あーちゃんが振り返るとき 3


朝、カーテンを開ける。


朝の光がマウス達に差し込んできました。
おはよう!おはよう!
マウス達は、一瞬、あまりの光に驚いて、立ちすくんでいるようでしたが、すぐに大急ぎでお部屋の隅まで走ってきました。そして、壁に手をつき、背伸びをするように2本脚で立ち上がると、とてもちいさな鳴き声で、ちゅくちゅくちゅくちゅく。マウソックに訴えています。

おいしいものをくれますよね、待っていたんだよ。
わかった、わかった、今、用意するね。

マウソックは、穏やかな顔つきでマウス達に話しかけながら、すばやく観察を始めました。

観察事項
■マウスが小さく鳴くのを聞きました。(以下、問題なし)
・聴力・嗅覚・呼吸 
■マウスが2本脚で立ち上がり意図せずお腹を見せてくれています。(以下、問題なし)
・脱毛、赤い斑点のようなもの(皮膚炎の疑い)
・お腹の様子(下痢、膨れているような様子)
・痛み
■朝、マウソックからおやつをもらえるというルーチンを記憶して素早く動いています。(以下、問題なし)
・脳疾患・視力・痛み
■マウス達は、しっかりとマウソックを見つめ返してきます。(以下、問題なし)
・視力
■マウソックは、軽くマウス達を触ってみました。
・平熱(ヒトの手より若干、温かいくらい。)

少しずつ夏日に近づいているのだろうか、夏の太陽はまだみえない。
気温だけがそろそろ梅雨に終わりを告げようとしている。

時間は戻らない。だから昨日ですべて終わってくれることを願っていた。いつだって、そう思って、でもその願いは届かないとわかっていた。

やっぱり、やっぱりあーちゃんだけ、ねだりに来なかった。

マウソックは、自分でもわかるほど頬が固くなったことに気が付いた。
そして、心臓の薬を強制投与するための準備を始めた。


どうか、ショックで細動を起こさないように


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