the noise.
Instinct,courage,
And then counter action.

 何しろ「自由」でいることは、とても難しいとは思うものの、これならば、背中に背負っても、ぎりぎり責任を負えそうな気がするし、こういう言葉が並んでいるだけで、恥ずかしさもありつつ、新鮮な気持ちにもなる。


不確かな記憶

 ただ、昔の雑誌を見ても、自分が記憶している室内トレーニング場のファッションショーのことは見つからず、検索をしても分からなかった。
 
 だから、もしかしたら、この記憶自体が、自分で作ってしまっている可能性もあるし、さらには、このファッションショーがあったとしても、「アンダーカバー」ではなく、別のブランドかもしれない。

 そうであったら、「アンダーカバー」にも、間違えてしまったブランドにも、とても失礼になるのだけど、その不確かな記憶が、「アンダーカバー」を購入したい気持ちにつながっているのは、自分にとっても、どうしようもない。

 違っていたら、すみませんでした。

 でも、購入したコラボレーションの商品は、今までの自分では買わないようなものもありますが、そのおかげで、また少し気持ちが変わりそうです。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただけると、うれしいです)。



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おちまこと
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