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「理想の息子」は、存在しないと思う。

 私は結婚しているが、子供はいない。
 だから、親子関係について、あまり何かを言う資格がないとは思う。

 ただ、最近、実際の生活や、フィクションや、他にも自分では気がつかないうちに目にしたり耳に入ってきたことによって、ふと、いわゆる世の中に大勢いる、男の子を持つ父親にとっての「理想の息子」は、こういう存在ではないか、と急に分かった気がした。

「理想の息子」

(ここから先は、実際に息子のいない人間の、あくまでも想像です。
 ですので、もしも、明らかに違うことがあったら、申し訳ないのですが、そんな時は、その間違いを教えていただければ、ありがたいです)。

 父親にとっての「理想の息子」とは、おそらくはシンプルなのではないだろうか。

 まず、大人になった時に、社会的に、誰かが見ても、分かりやすく「優秀な息子」であること。

 さらに、その「優秀な息子」は、父親である自分に対しては、無条件の感謝と尊敬する気持ちを持ち、父親である自分の頼みであれば、断らない。場合によっては、父親から口にしなくても、その望みを的確に忖度し、動いてくれる。

 たぶん、昔、私の父親が、そんなようなことを望んでいたであろうことを、何となく分かるようになり、そして、そういう思いは、結構、一般的でもあるのではないか、と思うようになった。

 これは、はっきりと口にすると、ちょっと恥ずかしいから、ここまで具体的に語られることも少なそうだし、それほど公になっていないかもしれない。だけど、世の中の「お父さん」の方々に、きちんと話を聞いたら、こんな答えが返ってきたそうだ、と思った。

 もしかしたら、こんなことをわざわざ書かなくても、みんなが知っていることかもしれない。

「優秀な息子」

 まず、「優秀な息子」は、「遺伝」という、ある意味で不公平なことによって、決まってしまうようだ。それは、どこかうっすらと感じていたものの、明確になると、どこか残酷な事実のようにも思う。

 そうであれば、父親になったからと言って、自分自身が優秀でなければ、「優秀な息子」である確率は低くなるかもしれない。逆に、自分が優秀であれば、「優秀な息子」である確率は増えるということでもある。

「優秀な息子」≠「理想の息子」

 ただ、「優秀な息子」の「優秀さ」が本物だとすると、父親に対しての感謝はあるかもしれないが、その「優秀さ」がゆえに、大人になり、社会で活躍し出したりすると、その「優秀な息子」は、「古い世代」に関しては、いい印象が少なくなってくる可能性が高い。

「優秀」であれば、「古い優秀さ」は、とてもうっとおしく、邪魔であるはずで、その父親が「優秀」であっても、その「古さ」が目についてくるかもしれない。そうなると、素直に尊敬するのはとても難しくなってくる。

 だから、「優秀な息子」は、父親を無条件に尊敬する「理想の息子」になる確率は、とても低いように思う。

「理想の息子」は自覚されない

 ただ、時々、「理想の大人」といっていい人はいる。
 「優秀」なだけでなく「優しい」人はいる。

 その人は、その父親にとっては、外から見たら、「理想の息子」になりそうだけど、その父親は、その息子のことを、「理想の息子」とは思っていないような気がする。

 その父親は、「理想の息子」扱いする周囲に対して、違和感を持ちつつ、称賛しようとする場所に出てこない気がする。

 子育てにおいて、このようにわが子を他者として認識することは、何よりも大切な基本です。これが分かっていれば、「子どもに良かれと思って」という一方的な押し付けは行われないでしょうし、「一体この子はどんな人間だろうか?」という自然な関心が湧いて、丁寧に観察することでしょう。親子の会話でも、自分はこう感じるがこの子はどうだろうかと、丁寧な擦り合わせが行われていくはずです。そして子育て全体が、親の欲望によってではなく、その子どもにとっての幸せのために方向付けられていくのではないでしょうか。

 おそらく、こうした時間の蓄積の後に初めて、人から見たら「理想の息子」に見える大人になるかもしれないが、その父親にとっては、単に「愛する息子」に過ぎないのではないだろうか。

 だから、少し飛躍した論理に感じられるかもしれないが、「理想の息子」という「父親の欲望」を形にしたような存在は、実際には、存在しないと思う。



 ……ただ、これは、子供を持たない人間の勝手な仮説のようなものでもあるので、ご意見、反論などありましたら、教えていただければ、とてもありがたいです。

 よろしくお願いします。



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