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クソゲー開発秘話

世に良ゲーの開発秘話はたくさんありますが、意外にクソゲーの開発秘話って無いので書いたら面白いかなと思ったので書いてみます。

誰しもクソゲーなんて作りたくありません、それには理由があるのです…。

※当然ですが、タイトルや社名を書くと問題になるので匿名です。1990年代~2000年代に某据え置きハード用タイトルとして発売されたゲームです。

プロジェクト開始

まず、プロデューサーSさんは企画書を作りました。

企画の内容は面白そうだし、規模も大きく無いし、予算内でリリース可能な見込みもあったので、パブリッシャー(販売会社)であるA社からGOサインが出ました。

狙ったのか偶然なのか分かりませんが、創業〇年とかシリーズ〇本目的な枠になっていて、注目が集まる下地はできていました。

とにかく開発費も販売価格も安く

ただ、開発費やソフトの販売価格は安く抑えられているプロジェクトでした。

業界人なら、このキーワードでピンと来るかもしれませんw
安くするには、開発スタッフの数を少なく、単価が安いスタッフを集めるのがセオリーです。そこで、プロデューサーSさんは、こんな人材を集めました。

プログラマー … フリーランスで活動しているスキルの超高い方

シナリオ … プロデューサーと昔から一緒に仕事をしているフリーランスの方

プランナー … 会社Bからの出向の方、プランナー歴は数年程度

グラフィック … 会社Cの新人スタッフ数名

プログラマーの高スキルを頼りに、短期で作ってしまおうと言う座組です。

開発開始

プロデューサーSさんはシナリオを発注すると同時に、プランナーへ仕様作成を行うように進行しました。

まずプランナーとプログラマーが顔合わせ&会議をしました、すると、プランナーのスキルがあまりに低い事にプログラマーは愕然とし、頭を抱えました。

例えて言うなら、ほとんど格ゲーを遊んだことが無いのに格ゲーの仕様を書こうとしている感じです、結構ヤバい状況です。

開発費や人員をあまりかけないプロジェクトだし、今までサブ的な事をしていたプランナーをディレクション業の修行も兼ねてアサインした感じですね。
昔は開発費もそれほど高くないし、失敗しても会社的にダメージが少ないので、こういう事が結構ありました。

プランナーの企画能力を諦めたプログラマーは、どういうゲームを作りたいのかイメージだけ教えてくれとプランナーに依頼します。
まずはゲームのベースとなるシステム、あと必要な機能を作成する作業に入りました。

少しずつ進むプロジェクト

1~2か月も経つとシナリオも続々とあがってきて、ゲームのストーリーが見えてきました。

プランナーもせっせと仕様を作ります。仕様と言うよりは企画(希望的意見)に近いものでしたが、それでも必要なステージ数やアセット等の全体の物量は見えてきました。

その頃プログラマーはゲームの下地部分は作り終えて、スクリプトの作成をしています。

とりあえず、やりたい事を実現するスクリプトは用意したから、あとは頑張って調整してくれ、と言う目論見です。

デザインは、と言うと、これまた新人スタッフが作業しているのであまりクオリティは高くありません。

早くも続編の話

そういえば、この時期、何故かパブリッシャーの期待は高かったらしく、続編の話も出ていました。

ゲームが動いているところなんて殆ど見れていないはずなのにね。

突然プロジェクトから外されるプランナー

いざ本格的な開発が始まろうと言う矢先、プランナーがプロジェクトから外されると言う事態になりました。

プランナーのスキルの問題か、契約上の問題か上層部にしか分かりませんが、ゲームの完成形が見えている(はずの)プランナーがいなくなった事により現場は大混乱です。

結局、会社Cからプランナー数人をアサインして「何とか形にして期間内に終わらせよう」と言う事になりました。

しかし期間は短い、仕様はスカスカ、だけどプログラマーが用意したスクリプトのおかげで体裁を整える事はできる状況。
諦める事はできず、根性で何とか切り抜けられるかもしれない。

所謂デスマーチ突入で、何とか1か月後にゲームはリリースされる事となりました。

そんなゲームの反響はどうだったか?

もう最悪です。

ゲームデザイン、グラフィック、クソゲー認定され今でもタイトル検索するとクソゲーの代名詞として語り草になっています。

後日プランナーに聞いた話では、調整期間になってから変更しようと思っていた仕様があり、それを伝えないまま外されたものだから、そのまま実装され、未だにクソゲーポイントとして悪評されているとか。

何故クソゲーが生まれたのか、どうすればクソゲーにならずに済んだのか

予算と期間の面、プランナーのスキルの低さと言うポイントは前述しましたが、一番大きな問題だと思うのは、仕様を詰めていく段階でクオリティや進捗チェックをする工程が無かったと言う事です。

そもそもの話、プロデューサーとプランナーは最初に顔合わせをして、企画書を見せ、それ以降は会議すらしなかったそうです。

今になって考えてみれば、プロジェクトマネジメントとかQAなどの言葉があまり知られていない時代の話なので「とりあえず作れば売れるだろう」と言う判断だったのかもしれません、この時期は歴史に残る?クソゲーが多いです。

プロジェクトは一度動き出してしまうと、なかなか軌道修正ができません。

軌道修正にはそれなりのコストがかかるからです、一か月延期するだけで数百万から数千万の赤字になります。

ただコストをかけたくないからクソゲーをリリースするのはエンターテイメントを世に送りだす者として恥ずべき行為です。

未だに苦悩しながらゲームを作っていますが、時代と共に環境は変わるし難しいですね…。

プランナー職の方は、自分が遊ばないジャンルのゲームにいきなりアサインされる事もありえるので、常にアンテナを張って幅広く遊んでおく事が大事です。

クソゲーって、職務経歴書には書けないし(マイナス評価になるから)文字通り黒歴史になるので、何一つ良い事はありません。と言うか時間の無駄です。

人間、無限にゲーム開発を続けられる訳ではないので、精一杯頑張って良ゲーを作り続けたいな、と思います。



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