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1990年代のアルファレコード後期の(黒)歴史:Alfa In The '90sシリーズ、あるいはSPINレーベルについて(3)

このシリーズ、3回目はシリーズの中核ともいえるYMO関連についてを取り上げよう。
そもそも、このSPINレーベルは、言わずもがなYMO in The '90sから始まっている。そのため、YMO関連のリリースもかなり多い。というか、YMOとスネークマンショーが半分近くを占めている。そして、この時期のYMO関連はぶっちゃけ、賛否両論というか毀誉褒貶が激しいものとなっている。

SPINレーベルのYMO Remix

Yellow Magic Orchestra – Hi-Tech / No Crime

リリースは92年6月21日。
In The '90sの最終作である立花ハジメのがリリースされた翌月のリリース。
海外の当時のまさに”テクノ”のアーティストによるYMOリミックス集。立花ハジメ in The '90sを手掛けたMark Gambleが全体に頑張っていて、自身の名義で3曲、Rhythmatic名義で1曲リミックスしている。LFOの中国女やShamenのFirecracker、OrbitalのBehind The Maskなど聴き所は多いが、一番びっくりさせられたのはAltern 8のMultiplies。原型のかけらもないと思ったら、実はほとんどの音を原曲からとっているとよく聞くとわかり鳥肌が立った。ちなみに海外でも同タイトルで収録曲がちょっと違うバージョンがリリースされて、ややこしいんじゃボケとファンからは不評をかっている。

YMO Versus The Human League – YMO Versus The Human League

リリースは93年4月21日
途中でいくつか似たフォーマットのベスト盤をALFA本体名義で出しているので、間が空いているように見えるが、そこで出てきたのがまさに謎な一枚。エレポップの雄Human Leagueによるリミックスというかカバー。
Behind The Mask、君に胸キュン、ボーナストラックにFirecracker / Tong Poo。
この作品、実はトラックはMark Gambleが作っていて、Human Leagueはボーカルを入れているだけ。なので、Firecracker / Tong PooはMark Gambleだけの仕事。アルファはMark Gambleにどれだけ仕事させてるんだ。
Behind The Maskはいわゆる坂本ソロバージョンの歌詞(マイケルジャクソンがつけたやつ)なので微妙だが、君に胸キュンは胡散臭い英語カバーでなかなか良い。

YMO VS The Orb – The Tong Poo Remixes

リリースは93年7月21日
そして、このリミックスでは本命に近いThe OrbによるTong Pooの3バージョンのリミックスがリリース。3曲しか入ってないのに収録時間は30分近い。さすがThe Orb。実はThe Orbによるリミックス自体は92年には海外盤Hi-Tech / No Crimeや先行シングルには収録されており、日本でも92年8月にリリースされたボックスセットTechno Bibleに収録されている。なので曲が作られたのは92年より前と思われる。時期的にはU.F.Orbの時期なので、死ぬほど長く原型が少ない。原型が無いことの注釈がCDの裏ジャケに入ってるくらい笑
なぜ92年に作られて音源としてはある程度出ているものをあえてシングルカットしたかということだが、単純にリリース前の6月に再生YMOライブの前座をThe Orbがやったからですね。便乗商法!

Yellow Magic Orchestra – Hi-Tech / U.S. Crime

リリースは93年9月21日
たぶん、この時期のSPINが評判悪いのはたぶんこのせい。海外盤のHi-Tech / No CrimeをSPINからもリリースしてしまったんだから。しかも海外盤にさらにMark GambleのFirecracker - Tong Pooを追加してやがる。って、これHuman Leagueとのやつに入ってたやつじゃん、しかも、The Orbのリミックス Part IIを途中でカットしてるじゃんということで、非常に評判が悪い。これ、何のために出したんだろ。

