見出し画像

鑑賞ログ「ラーゲリより愛を込めて」

221220

2022年を代表する作品の一つであることは間違いない。TBSの力の入れ具合は近年稀に見る感じだったな。TBSラジオなんて、半年前くらいからCM流してたからな。そのCMのおかげで夏には観ようと決めていた。
監督は瀬々敬久監督。「64-ロクヨン- 前編/後編」は好き。「菊とギロチン」まだ観れてない。ん〜でも作品によっては当たり外れもある印象。恋愛ものよりもヒューマンドラマの方が私は合う監督かな。

満州・ハルビンで妻のモジミ(北川景子)と4人の子どもと暮らしていた山本幡男。終戦間際に終戦を迎え、抑留されることに。帰国の日を待ちわびるが、スパイ容疑をかけられてシベリア抑留者の身となる。ロシア文化に精通し、ソ連兵との通訳を務めたりする彼は、同じく抑留の身である松田(松坂桃李)、ハルピンで山本の上司だった(安田顕)、元漁師の新谷(中島健人)、そして旧軍の序列を引きずる相沢(桐谷健太)と共に、なんとか人間性を失わずに収容生活を生き延びようとする。その姿は、次第に彼らに生きる希望を与えていくーという話。

いや、いい話すぎるだろ。そして戦争モノだもの、重くて泣いて終わる作品だろ、と観る前から思っていた。いや、一枚上手ですわ。
戦争モノだから、重いヒューマニズム映画かなと思いきや、ちょっとした工夫があって、いい気持ちで見終わることができる。けれどもメッセージ性は失っていない。どこまで実話なのかはわからないけれど、いいプロット。
もうちょっと二宮和也演じる山本のキャラクターが掘り下げられてもいいのかなと思ったけれど。山本自身は自分の心情はことさら強くは語らない。周囲が彼のことを語る、という形式。ワンシーンだけ山本が自分の気持ちを強く語るシーンは良かった。
安田顕の登場シーンからの変わり様もすごい。メイクの力とかもあるんだろうけれど、説得力があるし、そこはやっぱり役者の力のように感じた。いい役だった。こういうときに「水どう」のonちゃんは思い出さないようにする。思い出さないぞ。

あと個人的には山本の母親の市毛良枝もいいけれど、松田の母親に朝加真由美を持ってくるのがいい。息子に恋しく思われる母っぽいもんな。

役者も脚本も良かったと思うけれど、ちょっと照明のテイストが合わなかったなぁ。意図があるんだろうけど、ところどころ影が強すぎて違和感。ちょっと作為的過ぎる気がしたなぁ。あと、重要なところでピンがずれてしまうカメラ…なんでよー。もったいないよー。大道具もちょっとハリボテ感。お金なかったの?とくに最初の見せ場の建物が崩れるところ。残念。

そして、邦画らしくツッコミどころは満載。途中までちゃんと脇を固めていた木村知貴が演じてた役ってどこで消えたの?そして、最後のケンティの衣装のコント感…笑。わざととしか思えない。こうやってちょっと抜けを作っておこう的な。

あと寺尾聰にちょっと話させすぎじゃない?もっと空白を作っても良かったと思うけどなー。ま、ラストシーンに持っていくためには必要な要素なんだろうけれど。分かりやすいことが重要性を持っていそうな作品だから仕方ないけど。ちょっと残念だったなー。

「この世界の片隅に」や2022年の24時間テレビのドラマ「無言館」もそうだったけれど、昔のように悲惨さだけで戦争を語る時代は終わったのかもしれない。最近はそこで営まれていた生活と地続きに戦争があった、というふうに語られるようになってきたと思う。そうじゃないと、もう70年以上も前の戦争はどんどん今とは切り離されていってしまって忘れられてしまうのかも。この作品も物語のオチ自体は心が温かくなって終わる。でも、結局なぜそうなったのかを考えた時、やはりそこには戦争があって、それはやっぱり止めるべきだよね、というメッセージがある。
そういう意味では、価値のある作品だと思う。

余談だけれど、そういや、主人公山本がいた中国のハルビンって例の731部隊がいたところであり、黒沢清監督の「スパイの妻」の重要なポイントでもあるよなと思った次第。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集