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日本の医療動向 2040年問題「労働人口の減少と更なる高齢化」

written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員)

日本は2025年に団塊の世代が後期高齢者(75才以上)になります。この「2025年問題」ついては過去の記事で書きました。

今回はその先にある2040年問題について書きます。

■2040年問題とは何か。

2025年問題の延長線上にあり、労働人口と更なる高齢化が同時に起こる現象です。この原因としては様々ありますが、第3次ベビーブームが起こらず出生率の低下が起こったことが大きいと思います。

医療機関は「安定的に医療を提供し続けること」「安定した経営をすること」がいまのままだと非常に難しくなります。


厚生労働省 高齢化の推移 


2025年問題から2040年問題への「流れ」と「違い」を把握すると分かり易いので、まず2025年問題について端的に書きます。


■2025年問題=段階の世代が後期高齢者になるため、医療費が増大する。

75歳以上の後期高齢者の医療費は1人当たり年間約92万円で、65~74歳の前期高齢者の約55.5万円と比べると、約1.6倍となってます。
団塊の世代が後期高齢者になるため医療費がピークを迎えます。

団塊の世代は親となり第2次ベビーブームを起こしているので、労働人口キープできました。2025年には1人の高齢者(65才以上)を労働人口(15~64才)2人で支える状態です。

これでも高齢者を支える現役世代は大変ですが、2025年以降も高齢化が進んでいきます。2040年には、団塊ジュニア世代が高齢者(65歳以上)になります。
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団塊ジュニア世代とは
団塊ジュニア(だんかいジュニア)とは、日本で1971年(昭和46年)から1974年(昭和49年)に生まれた世代を指す。第二次ベビーブーム世代とも呼ばれる。

団塊ジュニアは、ポスト団塊ジュニアとともに「就職氷河期世代」と呼ばれることも多い。
=未婚率や出生率が低いことに繋がっている。
団塊ジュニア世代の子どもの世代はZ世代
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■2040年問題=更なる高齢化と、労働人口の減少が同時に起こる。


団塊ジュニア世代が高齢者になります。この世代は経済力が「就職氷河期世代」と呼ばれ、経済力が安定しないこともあり、ベビーブームが起こりませんでした。(起こっていれば第3次ベビーブーム)

そのため労働人口の減少が一気に進むと言われています。1人の高齢者を1.5人の労働人口で支える状態です。

2025年は6,634万人となる労働人口が、2040年には5,542万人まで減少すると言われています。

また後期高齢者(75才以上)の人口も2054年まで増加を続けると言われています。

■2040年問題によって起こること

2040年の社会保障や働き方について厚生労働省の資料があります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21483.html
厚生労働省「2040年を展望した社会保障・働き方改革について」

私の関係する医療福祉の分野についてピックアップしました。

■社会保障費(医療費、年金)の増大

政府は税や保険料で賄う医療、介護など社会保障給付費が経済成長率を年2%前後とする基本ケースで2040年度に190兆円になるとの推計を公表しました。

2018年度から6割増え、特に介護は高齢者数の増加で2.4倍の約26兆円に膨らみます。給付全体が経済成長を上回るペースで増えます。2040年には65歳以上の人口が4千万人近くとピークに達し、人口のほぼ3人に1人を占めます。

一方、15~64歳の生産年齢人口は18年度より約1500万人減り、税や保険料を負担し社会保障制度を支える就業者数も約930万人減ります。

2040年ごろに85歳以上の人口は1千万人超と、現在の2倍以上になる見込みです。医療は40年度は68兆5千億円と、2018年度比で75%増える見込みになっています。

また再生医療などの保険適用範囲が広がれば給付は膨らむ可能性もあります。いずれにせよ、制度を支える現役世代の負担は増します。給付の膨張に歯止めをかけなければ、制度を支えきれなくなる恐れがあります。

医療や介護サービスを利用する高齢者の自己負担を引き上げたり、増税をしないと運営が成り立たないのではないでしょうか。

これまで2014年消費税5%→8%、2019年8%→10%と増税されてきました。
「支える側の現役世代の急減」している為、更なる増税は避けられないような気がします。

■深刻な人手不足

現役世代が急減する中、労働力や税収を確保する必要があります。そのため70才までの就労機会の確保や、副業の解禁が進められています。

最近リカレント教育という言葉をよく目にしますが、スキルアップやして働き続けることができる仕組みを作っていく必要があるでしょう。

医療のみならず様々は業界でDXによる事業構造改革を進めていく必要があります。

■医療福祉サービス改革

医師や看護師の労働人口は減りますが、逆に高齢者はどんどん増えていきます。そのためロボット・AI・ICT等の実用化推進して、医療福祉業務を効率化する必要があります。

最近ではオンライン診療やAIを使った内視鏡画像の診断、介護福祉の分野ではパワーアシストスーツが実用化されています。今後も新しいテクノロジーによる効率化を進める必要があります。

またどんなに効率化したとしても医師の数は絶対的に不足することが予想されます。そのため臨床工学技士や看護師などのコメディカルによる手術直接介助業務についても検討が進められています。

これはコメディカルが医師の指示のもと、手術の一部を解除するもので、例えば内視鏡外科手術にて内視鏡を保持したり、エコーを操作したりするものです。これは「タスクシフト」と呼ばれる取組です。

医療機器メーカー時代に担当していた施設の方もこの分野について学会で発表をされていました。
https://general.tane.or.jp/wp-content/themes/general/assets/images/hospital/journal/07/17.pdf

効率化だけではなく「業務移管」も進めなくてはいけません。この2040年問題は医療福祉サービスだけではなく、物流、飲食業界など全ての業界に当てはまります。

このように2040年問題には様々な対策が出されています。今後それぞれの内容についても記事にしていきたいと思います。

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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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