都道府県別 お寺のお名前ランキングTOP10(エリア版)3/3 中国・四国・九州・沖縄エリア版
366では、日本国内に存在する寺院名を国税庁が公開している「法人番号データ」を元に集計して、以前掲載しました「お寺のお名前ランキングTOP10」の都道府県別版を作成しました。
→全国版ランキング
→北海道・東北・関東エリア版
→中部・近畿エリア版
今回は、中国・四国・九州・沖縄エリア版です。かつて、お寺は田んぼを見下ろす丘の上や山の中に建てられていました。このエリアにはそのような立地のお寺が沢山残されています。幽玄のたたずまいを持つ美しいお寺の一部をご紹介いたします。
【香川県・善通寺(ぜんつうじ)】
四国八十八箇所霊場の第七十五番札所で、真言宗開祖空海(弘法大師)生誕の地として知られているお寺です。「和歌山県の高野山」、「京都府の東寺」と共に弘法大師三大霊場に数えられています。真言宗善通寺派総本山でお大師さまゆかりの三大霊跡の一つ(金剛峯寺・東寺)でもあり、いつもたくさんの人々で賑わっています。(下の写真)
【山口県・瑠璃光寺(るりこうじ)】
山口市香山町にある曹洞宗のお寺です。なんといっても「京都の醍醐寺」、「奈良の法隆寺」と並んで「日本三名塔」の一つに数えられる国宝の五重塔が見所。それ以外にも、境内は香山公園と呼ばれ、桜や梅の名所にもなっており、「西の京・山口」の名に恥じない中国地方を代表する観光名所と言えるでしょう。(下の写真)
【福岡県・如意輪寺(にょいりんじ)】
福岡県小郡市の如意輪寺は「かえる寺」という別名でも有名で、住職が中国から翡翠でできたかえるを持ち帰ってきたのをきっかけに、このお寺には現在8,000ものかえるのオブジェや置物が並んでいます。かえるは腰が低く、常に前へと飛び跳ね、目的を達成するといわれており、古くより中国では仙人の使いとされていました。国内はもとより海外からも観光客が押し寄せるお寺として有名です。(下の写真)
全国の各エリアと同様に、このエリアでも一番多いお寺の名称は「観音寺」と「光明寺」になりますが、熊本県は「正福寺」が11カ寺で第1位、大分県は「西福寺」が12カ寺で第1位となっています。上位にランクインしているお寺以外でも、特定の寺院名について「このお寺の名前はいろいろなところで見かけるなぁ」と感じている人は多いのではないでしょうか。
◆中国・四国・九州・沖縄エリアお寺のお名前ランキング
【鳥取県TOP10】寺院数(455)
1位 観音寺 8
2位 光明寺 6
3位 吉祥院 4
吉祥寺 4
萬福寺 4
6位 永福寺 3
極楽寺 3
正法寺 3
正福寺 3
長楽寺 3
長谷寺 3
龍福寺 3
神宮寺 3
【島根県TOP10】寺院数(1291)
1位 観音寺 12
2位 安楽寺 11
西光寺 11
4位 光明寺 10
5位 善福寺 9
安養寺 9
7位 常福寺 8
浄土寺 8
西念寺 8
10位 極楽寺 7
西楽寺 7
西方寺 7
【岡山県TOP10】寺院数(1347)
1位 観音寺 23
2位 安養寺 11
3位 吉祥寺 8
善福寺 8
普門寺 8
圓福寺 8
7位 極楽寺 7
真光寺 7
萬福寺 7
金剛寺 7
【広島県TOP10】寺院数(1689)
1位 光明寺 17
2位 西光寺 15
3位 西福寺 14
4位 観音寺 13
5位 安楽寺 9
金剛寺 9
善正寺 9
8位 正善寺 8
正念寺 8
西教寺 8
圓福寺 8
【山口県TOP10】寺院数(1408)
1位 光明寺 16
2位 西光寺 14
3位 極楽寺 11
4位 西福寺 11
5位 安養寺 10
6位 正覚寺 9
7位 西教寺 8
8位 善福寺 8
9位 安楽寺 7
観音寺 7
西念寺 7
報恩寺 7
【徳島県TOP10】寺院数(622)
1位 観音寺 13
2位 西福寺 9
3位 真福寺 7
4位 西光寺 6
地福寺 6
6位 願成寺 5
光明寺 5
正福寺 5
善福寺 5
薬師寺 5
極楽寺 5
【香川県TOP10】寺院数(865)
1位 観音寺 12
西光寺 12
3位 安養寺 9
4位 極楽寺 8
5位 光明寺 7
