息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話26
息子が倒れて11日目。
この日夫が面会に行くと、数人の大人に囲まれて、身体の動きを見てもらっている長男がいた。
廊下を歩いたり、室内で出来る検査をしていたようだった。
歩いている長男の様子は、確かに左脚のほうが弱っていて、ぴょこんぴょこんと左脚を引きずるような動きだったそうだ。
それでも、少しずつ動きたいという気持ちが出てきたのか、走ろうとしていたとのことだった。
その後はフルフラットにしたベッドの上で、自宅から持っていったレゴデュプロで遊んだ。
背もたれによっかからなくてもフラフラすることなく座り続けていたし、レゴデュプロも倒れる前と変わらない動きで遊べたようだった。
この日で、2クール目のステロイドパルスの投与が終了。
翌日からは服薬でステロイドを摂取していくことになった。
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長男が倒れて12日目。
ついに点滴が外れ、心拍などを計測しているコードだけが残った。
面会に行くと、ちょうどお昼ご飯が運ばれてきたところだった。
1人で食事をするのが寂しいという長男のリクエストで、昼食からおやつまでを一緒に居られるように時間を組んでいた。
その日のメニューはバターロールのサンドイッチとポテトサラダ、飲むヨーグルト。
サンドイッチを持って食べるのも、フォークでポテトサラダを食べるのも、ほとんどこぼすこともなくスムーズだった。
また、この日から一日3回服薬を開始したステロイドの薬は、とても苦いものだと説明されていた。
しかし、甘いシロップに混ぜてくれたのもあり、嫌がることなくきちんと服薬できていた。
その様子を確認しにきた主治医の先生は、
「すごいねぇ!大人でも嫌がる人がいるくらい苦いのに、けろっと飲んでるね!」
と心から褒めてくれた。
看護師さんや、先生方が褒めてくれて、とても嬉しそうにニコニコとしている長男。
本当に日に日に回復をしていて、その様子は倒れる前とほぼ変わらないところまで来ていると感じた。
この日も、理学療法士の先生が動きを見に来てくれた。
食後の腹ごなしとばかりに、病棟外の長い廊下に出て、10m弱ほどの距離を1人で歩く。
この日は毎日のリハビリの成果も出てきていたのか、左脚を引きずることもなく真っ直ぐ歩けていた。
時たま左側にふらつくことはあったが、左脚だけ力が入らないという様子も無く、スタスタと歩いたため、療法士さんも私も驚いた。
次に同じ距離を小走りで動いた。
少しフラフラと、特に左側に傾きがちではあったが、転ぶこともなく走り切れた。
その後は階段を試した。
手すりを持ち、右足から一段に両足を乗せて、一歩一歩のぼっていった。
最後の2段は、片足で一段ずつのぼれた。
そのままくるっと向きを変え、今のぼった階段を降りる。
こちらも手すりをもち、慎重に一段ごとに両足を置きながら降りていった。
少しふらつく部分もあったが、時間をかければ1人でもきちんと降りることが出来た。
療法士さんいわく、前日よりかなり改善しているとのことだった。
左側に傾きがちなのも、この様子だと麻痺では無く筋力の低下の可能性が高いと言ってもらえた。
麻痺がある場合、必ずとは言えないけれど、大概つま先が内側を向いてしまうことが多いのだという。
しかし、長男のつま先はどちらの足も真っ直ぐ前を向いていた。
さらに、身体の傾きもかなり改善されていたようだった。
その言葉に心の底からホッとした。
まだ麻痺ではないと確定したわけでは無かったが、実際に自分の目でみた長男の動きは、日に日に回復していると感じる。
きっと大丈夫だ、と思えた。