「遅刻の言い訳」のオリジナリティ。
中学生の頃、よく遅刻する同級生がいた。
そんなに家が遠いわけでもなかったし、中学生だから、徒歩通学だったし、遅刻するとしたら、だいたい寝坊といった理由になるはずで、だから、遅刻してあやまって、教師が少し怒っての繰り返しを見ることになる。
遅刻の言い訳
その頃の自分は、あんまり遅刻をしなかったから、そういう姿を、教室で座って見ていた。
わりと、ゆったり構えているというか、いつもニヤニヤしているような男子で、少し大柄で、あたりは柔らかい。大人のようにも感じるけれど、何を考えているのかは、ちょっとわからないときがある。
そんな同級生が、遅刻をして、教室の前から、入ってくる。
いつものように、ちょっと笑っていたと思う。
そんなに悪いと思っていないような気配は相変わらずで、ただ、どこか憎めない感じもあったし、本人もそのことを知っていたような気がする。
遅刻をして、すみません、寝坊しました、とあやまる。
いつもは、そんなようなことが多かったと記憶しているのだけど、その時は、少し違った。
焚き火
寒い冬の日だった。
「道を歩いていて、いつものように学校へ向かっていて…」。
ちょっと違う出だし。
「それから、しばらく歩くと、ちょっと山の方に煙が上がっていて、何かと思って、そっちに向かったら、焚き火で」。
「知らないおじさんが、何か燃やしていたけれど、何しろ寒かったから、あったかくて、それでしばらく暖まらせてもらって……」。
「そうしたら、なんだかきれいで、木の葉が舞い上がったりして」。
しばらく焚き火の描写もしていたように思う。
「それで、おれいをいって、また歩き出したんだけど、それで、遅刻しました」。
この話を、決して急がず、どちらかといえば、ゆっくりめに、穏やかに話しつづけて、時間がすぎて、最初は、怒っていた担任も、焚き火のあたりから、ちょっと笑っているような顔に近づいて、それで、なんだか、うやむやになり、そんなに怒られることもなかったと思う。
そのことが本当かどうかも、その後に聞いてもニヤニヤしているような同級生だったから、よく分からなかったけれど、本当にしても、ウソにしても、なんだか感心した記憶だけが残っている。
ただ、昔のことだから、自分の中で、記憶が変わってしまっている可能性もある。
それでも、焚き火を使った遅刻の言い訳は、あまり聞いたことがなかったし、それからも聞いた記憶がない。
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