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瑞々しいひと

以前の仕事関係者に、とあるスポーツ選手のように均整のとれたしなやかな身体をもつ女性がいた。とても健やかな印象だったが彼女はおしゃべりではなく、彼女の口から趣味やスポーツ経験などの話がでることはなかったので彼女のスタイルの秘密を知ることはなかった。
ある日、彼女の不在時に彼女の対しての業務上の伝言について数人で話していた際、勤続年数が最長であることを鼻にかけていたMさんが彼女のことを
「〇〇さんて、あの、ぽっちゃりした人?」
と、言ってくすくす笑った。
私は耳を疑ったが、Mさんは自分を最も尊重し、自身におもねってくる人や気分をよくしてくれる人のみを高評価して語る傾向があり、自分に取り入ってこない人物には攻撃的な振る舞いをすることがわかっていたため一度はその発言を流した。
私は職場の人の保護者ではないから、正論で注意をすることは求められないだろう。しかし、なんだかもやもや腹が立つ。私がもともとMさん自身に好感をもっていないことも関係しているけれど。
例えば、これが私の身内の思春期の子に対しての発言だったら、若々しい瑞々しさを支持するために何と言ったらいいだろう?

「この子はとてもバランスのよい健康的な身体ですよ」
ということを、体脂肪率や筋力、骨密度などの数値とあわせて説明したいところだけど、見た目だけで軽口をたたくような人には伝わりにくいだろうし、何より当事者自身が望まない場合もあり得る非常にデリケートな話題である。
身体の内側に目を向ければ、加齢と共にそれぞれ何かしらの課題が見つかることのほうが多いと思う。筋力が減って脂肪が増えたり、骨密度が減ったり関節が擦り減ったりなどなど…

感想やアドバイスを聞かれてもいないのに他人の身体に気安く発言できる人は、自分自身のケアは万全なのだろうかと考えてみると、知識や配慮が足りない人ほど他人に向かった言葉を投げかけるのだろうと気づく。特に年下の若者は気安くコメントされやすい時代もあったかもしれないけれど、わたしの自由な本心は、Mさんに「お前が言うな」と言いたかった。

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