6位 吉祥寺 5
金剛寺 5
光照寺 5
西教寺 5
圓光寺 5
【愛媛県TOP10】寺院数(1062)
1位 光明寺 12
2位 安養寺 10
3位 観音寺 8
正法寺 8
5位 善福寺 7
安楽寺 7
7位 願成寺 6
西光寺 6
西福寺 6
極楽寺 6
【高知県TOP10】寺院数(354)
1位 観音寺 6
2位 光明寺 5
3位 西光寺 4
薬師寺 4
願成寺 4
極楽寺 4
7位 遍照寺 3
萬福寺 3
9位 延命寺 2
吉祥寺 2
玉泉寺 2
金剛寺 2
護国寺 2
弘法寺 2
成願寺 2
正法寺 2
正福寺 2
清福寺 2
西願寺 2
西福寺 2
誓願寺 2
善教寺 2
善照寺 2
大日寺 2
長法寺 2
定福寺 2
東光寺 2
徳法寺 2
報恩寺 2
【福岡県TOP10】寺院数(2258)
1位 光明寺 22
2位 西光寺 21
3位 観音寺 21
4位 西福寺 16
5位 安養寺 11
6位 西念寺 11
7位 西方寺 11
8位 西教寺 10
9位 極楽寺 10
10位 正法寺 9
正福寺 9
【佐賀県TOP10】寺院数(1048)
1位 光明寺 8
東光寺 8
3位 観音寺 7
4位 西光寺 6
西念寺 6
西福寺 6
龍泉寺 6
8位 報恩寺 5
法泉寺 5
地蔵院 5
【長崎県TOP10】寺院数(714)
1位 観音寺 7
2位 延命寺 5
光明寺 5
正法寺 5
西光寺 5
西福寺 5
7位 阿弥陀寺 4
正覺寺 4
妙法寺 4
圓通寺 4
圓福寺 4
【熊本県TOP10】(1153)
1位 正福寺 11
2位 西福寺 10
3位 光明寺 7
4位 観音寺 5
正教寺 5
正念寺 5
西光寺 5
善行寺 5
9位 観音院 4
教法寺 4
光現寺 4
光勝寺 4
光照寺 4
光蓮寺 4
常楽寺 4
正光寺 4
正善寺 4
西照寺 4
西念寺 4
善正寺 4
大光寺 4
東光寺 4
東福寺 4
遍照寺 4
法雲寺 4
妙法寺 4
【大分県TOP10】寺院数(1212)
1位 西福寺 12
2位 光明寺 11
3位 西光寺 9
4位 観音寺 8
5位 安楽寺 7
安養寺 7
吉祥寺 7
極楽寺 7
9位 専念寺 6
10位 長福寺 5
【宮崎県TOP10】寺院数(332)
1位 光明寺 5
観音寺 5
3位 吉祥寺 3
光照寺 3
遍照寺 3
6位 安楽寺 2
極楽寺 2
光勝寺 2
光徳寺 2
慈眼寺 2
昌福寺 2
松尾寺 2
正覚寺 2
正念寺 2
長徳寺 2
東光寺 2
徳善寺 2
普門寺 2
法泉寺 2
本源寺 2
妙法寺 2
明照寺 2
龍泉寺 2
淨光寺 2
萬福寺 2
【鹿児島県TOP10】寺院数(458)
1位 光明寺 9
2位 光照寺 4
善福寺 4
4位 永福寺 3
願生寺 3
正覚寺 3
西岸寺 3
西光寺 3
9位 願船寺 2
光雲寺 2
光徳寺 2
光蓮寺 2
光壽寺 2
弘法寺 2
三光寺 2
照光寺 2
常楽寺 2
浄国寺 2
信光寺 2
心光寺 2
真光寺 2
正念寺 2
正福寺 2
西樂寺 2
西福寺 2
専念寺 2
善照寺 2
大円寺 2
大願寺 2
大光寺 2
大照寺 2
長光寺 2
不動寺 2
報恩寺 2
法泉寺 2
法隆寺 2
本国寺 2
本蓮寺 2
妙圓寺 2
明信寺 2
龍泉寺 2
淨光寺 2
淨念寺 2
稱讃寺 2
【沖縄県TOP10】寺院数(63)
全て1カ寺の為ランキングなし
注1:2021年5月21日現在のデータとなります。
注2:旧字体での表記も同一名称として集計しました。
注3:漢字の読みが異なるものも、同一名称として集計しました。
出所:国税庁「法人番号データ」、文化庁「全国社寺教会等宗教団体都道府県別 2020年度」を基に株式会社366が作成
前回の「中部・近畿版」の記事でも触れていますが、日本の仏教地域は北から 「北海道浄土系地域」、「東北禅系地域」、 「関東天台・真言系地域」、 「中部禅系地域」 、「西日本浄土系地域」、 「四国・岡山天台・真言系地域」 の6地域と沖縄県の 「沖縄仏教希薄地域」 以上7地域に区分することができるそうです。
