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ラジオの記憶⑩「伊集院光に、再び伝えてもらった、トム・ブラウンの凄さ」

 今の時代のラジオを考える時に、伊集院光、という存在を抜きには出来ないと、改めて思ったのが、1年くらい前の出来事だった。

2020年「無観客・無配信ライブ」

 コロナ禍で、エンターテイメントの分野では、やたらと「ライブ」が中止になり、その苦肉の策として、「無観客で配信のみ」という方法が取られることが多くなり始めたのが、2020年の3月くらいの時だった。

 その際、2018年のM-1で活躍してから、テレビなどでも見かけるようになった「トム・ブラウン」の「ライブの特殊さ」を、伊集院光がラジオで話したことで、初めて知った。

 それは、無観客であれば分かるのだけど、無観客・無配信、さらにシークレットゲストあり、という、ほぼ無意味としか思えないライブの告知が事務所の公式のサイトにアップされ、それが直前になって中止になる、という話だった。

 確かに、事務所のサイトには、その通りのことが「公式に」書かれている上で、中止になったことを示すように、棒線で消されていた。

 すごいことだと、ラジオを聞いている私も思い、これは芸人でもあるし、現代アートのパフォーマンスのようだとも思った。そういう妙な見方は、トム・ブラウンにも、伊集院光にも失礼だとも思いながらも、このことを、伊集院光に教えてもらわなかったら、ずっと知らないままだったかと思うと、改めてありがたい気持ちにもなる。

1年後の「答え合わせ」

 その「無観客・無配信ライブ」の答え合わせがリスナーとしてできたのは、この2021年5月19日「伊集院光とらじおと」で、だった。

 どうやら、伊集院自身も、ここまでは直接、話をきちんとする機会もなかったから、それが初めて、その「真意」を確認できる場所だったようだ。私自身は、このことを後日の「深夜の馬鹿力」で知り、それから「ラジコ」で後追いした未熟なリスナーだけれども。

 ただ、その疑問に対するトム・ブラウンの答えは、完全な「答え合わせ」ではないようにも聞こえたが、何しろ、その頃に他の芸人が無観客で配信でライブをしている姿に、気合の足りなさのようなものを感じ、自分たちができる「熱意を伝えられる方法はなんだろう」と考えた上での方法だった、という言葉だった。

 だけど、その会話をリスナーとして聞いていると、それが100%の本気かどうかも分からなかったし、または「狙い」があったとしても、評価されたのを得意気に語るのは、「野暮」だとする美学のようにも聞こえた。

 そして、そのシークレットゲストは、今も言いたくない、と繰り返すことに、やっぱり少し笑ってしまった。すごい筋の通し方だと思ったし、こうした癖の強そうな芸人に、おそらくは、半ば、無理かもと思いながらも、粘り強く聴き続ける伊集院もすごかった。

 それに、伊集院にとっては、トム・ブラウンは後輩芸人だと思うのだけど、上からではなく、きちんと敬意を持ちながらも、踏み込むという距離感の保ち方もすごいと思わせた。

無人島スーパーソーシャルディスタンス単独ライブ

 そして、さらに伊集院光が、今後の予定として聞いたのが、2021年7月に予定されているトム・ブラウンの「無人島スーパーソーシャルディスタンス単独ライブ」のことだった。

 このご時世で、ライブに関しては、コロナ感染のことが心配で、劇場は完全に対策をしているとはいえ、実際に行くのを迷っている人もいると思うけれど、そんな人にも安心できるライブを考えた、という話だった。

 無人島で単独ライブをして、その様子を対岸から見てもらう。それはスーパーソーシャルディスタンスと言えるような距離だから安心。という理屈らしい。そして、天候によっては見えないかもしれません、といった注意事項などを入れるなど、全てが「ネタ」のようで、しかも台本こみで2000円だから、それを購入してもらうためにやるのか。という伊集院の常識的な推測は、トム・ブラウンが、あくまでも本気だという言葉で、跳ね返されていた。

 リスナーにとっては、このライブの企画そのものが、トム・ブラウンが、1年前の「無観客・無配信」の自己更新を目指し、それを果たしていると感じ、すごいと思った。そして、それは伊集院光という目利きに気づいてもらい、広げてもらったおかげで、私にも届いた。やっぱり、ありがたい。

◆コメント◆ 昨今舞台を観に行くか迷ってる貴方!このスーパーソーシャルディスタンス単独ライブがおススメです!完璧な対策完了!遠くから思う存分笑ってください!
※注意事項
・望遠鏡の無料貸出あり
・(天候によっては)見えない可能性大ですので予めご了承ください。

念のいった告知と、控えめな推測

 繰り返しになり申し訳ないのだけれど、私が、このトム・ブラウンの「答え合わせ」のことを知ったのは、5月24日、深夜の伊集院光のラジオ番組だった。その内容は、5月19日の「らじおと」の繰り返しの部分も多かったから、それは、「念のいった告知」にも感じたが、それをしたくなるようなトム・ブラウンの企画だとは思った。

 そして、この「深夜の馬鹿力」の中で、こうした「トム・ブラウン」の姿勢に関して、少し伊集院が語っていたのが、みちおの経歴との関連だった。

 トム・ブラウンの二人は同じ高校の柔道部の先輩・後輩の関係だったが、後輩でもあるみちおは、高校卒業後は、プロのスノーボーダーを目指し、そのための専門学校に通っていたため、今の相方である布川の誘いを断っていた。

 だけど、プロのスノーボーダーの世界は、こちらへ行くと怪我をする、下手をすれば命に関わる、という選択を、場合によっては、例え、体が拒否しても出来るようにならないとプロにはなれない、といったことを知り、それはとても無理だと諦めた、というエピソードから、伊集院が控えめに推測を語っていた。(聞き取った言葉をまとめたので、詳細は、少し違うと思いますが)。

 このプロスノーボーダーの選択、命が危なくても、そちらを選ぶ、といった「プロの選択」を、今、芸人として行っているのではないか。そちらに進むと芸人生命が危ない、だけど、自分たちが目指すプロの芸人としては正しい、といった選択をし続けようとしているのではないか。

 それが的中しているかどうかは分からないし、たとえ図星でも、本人は絶対に認めないと思うけれど、リスナーはどこか納得していた。

 そういう選択をしようとしているトム・ブラウンもすごいが、そういう見立てが出来、さらには広く伝えようとしている伊集院もすごいと、再び、思った。



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おちまこと
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