SPINレーベルのYMOカバー

そして、SPINがYMOファンから疎まれているもう一つの理由はこのカバー仕事のせいもある。

カバの会 – YMOのカバ

リリースは93年5月21日。なので、実はThe Orbのやつよりこっちの方がはやい。
帯に堂々と「YMOの未発表テイクおよび新作ではありません」と書かれてる。スネークマンショーの桑原茂一プロデュースによるYMOのカバー集。なんとなくスキット風の曲が続く。参加アーティストのクレジットを見ると桜井圭介、椎名謙介、佐々木潤、Natural Essence(のちのAKAKAGE)、KUDO、コモエスタ八重樫(本名の八重樫健一名義)あたりの桑原周辺、いわゆるCLUBKING人脈が中心的に参加してる。で、よく見るとInsomniaのカバーにはHOWIE Bが参加してて驚く。まあ、椎名謙介つながりだろうけど。

カバの会 – 続YMOのカバ

93年10月21日リリース。タイトル通り、カバの会によるYMOカバー第2弾。今回はFirecrackerとInsomniaの2曲のみ。
藤田哲司がアレンジャーらしいけど、アナログの方では古賀明暢になってるんだよな。どっちなんだろ。アルバム全体のプロデュースは前作に引き続き桑原茂一。Firecrackerはちょっとケチャのリズムが絡むエスノハウスな風情がはいっていてまあまあ良い。
ちなみにあまりセンスがいいとも思わないけどジャケットなどのグラフィックデザインはTycoon Graphics

Baby-Tokio & Electric Friends – Who's YMO 再日本製

93年10月21日リリース。つまり続YMOのカバと同時リリース。なんで??
こちらは東京の若手テクノミュージシャンを中心にしたカバー集。プロデューサーのDJ Baby Tokio周辺、彼が当時主宰していたクラブチッタ川崎のイベント「クラブ・アンドロメダ」の出演者などからなるカバー曲コンピ。
参加メンバーで有名なのは電気GROOVEの初期のプログラミングをしていた高橋コージ(T2名義)とKing Of Opus(Opus名義)、Interferon、B-2Dep'tあたりだろうか。
あ、これ、今、書いてて気づいたけど初期Transonicと人選被るな。Japanese Early Technoじゃん。
通常こういうコンピで取り上げられがちなライディーンや東風、ファイアークラッカーをやらずに、CUE、Music Plan、体操、Nice AgeといったYMOファンは好きだが一般受けはそこまでではない渋めの選曲が光る。今の時代に聞くならこっちかもね。

SPINレーベルではないYMOのリミックス

SPINからのリリースではないがALFAからリリースされたYMOのリミックス音源もある。要はYMOのベスト盤が編まれた際におまけとして収録されたやつですな。

Y.M.O. – Kyoretsu Na Rhythm

92年7月21日リリース。
YMOの海外仕様のベスト盤。海外マスタリング音源を使っていて、今までのアルファ音源とは違うぞというのが売りで、かつ、興味深いのはYMO in the '90sをわざわざフル尺で最後に入れていること。これだけで15分くらい占めちゃうのにね。他の選曲もかなり不思議なので詳細は上記のDiscogsをみてほしい。
そして、日本盤のみに「NICE AGE THE TF Production REMIX」が入っている。バックトラックを簡素にしたハウス仕立てだが、そこまで面白いってわけでもない。ちょっとおまけっぽい。

Y.M.O. – Techno Bible

92年8月21日リリース。
割と有名なYMO初のボックスセット。これの5枚目が”Remixes and Rare Tracks”となっており、リミックスが7曲収録されている。
基本的にはHi-Tech No Crime収録の別バージョンだが、The OrbによるTong Pooはここが国内初出。また、Computer Games (Mark Gamble Micro-Mix IV), Pure Jam (The Sideways Remix), Neue Tanz (The Something Wonderful Remix), がここで初出。Mark GambleとSomething Wonderfulはいいとして、このThe Sidewaysって誰なんだろ。ブックレットにも説明ないし。トラックは原曲にそのままブリープテクノっぽいバックトラックをのっけたみたいな感じ。しかし、Mark Gamble、アルファでアルバム1枚分くらい仕事してるな笑

