
伊藤忠によるセブンイレブンへの出資断念(気になるニュース)
今日の気になるニュースはこちら。
買収提案を受けているセブンイレブンへの出資を伊藤忠が断念したというものだ。
個人的に気になった点は二つだ。
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1.伊藤忠の投資に対するハードルレートはどれくらいなのか
2.同意なき買収は日本で当たり前になるか
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1.伊藤忠の投資に対するハードルレートはどれくらいなのか
伊藤忠の2024年の統合レポートによると、投資基準は下記を指標の一つとして利用しているそうだ。
投資先のフリー・キャッシュ・フローをベースとしたNPV(NetPresent Value)に基づく投資効率:NPVを算出する際には、当社の株主資本コスト(8%)も意識し、約70の業種別に設定したハードルレート(国別)を使用
NPVは時間的価値を考慮したものなので粗い置き方になるが、
1兆円投資するのであれば、配当と将来的な売却、事業連携等で、少なくとも800億円以上の投資回収ができれば投資を行っても良いということだ。
(なお、株主資本コスト(株主から要求される利回り)以下のハードルレートは置いていないと思うので、実際はもっと高い水準のはず)
セブンイレブン側が伊藤忠へ提出した計画が、このハードルレートを超えるものではなかった、もしくは計画に蓋然性がなかったため、出資検討を打ち切ったということではないだろうか。
また記事に従うと、創業家が経営権を握ったままとなることも、今まで以上の成長期待は見込めないと考えさせる一因になったのではないかとも思ってしまう。
2.同意なき買収は日本で当たり前になるか
今回のセブンイレブンへの買収打診で話題に上がっているのが、「同意なき買収」という言葉だ。
ちなみに、この「同意なき」というのは、あくまで現経営陣が「同意していない」という意味で、会社の所有者である株主や顧客など、関係者の同意がないといった意味ではない。
いまの経営陣に対して敵対的であるということなのだ。
20年前のライブドアによるフジテレビ買収の際に大きく取り上げられた言葉だが、なぜいま話題に上がっているのか。
それは、2023/8月に経産省が「企業買収における行動指針」を策定したからである。
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831003/20230831003.html
これにより、「同意なき買収」「敵対的買収」は一律認めないといった形ではなく、
株主を尊重し、企業価値向上に資する提案であるかを検討することが日本企業に求められるようになったのだ。
日本のメディアでは、海外の企業に買われる、ハゲタカファンドなど、悪く言われることが多かったが、こういった保護があることにより、海外から日本企業への投資を促すことができなかったのだ。(投資しても国が保護し、投資マネーを回収できなくなるリスクがあったので)
そんな状況下で、海外から買収提案が出たセブンイレブンへ注目が集まっているのだ。
記事では下記表現がされている。
川本氏は「ACTの買収提案は、同意なき買収が日本で当たり前になるかの試金石となる事例」と指摘する。
日本中のほとんどの人に馴染みがあるセブンイレブンが海外企業に買収されるというのは、たしかに試金石になりうる事例だと思う。
今後も実生活に関わってくるので、ぜひウォッチしておきたいニュースである。
敵対的買収、M&Aについてはこちらの書籍
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