麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第2話:古傷に塩を塗るというエンタメ
発刊されたばかりの、麻布競馬場・著『令和元年の人生ゲーム』(2024年)を、期間限定・無料公開中の第2話だけ読んでみた。
著者の麻布競馬場さんは、「タワマン文学」をTwitterで発信していることで有名。私も、たまたまSNSで流れてきた短い投稿を読んだことがあった。
先日、ダウ90000の蓮見翔さんのラジオに著者がゲスト出演していて、2人がそろって「作品をみた(著作を読んだ)人から、『性格悪そう』と言われがち」みたいな話をしていたのを聞いて、興味を持って読んでみた。
第2話の舞台は、「大手町のキラキラメガベンチャー」。さほど界隈に詳しくない私でも、モデルとなった企業のことが頭に思い浮かび、そこで働く友人のことを思い浮かべながら読んだ。
よく形容されるように、働く人の言動や思考がとても具体的に、ありそうな形で描かれていて、ものすごくイタいんだけど、それが自分にも心当たりがあるようなものなので、ジトーッとイヤーな気持ちになる。でも読んでしまう、「イヤなもの見たさ」を刺激される作品だ。
新入社員時代の、何かになりたくて(なれないと不安で)やたら肩に力が入っていたときのこと、でもその力はホームランを打つ方じゃなくて、腱鞘炎になることにつながってしまっていたようなあの感じを思い出した。
他人の決断の粗を探して、自分の安心材料の足しにしようとするところとか。
朝井リョウさんの 『何者』を読んだ後にも似たような気持ちになった。ジメジメ度を増した 『何者』という感じかな。個人的には。
特に面白いなと思ったのは、主人公と母親との関係の描写だ。
いやもう、この感じめっちゃ分かる。笑
自分が妙に感心してしまったのは、これを男性である著者が書いているということ。「娘と母親の関係」と、「息子と母親の関係」はだいぶ違うと思うけれど、「娘と母親の関係」をよくこんなリアルに書けるものだ。
作品を読んだ蓮見さんが、作品の登場人物たちと違う世界に住んでいると思える自分でも、「これは実際にありそうだな」と感じられるというのはどういうことなのだろう、実在する人に話を聞くというような手段を取っているのだろうか、みたいなことを言っていたが、私も似たようなことを思ってしまった。
でもちょっと、著者の思う壺感が悔しいというか、著者のドヤ顔が浮かぶんだよなぁ…笑
ちなみにこれ、5, 60代くらいの方が読んだらどう思うんだろうか。全然響かないのかな。それとも。
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