中条遺跡 土偶A 1
愛知県刈谷市の中条遺跡(なかじょういせき)からも興味を惹かれる土偶が出土していました。このページでは、それを紹介します。
縄文時代後期〜晩期(約4,500〜2,800年前)
中条遺跡(なかじょういせき):愛知県刈谷市重原本町5丁目地内
所蔵:刈谷市郷土博物館
この土偶は幅6cmほどの頭部と思われる部位のみで、他の部位は見つかっていないようだ。
通常の目鼻口は造形されておらず、首と思われる境目の沈線が2本と左右から頭頂に向かう直線の沈線が3本づつ刻まれている。
結果、頭部には正立三角形が形成されている。
その正立三角形の頂点に太めのストローで開けたような真円の穴が空いており、その穴の真下を狙って開けたと思われる、上の穴より直径が25%ほど大きい穴が開けられている。
正立三角形が完全に左右対称でないので、実際には2つの穴は正確に上下ではなく、下の穴が右寄りに偏っているが。
頭頂に向かう3本の線が髪の毛、穴が目の表現と受け取れば、ゲゲゲの鬼太郎を抽象化したものとも受け取れるが、
この土偶を刈谷市郷土博物館の展示室で見たときには、即座に『20世紀少年』のあのマークの方を連想した。
しかし、後で『20世紀少年』のあのマークをチェックしたところ、連想したのと違って、それほど似てはいなかった。
だが、似ていると連想させる決定的な要素が存在していた。
中条遺跡 土偶Aの頭部と、『20世紀少年』のあのマークの付いた頭巾を被った頭部には以下のような共通点がある。
のっぺらぼうの頭部に枠取りがされ、枠内に眼球を連想させる要素が入っている。
形態そのものというよりもマークとしてのコンセプトが似ていたのだ。
土偶Aは枠取りが正立三角形で、目(?)が点だが、『20世紀少年』のあのマークは目の輪郭内にマトリョーシカのように目が入っている。
上記の『20世紀少年』の図版はポスターの一部だが、背景に正立三角形を補強するイメージのピラミッド状の建物が入っており、さらに、代表的な土偶である〈仮面の女神〉と形体の相似点の多い〈太陽の塔〉まで入り込んでいるのだ。
『20世紀少年』のあのマークは以下の〈プロビデンスの目〉を意識したものだと思われるのだが、中条遺跡 土偶Aにもそれを連想させる要素がある。
〈プロビデンスの目〉の正立三角形はWikipediaではキリスト教における〈三位一体の象徴〉と説明されているが、水木しげる氏は『水木しげるのノストラダムス大予言』(扶桑社文庫)を刊行しており、鬼太郎のキャラクターを創作する際に〈プロビデンスの目〉を意識した可能性はあり得ると思われる。
ただし、プロビデンスの目は左目と決まっているものなのだが、鬼太郎は右目を露出しており、鬼太郎の父親である目玉のおやじが鬼太郎の左目の目玉と受け取れる。
一方、『20世紀少年』のあのマークはどちらの目か判断できないものだが、目が入っている手の甲は左手で「1」を示している。
1は男性性を示す陽数であり、日本神話ではイザナキの左目からアマテラス、右目からツクヨミが化成している。
日本神話ではアマテラスを女性としているから、ツクヨミの性別は明らかになっていないが、自分を歓待してくれた保食神(うけもち)を惨殺した暴力性からも男神と見られる。
つまり、「1」は「プロビデンスの目」ではないことになるが、もちろん、著者の浦沢直樹氏は2本ではピースマーク、あるいはVサインになってしまうから、3本〜5本では意味ありげにならないと考えただけかもしれない。
もう一つ、左目は古代エジプトでは「ウアジェトの目」と呼ばれるものだったが、ウアジェトとは蛇の姿をした古代エジプト神話の女神のことで、日本の宇賀弁財天と頭と体の組み合わせが逆転しているものの、共通点がある。
また、〈ウアジェトの目〉と〈脳の縦断面図〉には形の相似性があり、松果体から小脳に至る抽象化した螺旋状の形が蛇や宇賀弁財天のトグロと相似なのも偶然とは思えない。
ウアジェト (Wadjet)
U A
UGA
宇賀弁財天
さらに、ウアジェトと宇賀弁財天の接頭2音で同じ母音が並んでいるのも偶然ではないかもしれない。
ところで、土偶Aの頭部が目を表現したものだとすると、謎なのが、ストロー大の穴が二つ開けられていることだ。穴が二つあることは目を表現したものであることを否定する要素だからだ。
これに関しては本刈谷貝塚から出土した土製品に刻まれた沈線と共通した意味があるのかもしれない。
中条遺跡 土偶Aでも本刈谷貝塚から出土した土製品と同じように
二本の平行線(首部の線)と三本の平行線(頭部の線)が使用されている。
双方とも男(陽数:3本)と女(陰数:2本)を意味したものと考えても良いのだが、中条遺跡 土偶Aには丸穴が2つ(陰数:女性)あることで、丸穴との組み合わせは頭部左右の三本線であり、首部の二本線は別の要素であり、失われている体部の要素との組み合わせに属するものではないかと、解釈するしかなさそうなのだ。
丸穴の近接具合は、何らかの機能を持たせるのを目的に開けた結果とは思えず、穴を二つにするのが目的で開けたとしか思えない開け方なのだ。
となると、この土偶は両性具有の存在を表したものであることになる。
日本神話の最初期の神々は縄文時代の土偶に対応したものである可能性がある。
『Wikipedia』には「独神(ひとりがみ)」の項目が立てられていて、「独神とは、日本神話において夫婦の組としてでなく単独で成った神のこと。」と、両性具有の神が存在したことを示唆しており、以下の2組七柱の神が紹介されている。
●別天神の五神
(=コトアマツカミ:『古事記』において、天地開闢の時にあらわれた五柱の神々)
アメノミナカヌシ
タカミムスビ
カミムスビ
ウマシアシカビヒコヂ
アメノトコタチ
●神代七代のうちの二神
(=カミノヨナナヨ)の独神(日本神話で天地開闢のとき生成した七代の神の総称)
クニノトコタチ
トヨクモノ
一方、『ホツマツタヱ』では「クニノトコタチ」を「独神の総称」としている。そして、クニノトコタチの第一世代の神を「ミナカヌシ」として、ミナカヌシを最初の人間(両性具有)としている。
だから、ミナカヌシは独りで地上に万子を生んでいる。
それはともかく、記紀史観と『ホツマツタヱ』史観の両方に共通しているのは「ミナカヌシ」を最初の独神としていることだ。
はたして、中条遺跡 土偶Aはミナカヌシだろうか。
この土偶の首の部分の上側の沈線には中央から向かって左側に、線上に破線のように5つの点状の穴が等間隔に開けられており、片側だけ、頭部が割れるようにしてあったようにも見える。
◼️◼️◼️◼️
このページでは中条遺跡から出土した土偶Aを頭部(顔部)、あるいは目と把握しましたが、次のページでは別の見方を紹介します。