鑑賞ログ「さがす」
220207@池袋シネマ・ロサ
情報解禁早々に気になった作品。公開直前の主演・佐藤二朗の怒涛のTV出演時の「伊東蒼がいい」というコメントで観ること決定。「岬の兄妹」の監督の作品ということもプラスポイント。清水尋也も良さそうだし。
大阪の片隅で中学生の娘・楓(伊東蒼)と二人で暮らす佐藤二朗演じる主人公が、300万円の懸賞金をかけられた指名手配犯を見かけた翌日に姿を消した。楓は、日雇い仕事で厳しい生活をする父が300万円を目当てに指名手配犯を探しに行ったせいで失踪したと考え、父をさがす。協力者は自分に恋心を抱く同級生・豊(石井正太朗)と担任の教師(松岡依都美)。豊と父親がいるはずの工事現場に行くと、父親の名前で働いていたのは、なぜか全く別の男だった。やがて男が指名手配犯だと気づいた楓は、父親の失踪の原因を突き止めるために男を追う。しかし、父親失踪の裏には楓の想像を遥かに超える事実が隠されていた…という物語。
まずは、想像よりはるかに上をいく展開で、とても面白かった。娘の目を通した第1段階の表層的なストーリーがあり、その裏側をいわば主人公の視点で過去も交えながら明かしていく振り返り戦法。
タイトルやビジュアルから連想されるサスペンス的な要素あり、人の命や価値への問いかけあり、シリアスなシーンもあるけれど、ところどころ笑いもある。その笑いが、中学生の性衝動とか人間らしい情けなさからくるところがよく、さまざまな感情が描かれた重層的な作品だと思う。
ふとしたところから人生って崩壊してしまうのかも。そう思うとゾッとした。
そして、同じくらい役者が全員いい。
人に言えない色々な感情を持つ主人公・智を演じる佐藤二朗。愛するもの、守りたいものは明確なのに、人間としてのぎりぎりの選択、正義と狡猾さの間で苦悩する。家族愛と自己愛の狭間、アガペーとエロス。そして、自らの選択によって窮地に追い込まれていく。彼が立った崖っぷちは多かれ少なかれ誰もが経験したり、これから経験することなんじゃないかと思う。主人公の感情の複雑さがこの作品を重層的にしている気がする。
そして二朗さんおすすめの伊東蒼がいい。「空白」の古田新太の時も良かったけど、さらにこの作品で良かった。シリアスなシーンと普通の中学生らしいわがままな部分やキュートな部分がちゃんと役の中に存在していて、リアル。楓と智の互いへの気持ちのすれ違いが切ない。伊東蒼、将来にめっちゃ期待しちゃう☆
個人的にU20女優は2004年生まれの芦田愛菜と2002年生まれの清原果耶の2大巨頭だったんだが、そこに2005年生まれの伊東蒼が入って三つ巴になった。
「anone」「青くて痛くて脆い」ほか、ちょくちょく遭遇していた清水尋也。モデルみたいな雰囲気でいろいろな役を経験しているのは知りつつ、いまいちボルトとナットがあっていないような気がしていたけれど、この役は良かったなぁ。今回の役はしっかりとした芯があるように感じた。個人的に線の細い俳優が苦手というのもあるのかもしれないけれど。でも、今までも印象に残っているということは役者として魅力があるということなんだろうな。
森田望智はこの作品では誰だかわからない(褒めてる)。メイクの力もあるんだろうけれど、「全裸監督」での役と同じ人とは全く思えないくらい、いつもの自分の印象を消せるってすごい。けれど、両方ともキャラクターが魅力的だし、今やってるドラマ「妻、小学生になる。」も含めてどんな役も魅力的にできるのが森田望智の怖いところだな(褒めてる)。
あと、この人誰だっけ?と思っていたけれど、主人公の妻を演じた成嶋瞳子は「恋人たち」の人だった。あの映画での存在感も良かったけれど、今回も良い。
今調べたら、共同脚本に「まともじゃないのは君も一緒」の高田亮が入っているのか。個人的なツボを押されたのも納得。
「親の心子知らず。すれ違う互いの想い」というのが核としてあるんだろうけれど、それがオリジナルでこんな物語になったなんて本当にすごいと思う。
父娘二人のラストシーンも良かった。