テレビについて㊴マツコ・デラックスを見て思い出す島田紳助の言葉。
かなり昔のテレビ番組だから、覚えている人も少なくなり、知っている人もあまりいないのかもしれないけれど、時々、思い出す番組がある。
松本人志と、当時はいわゆる「売れっ子司会者」だった島田紳助の二人のトーク番組で、当初は、すごく元気がない島田紳助が、松本人志と番組を持つことで、刺激を受けて、再び活動の動機を作るためなのか、といったように視聴者には見えていた。
それほど、島田紳助は、すでに一時代を築いた存在だったと思う。
「松本紳助」
島田紳助が、松本竜介との漫才コンビを解散する際に、当時は、それほど売れていなかったダウンタウンを、こんな若手が出てきたから、と引退の理由の一つに挙げた、という話は、直接聞いたわけでもないのに、そんな事実があったと覚えている。その頃から、島田紳助は、目利きとして有名だったと思う。
そんな島田紳助と松本人志がトーク番組をするというので、深夜だけど、おそらくは楽しみにして、私は毎週見てきたはずだ。そして、途中から「松紳」と番組名が変わったけれど、記録によると6年続いていたようだ。2000年から2006年だから、20世紀の最後から、21世紀をまたいだ番組ということになる。
個人的には、初期の「松本紳助」の、二人のトークだけで成り立っていた頃の印象が強く、今でも覚えているのが島田紳助の言葉なのは、松本人志が、「先輩」として立てていたせいもあると思う。
面白さ
この番組のトークをきっかけとして、「M-1」が誕生したとも言われているが、視聴者の記憶としては、才能がない人間を早めに諦めさせるための大会、というニュアンスが強かった。それを語っていたのは、島田紳助が中心だったと思うけれど、それは、「面白さ」についての考えに基づいているようだった。
紳助は、面白いやつは完成度が低いとしても、最初から面白い。そして、面白くない奴が、時間が経って、努力したとしても面白くはならない。そんな言い方をしていて、だから、ベテランになって「売れない」としたら、それは面白くないからで、それ以上、時間を費やしても、ある意味では無駄だから、早めに諦めさせて、他の世界で生きた方がいい、ということらしく、それで「M-1」の当初は、結成10年目まで、という制限がついたのだろう。
そこまで売れてないのは、面白くないからだし、それ以上続けても面白くならなはず、といった紳助の見極めが生かされていたのかもしれない。
島田紳助の、「面白さ」についての言葉は、今でも覚えていて、ただの素人の視聴者だけど、芸人を見るときの基準の一つになっている。
司会
もう一つ覚えているのは「司会」に関しての言葉だった。
島田紳助は、漫才師としてデビューしたけれど、最終的にはテレビの中で「司会」をすることを視野に入れていて、それを狙って、当時の「売れっ子司会者」のポジションを手に入れたらしい。
それを自慢げというよりは、淡々と語っているように見えたし、達成してしまったら、そのことに関しては熱を込めて語れなくなっていたのかもしれない。
そして、松本人志の問いかけにより、これから次の「売れっ子司会者」についての話になり、その中で、当然、松本や紳助よりも若い世代の芸人の名前も上がったと思うのだけれども、それよりも、紳助が、つぶやくようにいったことが印象に残っている。
だけど、今は予想もしないところから、急に現れることもある。
その時は、そういうものなのか、と思ったくらいだった。それでも、その語り方の気配が、自身の「売れっ子司会者」の地位を脅かされるといった恐れや、どうしようもない気まぐれな時代の流れへの諦めみたいなものまで感じた。
ただ、「面白さ」についての言葉と比べると、そのことはしばらく忘れていた。
マツコ・デラックスと有吉弘行
2000年代後半以降、急にMCとして多くの番組を担当するようになったのは、それまでテレビ界で着々と地位を築いていた人以外では、マツコ・デラックスと有吉弘行が代表的な存在だと思う。
マツコ・デラックスは、それまでは文筆業の世界から急に登場し、そして、気が付いたら、多くの番組のMCをするようになって、それから10年くらいが経っても、その位置のままだ。
有吉弘行は、1990年代に猿岩石として高い人気を得たものの、その後は、急激にテレビで見なくなっていた。だから、その後、再び人気を得て、今のように毎日のようにテレビで見るようになるとは思えなかった。
マツコ・デラックスや有吉弘行をテレビで見ると、時々、紳助の「司会」に関する言葉を思い出す。
この二人は、2000年代に入ったばかりの頃は、今のように多くの番組でMCをするとは、誰も思っていないはずだった。
だから、二人を見ていると、予想もしないところから急に現れる、という紳助の見立ては当たっていたと確認するような気持ちにもなる。
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