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感想「叛逆少女」


「叛逆少女」の表紙

1. 読書のきっかけ

 いつもお世話になっている「悠人書院」さんのオーナーである福岡さんの初著作。福岡さんが初著作を出版するための寄付を募っていた時に、私も寄付させていただいた。その寄付のお礼として、福岡さんが初著作である「叛逆少女」を送ってくださった。
 この本を読むまで、私は金子文子がどんな人物なのかほとんど知らなかった。(福岡さんからの情報で、「金子文子と朴烈」という映画をAmazon Primeで観てみたけれど、冒頭の10分しか観ていない。福岡さん、すみません。)福岡さんが寄付のお礼として本を送って下さったので、これを期に金子文子について知ってみようと思って読んでみた。

2. 感想                                

 一言で言うと、「福岡さんの渾身の伝記小説」。それは、この本の末尾にある膨大な参考文献一覧と文子のゆかりの地への訪問からも理解できる。
 金子文子の生涯は勿論、彼女が生きてきた当時の日本社会の様子や朝鮮半島事情を知ることができる。何より、新山初代さんと朴烈の描写が、文子を単に朴烈を愛するだけの女性にさせていないのが興味深かった。朴烈を想いつつも初代さんをも想う文子は、私にとって精神的に自立した女性であると同時に、初代さんとのシスターフッドを感じさせる女性に見えた。
 

 いちばんの疑問は、文子が「真の友情と温かみと力」を与えてくれたと綴る、親友・新山初代の自供や病死が、裁判における文子の言動に与えた影響が過小評価されていないか、ということだった(序章で触れた韓国映画『金子文子と朴烈』に登場する新山初代は、拷問に屈する意志の弱い女性で、文子との友情は一切描かれない)。 
 執筆中、同世代のある女性に、「あなたの無二の親友が、あなたの恋人のとばっちりで、結果的に死に追いやられる羽目になったら、どうする?あなたの恋人に直接の責任はないとして」と訊ねてみたことがある。彼女の答えは「そいつ(恋人のこと)、絶対に許さない」だった。彼女の答えが、すべての女性の感情を代表するものではないことは承知の上で、新山初代への文子の思いを軽く見るべきではないと言いたい。

「叛逆少女 あとがき」

「あとがき」のこの様な記述を読んで、私は「福岡さんも文子と初代さんの関係をシスターフッドとして描いたのかなあ?」と思った。
 この小説を読んで、私が更に興味深いと思ったのは、著者である福岡さんの朴烈に対する思いである。「終章 男たちのその後」で、福岡さんは朴烈について以下のように書いている。

朴烈は、没落した両班の子として生まれ、三・一独立運動と出会って抗日活動家となり、日本に渡ってニヒリストとして爆弾テロを企て、二十余の獄中生活を経て釈放され、在日朝鮮人内における反共グループのリーダーとなり、大韓民国の要人として朝鮮半島に帰還し、拉致された後は北朝鮮でも要職にあって南北統一を呼びかけた。 その生涯を眺めるに、朴烈の本質は、揺るぎなき信念を持った闘士というよりも、どのような状況をもしたたかに生き抜く植物的な強さにあったのではないかと感じられる。 

「叛逆少女 終章 男たちのその後」
  

朴烈を「叛逆少女」でしか知らないせいか、私は彼を「歴史に残るような際立った功績は残せていないな。」、「歴史の波に翻弄された人だな。」、「歴史の表舞台にいるタイプではないな。後世の人々に尊敬されるような人物ではないな。」と思った。ましてや、この小説での朴烈は自分の計画のために初代さんを利用したような冷酷な一面をもった男性でもあると私は思った。しかし、福岡さんは朴烈を「どのような状況をもしたたかに生き抜く植物的な強さ」と書いていた。その記述を読んで、私は「人の生き方や強さは、意志を持って主体的に動いていくだけではないのだな。」、「何かに翻弄されたり自分の思い通りにならなかったりしても、自分なりに精一杯生きることはできるのだな。」、「歴史の表舞台にいる人達だけが歴史ではないのだな。」と思うことが出来た。(そもそも「歴史の表舞台」とは何だ?とも思った。)

3. おすすめポイント

 当時の日本社会の様子と朝鮮半島の事情の詳細な描写と金子文子の生涯が上手く絡み合った小説だと思う。20世紀初頭~関東大震災までの日本と朝鮮半島の歴史の勉強になるし、私は、この小説を読んで初めて韓国に興味を持つようになれたかなあと思った。(今年の11月下旬に、私は日帰りで京都のウトロ平和祈念館に行ったが、そこで展示を見る際に、この小説を読んだことが助けになったと思う。)

この小説は、福岡さんの経営する悠人書院のホームページからでもAmazonからでも購入することができる。



拙い感想文で恐縮だけれども、私の書いた感想文が、誰かの「叛逆少女」を読むきっかけになってもらえたら良いなあと思う。


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