Various – Beat Complex Vol. 1 & Vol. 2

1995年11月22日に2枚同時リリース。
これ、正直、未だにどういう経緯と理由で作られたのかわからない。YMOだけでなく、SANDIIや立花ハジメ、スネークマンショー、MELONの作品をリミックスしたアルバム。プロデューサーは大御所DJ松本みつぐ。なので、いわゆるクラブ界隈のDJリミックスチームが参加してる。人脈的にはクラブというよりもディスコ文化の流れっぽい。クレジットをよく見るとCo‐FusionのDJ WADAも参加してる。
なんかデザインが全体的に95年とは思えないんだよな。ちなみに収録曲は下記の通り。Vol.1のミックスタイトルがちょっとうざい笑
久々に聞きなおしたら、Vol.2の「咲坂と桃内のごきげんいかがワン・トゥ・スリー」のBossanova Mixはとてつもなく良かった。打ち込みのボサノバだけど、これラウンジビートじゃなくてHCFDMだわ。

Vol.1
1 Yellow Magic Orchestra–Rydeen (Nabe's Surf Beat Mix)7:20
2 Yellow Magic Orchestra–Mad Pierrot (Nabe's Noise Sonic Mix)6:58
3 You An' Me Orgasmus Orchestra–Gokigen Ikaga 123 (Nabe's Play Piano Mix)8:12
4 Snakeman Show–Gag Beat (Shuichi & Nabe Janky Beat Sonic Mix)7:28
5 Melon–Trance Dance International (Ryo's Trance Bleeze Mix)4:57
6 Yellow Magic Orchestra–Absolute Ego Dance (Nabe's Eternity Style Mix)7:41
7 Hajime Tachibana–Rock (Ryo's Trust Item Mix)4:56
8 Sandii–Alive (Powder Style Snow Mix)4:56

Vol.2
1 Yellow Magic Orchestra– Technopolis (Techno Mix) 5:57
2 Yellow Magic Orchestra– Tighten Up (House Mix) 6:09
3 You An' Me Orgasmus Orchestra– Gokigen Ikaga 123 (Bossanova Mix) 4:07
4 Snakeman Show– Gag Beat II (Gag Mix) 4:30
5 Melon– Do The Pithecan/Happy Age (House Mix) 4:21
6 Sandii– Love Sick (Euro Mix) 4:24
7 Hajime Tachibana– Replicant JB (Rock Mix) 3:08
8 Yellow Magic Orchestra– Fire Cracker (Techno Mix) 12:27

YMO & Bakusho-Mondai + Hidekazu Nagai – 増長 X∞Presumptuous

98年12月16日リリース。
まあ、これはちょっとおまけか。スネークマンショーの桑原茂一プロデュース。YMOの「増殖」のリメイクというか、スネークマンショーパートを爆笑問題と長井秀和のコントスケッチにしたもの。なので、音源は「増殖」だけだと自分もずっと思ってたんだけど、実は後半パートは「YMOのカバ」、「続YMOのカバ」の音源を使ってる。とはいえ、初出音源はほぼないのよね。10曲目の「1-900 BLOW ~ Shadows On The Ground (Water Bed)」 が「Blue Film」(スネークマンショーの後継プロジェクト)の楽曲と「YMOのカバ」収録曲のエディットだけど、まあ、別にという感じ。

おまけALFA およびSPINレーベルのYMO関連アナログ盤

もうこれはおまけ。この時期、クラブ関連に意識的になっていたALFAレコードは、YMOのリミックスでいくつかアナログでシングルを切ってる。
これはDiscogsのリンクだけ貼っておこう。

Hi-Tech No Crime関連アナログ3枚。いちおうバージョン違いが多い。全部イエローヴァイナル。個人的には、レーベル面のフォーマットが全部微妙にフォントの使い方など違っていてきもちわるい。

これはヨーロッパのInternalからリリースされたリミックス集。The Orbのライディーンリミックスはエディットバージョンになってる。

なぜかYMOのカバは2枚目だけアナログがある。CDにある「Fire Cracker (Adventure Of Garuda Radio Edit #2)」だけ収録されていない。

Beat Complexの2枚の楽曲から、さらにヴァージョン違いを収録したアナログ。これ1枚持っていてもあまり意味がないという非常にめんどくさいやつ。

あと1回、スネークマンショーを紹介して最後になります。まさか、これ4回シリーズになるとは思わなんだ。

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