「柿と鳥とタヌキ」。
庭に柿の木があると、毎日のように見ることになる。
春はきれいな緑色の葉っぱでいっぱいになり、それを通す太陽の光まで新しいものに感じ、夏はセミの止まり木になり、秋は紅葉し、いろいろな色に染まって落葉し、同時に、柿の実が大きくなり、だいだい色になっていく。
12月の中旬になると、葉っぱは完全に落ちて、枝に柿の実だけが残っている。
義母が生きている頃は、柿が好きだったので、高枝切りバサミで私が柿をとって、妻と一緒に義母も皮をむいて、ヒモをつけて、干し柿にしていた。
渋柿なのに、なんとなく甘そうに見えるのだけど、何年たっても、甘くはならないし、今も渋柿のままだけど、今年は、それでも欲しいという人がいて、その分だけをとって、差し上げて喜んでもらった。
カラス
柿のことは何度も書いているので繰り返しになり、申し訳ないのだけど、柿の実を全部取らないのは、鳥のため、と言われているらしい。
柿の葉っぱが、いろいろな色になり、柿の実が大きくなる頃、初期は鳥がこない。
比べたことはないけれど、甘い柿は大きくなりつつある頃から、いっぱい鳥が来るのだろうか、と思ったりもするが、やっぱり、渋柿なので今年は来ないかも、などと感じていると、いつの間にか、鳥が来る。
毎年、ほぼ順番が決まっている。
最初は、カラスが来る。柿の枝が揺れる。ガー、というような声がする。
そうすると、違うカラスがきて、柿をつつく。
くちばしが大きいせいか、カラスがつついて、そして、かなり実が残っているのに、柿の実が落ちる。屋根に当たったり、場合によっては、洗濯物に当たって、その時はやっぱりイラっとする。
こうした柿は、ほぼ、柿の木の下に落ちていて、あちこちに転がっている。家の裏口近くにあったと妻に伝えたら、カラスのせいだ、と微妙に怒っていた。
柿と鳥
鳥にも順番があって、カラスの次は、メジロが来る。
サイズはかなり小さくなって、柿の実をつつく時は、体の大きさとそんなに変わらなく見える。
それに、とても警戒心が強く、動きはこまめで、あちこちに移動する。
その姿は、柿の実と空の青さと鳥の色で、とてもきれいだけど、写真に撮ろうとすると、難しかった。
今回、やっとそれなりに撮れたのが、見出し写真だった。
こじつけだけど、次は、どれを食べようか、と考えているようにも、見える。
メジロは、何匹も来て、あちこちの柿を食べる。
そして、また庭に何個も、食べかけの柿が落ちてくる。
柿の木を見上げると、あんなにあった柿の実は、少しずつ減ってきて、妻と、これを全部食べ尽くすまで、つつくんだね、と話をした。
柿の台
気がついたら、庭にある台に食べかけの柿が並んでいた。
「落ちている柿も、こうして置けば、食べてくれるかと思って」。
妻はそう言っていたら、少したって、メジロがその柿に止まって、つついていた。
あ、ほら、食べてる。
妻を呼んだら、メジロは飛んでいった。
そのあとに、台の半分の柿の実は落ちていた。
なんだよーと思って、拾って、周囲を見たら、また新しく落ちている食べかけの柿の実があって、それを拾って、また台に並べた。びっしり並べて、また、しばらくたったら、いつの間にか、その台の上の柿は、いくつか落ちていた。
今年中には、柿の実を食べ尽くしてくれるかもしれない。
そして、また違う鳥も来てくれるかもしれない。
タヌキ
そんなことを思っていた、ある夜中。
庭の「柿の台」の方を見たら、暗い中で、何かが動いていた。
最初はネコかと思ったけれど、それより大きいし、動きの中で、背中のうねりも伝わってくる。
引き戸を開けて、見たら、その動物はこちらを見た。
口が長い。
タヌキだと思った。
たぶん、柿の実を食べているようだ。
ハクビシンは、去年見たけれど、それとは違う。
タヌキと思われる動物は、こちらをじっと見ている。急に逃げない。どこか堂々としている感じがする。ちょっと怖い。
そう思っていたら、視界の左で、何かが動いた。
もう一匹のタヌキだった。
うわ。
二匹に、こっちを見られた。
目が合ったように思えたけど、逃げない。
ここにずっといるのは、なんとなく怖いけど、逃げそうに見えなかった。何にも頼らない覚悟みたいなものがあると、感じたのかもしれない。
もう一歩、庭へ出た。
門にあたる小さい音だけがして、ほぼ一瞬で視界から消えた。
タヌキまで、柿を食べるのは、意外だった。
というより、タヌキはどこから来たのだろう。この近所には、河川敷があるだけで、森も林もない住宅街なのに。
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