(日本における仏教諸宗派の分布より―仏教地域区分図作成の試み―小田匡保氏(駒沢大学)参照)
全国の都道府県の中で沖縄県だけは重複する名称をもつ寺院が一つもありません。その理由はお寺の数の少なさにあります。現在の寺院数はたった63カ寺。その全てが異なる名前を持っています。
沖縄県の人口は約145万人ですので、人口10万人当たり4.3カ寺となります。10万人当たりの寺院数1位の滋賀県(216カ寺)、2位福井県(209カ寺)と比較すると大きな差があることがわかります。また、45位の東京都や46位の神奈川県でも約20カ寺であり、沖縄だけが突出して少ないものとなっています。この沖縄の寺院数の少なさには、これまで歩んできた沖縄の歴史や文化が大きく関係しています。
沖縄は、東西約1,000km、南北約400kmの広大な海域に160の島々で構成されています。160島のうち有人島だけでも47島あり、かつ、それぞれの島で本土とは異なる固有の文化や風習を持っています。そんな沖縄は、かつて琉球と呼ばれた一つの国でした。琉球王国は、1429年に成立し、1879年までの間、約450年間にわたり、日本の南西諸島に存在した王制の国です。古来より琉球にはアニミズム、祖霊崇拝、おなり神信仰を基礎とする固有の宗教があり、首里には国王を守護するために王族の女性から任命される「聞得大君」という宗教上の最高権力者が国王と共に存在していました。国王に任命される聞得大君は琉球王国最高位の権力者である国王のおなり神に位置づけられ、琉球全土の祝女の頂点に立つ存在であり、命令権限を持っていました。
そんな琉球王国における仏教の始まりは本土の鎌倉時代、13世紀後半と言われています。沖縄に漂着した禅鑑が英祖王の帰依を得て浦添城の西に極楽寺を建立したと、「琉球国由来記巻十」の「琉球国諸寺旧記序」に記されています。その後、察度の代(1368年)に和僧頼重法印が勅願寺を開き真言宗を伝え、尚真王の代(1492年)に琉球における臨済宗の祖と言われる和僧芥隠承琥が円覚寺を創建し、1608年には明への渡航を志した日本の僧侶、袋中が琉球に渡り浄土宗を伝えました。しかしながら、その後の琉球王国時代における仏教は、国王、王族や士族の一部が崇拝するだけであり、庶民にまで念仏が早くから普及することはありませんでした。 それには沖縄独特の気質や思想が関係あるようです。
沖縄文化の普及に尽力した宮里朝光氏の「琉球人の思想と宗教」によると、琉球人は寛容で進取の気性に富んだので諸国と交易し、それらの国から多くの文化を取り入れたが、取り入れた外国文化は自国文化と融合させて独特の文化をつくったと述べ、仏教もその内容を琉球固有のものに変えたとしています。また、琉球は人間平等で現世主義であったため、仏教をただ国家鎮護として受け入れ、一般民衆のものにならなかったのも当然のことであると述べられています。
薩摩藩による琉球侵攻後には薩摩藩の付属国となり間接支配下に入り、薩摩藩内で定められていた浄土真宗の禁圧が琉球にも適用されました。実は鹿児島県(薩摩藩)は、沖縄と人口密集地域(東京都&神奈川県)を除くと、10万人当たりの寺院数が最も少ないのです。現在の鹿児島県である薩摩藩は、幕末から明治初期にかけて寺院が一つ残らず取り壊され、僧侶もすべて還俗させられました。当時、西洋化を進め軍備を拡充したい薩摩藩には大量の金属が必要となり、寺院から仏具や釣鐘などが次々と没収され、没収された仏具などは武器の鋳造に当てられました。
明治政府による琉球処分で琉球王国は沖縄へと変わり、仏教の布教が解禁されたことでようやく庶民に仏教の教えが広く知られるようになります。しかし、先に述べたとおり沖縄で現在定着している仏教は、私たちがイメージする伝統的な仏教ではなく、沖縄の思想や文化と融合した沖縄固有の仏教と言えるのかもしれません。現在の沖縄における信仰は、このような歴史的・地理的な背景により、仏教、神道、土着宗教、カトリック、新宗教など多様な宗教が混在しており、寺院数の少なさに繋がっています。
出所:「沖縄県庁ホームページ」「Wikipedia」等を基に株式会社366が作成