![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48396412/rectangle_large_type_2_efef4573aa8874b2335e06fa6a58100c.jpg?width=1200)
桜の思い出
今年も桜が咲いている。
普段は、それほど注目していない桜の樹木を見る機会が、圧倒的に増える。
去年に引き続き、満開がいつになるか?がそれほど言われなくなったのは、コロナ禍で「花見」が、表立って、あまりできなくなっているせいだと思う。
だけど、どんなことがあっても、今年も桜が咲いている。
今は、コロナ禍で、メールの添付写真などで参加しているのだけど、毎月、ボランティアをしている。病院に入院している患者さんへ渡す誕生日カードの制作に、もう10年以上関わっている。コロナ禍の前は、病院が駅から結構遠いので、送迎バスに乗っていた。
その時、病院のスタッフに久しぶりにお会いして、話をしたことがあった。
母親の話題になった。
母は、その病院に入院し、そこへ私は7年通っていたのだけど、病院で亡くなった。それから、すでに何年もたっていた。
ちょうど、桜の季節だったから、桜の話題になった。
その病院のスタッフが、少し考えてから、こちらを見て、少しゆっくりと話し始めてくれた。こんな内容だった。
桜が満開になって、そのあとに散ってしまうと、寂しい気持ちになる。
それは、毎年のことだけど、やっぱり寂しいと思っていた。
そんなことを、入院している母に、話したらしい。
そうしたら、母親は、力強く答えたようだった。
何を言っているの。
桜は散っても、また来年も咲くのよ。
大丈夫。
寂しくない。
また来年も見られるから。
その病院のスタッフは、私に気を使ってくれたと思うのだけど、その言葉で力づけられて、それから、桜が散ることも、そんなに寂しくなくなった、という。
母は、入院後に何度も症状に波があったが、比較的安定した後に描いた絵は、それ以前よりも、率直でストレートな印象になっていた。同様に、記憶が危うくなったとしても、言葉は、より正直になっていたと思う。
だから、そのスタッフの方にも、届いたのかもしれない、と思った。
その話を聞いた時は、すでに母が亡くなって何年かたっていたけれど、その会話の内容は、初めて知った。
入院している高齢の女性患者であった母親が、病院のスタッフの方を少しでも力づけることができたのは、やはりうれしかったのは、覚えている。
いろいろな記憶が、どれも遠くなっていくけれど、桜が咲くとき、そんなことを、時々、思い出したりする。
いいなと思ったら応援しよう!
![おちまこと](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/21675265/profile_766ce21768543f445081f8916b66209d.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)