点滅する照明。
家の蛍光灯が2つの輪っかでできていて、片方の隅っこが黒ずみ始めて、そのうちに、点灯する時だけでなく、ずっとチカチカと光るようになったら、もう替えなくてはいけない。
それでも、蛍光灯の購入金額を考えて、もう少し頑張れば、少しは持つのではないかと思うこともあるけれど、でも、やっぱりずっと点滅を繰り返し、そのうちに、その蛍光灯ランプをつけなくなったり、そのチカチカする蛍光灯へ続く電線を外したりする。
家の中での点滅は、とても目にうるさい。そんな実用的な理由で、チカチカするあかりは、好ましい気持ちになれない。
点灯の瞬間
古い木造の家に住んでいて、小さい庭に面した木製の引き戸を閉めて、カーテンも閉じようとする時に、外を見る。
夕方近くになり、日が暮れて、暗くなる間際に、道路の向いにある7階建てのマンションの外廊下の照明が一斉につく瞬間がある。
単純に光センサーが作動しているのだろうと思っても、とても古い記憶というかイメージに過ぎないけれど、誰かがついている鐘の音や、テープではなく人の声で帰宅を呼びかけていたことと重なって、誰かが関与しているような気がすることもある。
それは、夕方に起こりやすい妄想に近いことだとしても、その瞬間は、一番星を誰よりも先に見つけた感覚とちょっと近くて、もしかしたら自分だけが見ていたかもしれないと思うと、ちょっとだけうれしい寄りの気持ちになる。
外の点滅
最近、家の庭に面した引き戸の窓から、暗くなってからカーテンを閉めようと思って外を見た。
7階建てのマンションの2階の外廊下。ちょうど少しだけ見上げる場所の照明が、チカチカと点滅を繰り返している。
それは、暗くなっていく中で、不規則さを、おそらく規則的に繰り返しているように見える。
単純に古くなって、照明の替え時にすぎなくて、それは、家の蛍光灯と同じように、交換すればいいだけの話だけど、何日かはそれが続くことがある。
明るくなって、でも、その明るさは安定せず、暗くなる。だけど、それはまた一瞬で明るくなり、だけど、その時間は長く続かずに、すぐに暗くなり、また明るくなる。
チカチカ、という表現が似合う時間が続く。
それを見ていると、不安になる。そういえば、ホラー映画などで、訳ありの場所の照明は、だいたい、そんな感じで、不安定な点滅を繰り返して、怖さを盛り上げている印象がある。
不安の理由
点滅する照明を見ていると、どうして、不安になるのだろう。
すぐに思いつくのは、それは、すでに「正常」ではなくなっていることが具体的に形になっているからではないか、ということだ。
しかも、点滅も完全に規則的ではなく、時々、長く明るくなったと思ったら、急に暗くなったりと、不規則さも含んでいるから、それは、壊れていく、という感じが伝わりやすい。
そして、そのまま放っておけば、近い将来、完全に点灯しなくなり、ただ暗い中に沈むことになる。
照明は物質であって、生き物ではない。だけど、生物である人間は、モノに対しても、時々「命」のようなものを見てしまう。だから、電気製品が壊れてしまった時に、「寿命ですね」という言葉が使われたりもして、それを聞くと、「壊れましたね」と事実を告げられるだけよりも、なんとなく納得が深くなるし、これまでお疲れさま、みたいな気持ちになりやすい。
だから、その点滅をやや不規則に繰り返す照明は、まるで「老い」て、うまく機能が働くなって、だんだん「死」に近づいているように思えて、それで、不安になってしまうのではないだろうか。
そして、照明は暗くなってから点灯するから、その点滅の様子は、暗い夜の中で続くから、その時間帯は、少なくとも朝や昼よりも、人の気持ちは不安定になりやすい。
そのことも、照明の点滅が、より不安を呼びやすい理由だと思う。
数日後、その照明は、普通に点灯するようになっていた。おそらく新しいものと替えられたのだろう。
さらに時間が経ったら、その下の階の照明が点滅するようになった。
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