桜、散ってすぐ夏(短歌12首)
第三滑走路6号に掲載した12首連作のひとつを公開します。たくさんの人に読んでもらえると嬉しいです。
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桜、散ってすぐ夏 /森慎太郎
区役所にいこう 用件を済ませてはやく夜桜でも観にいこう
おそろいのメッセンジャーバッグをさげた市民合唱団と同じバス
質問が三点、それから最高のプロパガンダが二点あります。
わからなくてもなにか書く 南米の首都に位置するその美術館
妻でなく麦 ははあっと気がついて文意が通る お馬も通る
マグカップがからっぽだ 汲んでくる ひとくち飲んでから席につく
手続きが煩雑なのがわるい、よね? 桜は散るからうつくしい、よね?
謝って済む問題じゃないですし、まず七分袖やめてください
ブランドの時計は邪魔です。捨てましょう。(『金魚すくいをはじめる人へ』)
浴衣からきれいなフォームのアンダースロー きらめきながらとぶりんご飴
深海の経験がないきみが言うのは変だけど深海っぽい
あとすこし眠っていれば本格派右腕になれるそんな気がする
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*6号(2019年5月1日発行)