- 運営しているクリエイター
2023年11月の記事一覧
木の実このまま税理士 #毎週ショートショートnote
税理士である俺の事務所には、顧客から数多くのレターパックが送られてくる。中身は領収書、保険の証明書など様々だ。
今日もレターパックの一つを開くと、何かがこぼれ落ちた。見ると団栗が3つ。封筒には見覚えのある文字が踊っていた。スマホを取り出し電話をかける。
「今忙しいのよ!」声が響いた。
「ご挨拶だな。木の実をこのまま税理士に送りつけてくるのには何か意味があるのか」
「あるわよ。メールを見て!」電
強すぎる数え歌 #毎週ショートショートnote
父がこの世を去った。晩年の父は、一日机に向かっていた。
父の机には、ノートパソコンが一台。パスワードが書かれた紙が貼ってあり、簡単に開くことができた。悪いと思いつつSNSなど覗いていると、いつのまにか母が隣にいた。nの文字のデザインされたアイコンを開くと、投稿サイトらしきものが立ち上がり、父もいろいろ投稿していたようだ。「下書き」を開くと書きかけの一文があった。
「一番初めはTwitter
二
戦国時代の自動操縦 #毎週ショートショートnote
午前7時の○HKテレビ。アナウンサーが、この日の特集コーナーの紹介をはじめた。「特集は『戦国時代の自動操縦』。各自動車メーカーでは、AI搭載の自動操縦車を相次いで発売、覇権を競っています…」
お昼の○BSテレビ。この日の特集コーナーがスタート。「特集は『戦国時代の自動操縦』。各自動車メーカーでは、AI搭載の自動操縦車を相次いで発売、覇権を競っています…」
翌日の朝刊。社会面の特集記事は「戦国時
ごはん杖 #毎週ショートショートnote
「新作のアイディアなんだが、構想中のがあるんだ」漫画原作者の千田は、編集者の西野に向かい、身振りを交えて話しはじめた。
「最近は座頭市のような作品が無いじゃないか。そこで考えたんだよ。仕込杖を使う主人公をね」
西野は待ってましたとばかりに手を打って応えた。「さすがセンセ、目のつけどころが違います!それでその主人公はどのように敵を倒すんですか?」
千田は答える。「いやいや、倒さないんだよ。仕込杖
親切な暗殺 #毎週ショートショートnote
「殿、お覚悟を」と重臣の瀬古庄造は迫った。「逃げ道はござらぬ」そう迫られた耳鼻藩主の柏田文三はうめくように呟いた。
「儂の何がいけなかった…」
「殿の「聴く力」とやらが世間には勝手な言い草に聞こえたのでござろう」
「庄造よ、美桜はいかがしておる」
「美桜様でしたら、手前が安全な場所にお連れいたした。いや、側室の身を案じている場合ではありませんぞ!」
すぐさま庄造の刀が一閃、柏田の元結が切り落とさ