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「角度を変えて、ものを見る」Micro Hotel ANGLEの飯田さんが考える編集とは。

「編集」。

その言葉を聞いたとき、人はどのようなイメージを抱くだろう。

たとえば、Youtube動画の編集

あるいは、雑誌や書籍の編集

最近では、場所を編集するという表現も見かける。

人によって、さまざまな捉え方ができる「編集」の世界。

私は、この「編集」の世界にふれ、物の見方を増やしたい。
そういった思いで、静岡県 南伊豆町にある宿「ローカル×ローカル」が企画する、編集プログラムに参加していました。

プログラムでは、南伊豆に3ヶ月滞在し、地元の人たちと交流しながら、元編集者のイッテツさんからインタビューや文章の基礎を学びます。

南伊豆の魅力を発信するローカルメディア『南伊豆新聞』で発信も行っています。

その他にも、宿でイベント企画に挑戦したり、ゲスト講師から編集の視点を学ぶことができたり。3ヶ月といっても目まぐるしい毎日を過ごしていました。

前回の編集講座でお話をしてくれたのは、 たらくさ株式会社の原山 幸恵さ
ん。

今回の講師は、愛知県岡崎市にある『Okazaki Micro Hotel ANGLE(以下:アングル)』のオーナー、飯田 圭さんです。

【プロフィール】飯田 圭さん。山梨県出身。東京の大学を卒業後、Uターンで山梨県の銀行に就職。中小企業支援施設「OKa-Biz」への転職を機に、愛知県岡崎市へ移住。スノーピークビジネスソリューションズのコワーキングスペース「Camping Office Osoto」の立ち上げ・運営を担当。その後独立し、2020年に「Okazaki Micro Hotel ANGLE」をオープン。

冒頭に挙げた、さまざまな捉え方ができる「編集の世界」。飯田さんは、「場所」や「まち」の編集をしている人と言えるのかもしれません。

今回の記事は、いつか場所を持ちたい人、場の編集に興味がある人にお届けできたら嬉しいです。

もともとカメラ屋さんだった背景をのせて

愛知県岡崎市にあるホテル、アングル。飯田さんが、まちの人たちと協力しながら2020年にオープンしました。

ホテルになる前は、岡崎市内で1番古くからあるカメラ屋さんだったこの場所。

宿名の “アングル”という言葉ですが、「カメラでものを写すときの角度」といった意味を持っています。「もともとカメラ屋さんだった背景を引き継いでいきたい」という思いから、この名前を名付けたそうです。

岡崎市を知ってもらう拠点としての「アングル」

アングルの面白いところは、ホテルを “泊まるための場” として完結させず、“まちを知ってもらう拠点”として開いているところ。

岡崎市に根付いた文化や、個人店などの魅力を伝える場所として、役割を担っています。

たとえば客室のベッドは、地元の「タキコウ縫製」さんに1からオーダーで作ってもらっていたり。

スタンドライトは、宿の近くにあるインテリアショップ「FILT.」さんに協力を得て作ってもらったり。

客室を飾る一つひとつの家具には、地元の作り手さんたちの物語がのっています。

他にも、岡崎市に古くからあるお店を知ってもらうために、飯田さん自ら文章を発信したり、Youtubeでお店の紹介をおこなったり。

宿を通して、岡崎市の魅力を伝えているのが印象的です。

飯田:「宿って、物理的に滞在時間も長いじゃないですか。だからまちの魅力を知ってもらうツールとしてぴったりな場所だと思うんですよね」

飯田さんは、宿を通して行っている発信に「編集的」な視点が含まれていると言います。

本質を捉え、角度を変えて伝えること

岡崎市は、古くから営んでいるお店や伝統工芸などが残っている。それにもかかわらず、知られていない現状があると飯田さん。だからこそ、地域で続く、豊かな文化を伝えていきたいそうです。

飯田:「ただ、それらを伝えるためには、『その人たちがどうしてこの店を続けているのか』、『バックボーンにはどんな背景があるのか』など、本質的に大切にしている文脈を、僕自身がしっかり捉える視点が大切だと思っています」

たとえば、昔はカメラ屋さんだったアングルの場所。
現在は宿ですが、もともとカメラ屋さんだった文脈は、大切に残し続けたいと、飯田さんは言います。

飯田:「ただ、大切に残し続けるために、伝えたい気持ちばかりが先走ってしまっても良くなくて。結局、相手に伝わらないと意味がないんです。どうしたら相手に伝わるのか、相手の視点に立って考えることも大切ですね」

飯田さんは、もともとカメラ屋さんだった文脈の伝え方ひとつをとっても、人によってアプローチ方法は異なると考えています。

たとえば、このまちが好きなカメラ好きのメンバーが集まって結成された「岡崎カメラ」というチームと岡崎市の暮らしをきり撮って、『Oz magazine』の記事を書くなどの活動を連携しています。

一方で、外から来たフォトグラファーの方には、宿で暮らすように過ごしてもらいながら、このまちの写真を撮ってもらうこともあるそうです。
撮ってもらった写真は、地元の方から観光の方まで、幅広い人が目に触れられるように、宿に展示をするのだとか。

ANGLEにて開催された、小財美香子さんによる写真展。

飯田:「地元の人が見る岡崎市と、外の人から見た岡崎市は、視点が異なったりして新鮮なんですよね。展示では、地域の人たちからすると当たり前の風景が、実は岡崎の魅力であることに気づけるきっかけになることもあるから面白いです」

飯田さんは、これまで話してくれたことを、こう例えた。

飯田:「 “文脈を自分自身が深く観察すること” 、“角度を変えて、人に伝わるように伝えること”。 両方含めて編集だと思っています」

ものや人、まちへ敬意を持つ

飯田さんの編集の話を聞いていると、一つひとつのものや人、まちに対して、敬意が感じられます。

それは表面的な部分でなく、本質的な部分を捉えることを大切にしているからかもしれません。相手の意図を汲み取ろうとする姿勢が、宿のインテリアやストーリーからも伝わってきます。

アングル1階にあるハイスツールも、岡崎市に縁のある人たちによって作られている。

飯田:「過度に注目させたり、派手に飾ることはしたくないんですよね。
人を紹介する時も、お店を紹介する時も、等身大で真っ当に伝えたいと考えています。だから僕、本当に良いなと自分で思えたものしか、相手に伝えられないんですよ」

笑いながら伝えてくれた飯田さんの言葉が、印象に残っています。

相手の文脈を捉える視点

ここで少し私の話になってしまいますが、いつか私は、場を開きたいと思っています。

そんな自分の糧にしたいのが、飯田さんの話してくれた「相手の文脈を捉える視点を持つこと」です。

たとえばお店で食事をとるとき、料理を楽しむだけでなく、置いてあるインテリアや本に注目してみる。店内に流れている曲からも、お店の人が大切にしている文脈が見つかるかもしれません。

日常で、相手の文脈を捉える時間を積み重ねていくこと。その上で将来は、ひとりよがりの店ではなく、まちの文化や地域の人を大切にできる場を開きたいと思います。

まだ場を持つのは先のことかもしれません。それでも、日々の生活の中で、飯田さんの「編集の視点」を取り入れていきたいです。


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