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フリーランス法って何?② フリーと仕事する人が守らなければならないこと

前回の記事を上げたところ、とても大きな反響があり、いろんな方からご質問がありました。

私自身もこの間、公正取引委員会によるフリーランス法の説明会に2回ほど出席しましたので、そこで得た知識を皆さんにシェアしたいと思います。
(※前回は「フリーランス新法」と表記していましたが、「フリーランス法」のほうが一般的になってきましたので、今回から後者に統一します)


そもそも誰がこの法律を守らないといけないの?

前回、フリーランス法の対象となるフリーランスは誰かという説明をしました。
それでは、誰がこの法律を守らなければいけないのでしょうか。
法律では、発注事業者を以下のように定めています。

■特定業務委託事業者
①個人であって、従業員を使用するもの
②法人であって、2名以上の役員または従業員がいるもの
■業務委託事業者
自身がフリーランスである場合も含め、フリーランスに業務委託をする事業者

法人かどうかは問われないのがポイント。わたしもフリーランスのデザイナーの方に仕事を依頼するときがありますが、その場合わたしもフリーランス法を守らなければいけません。

なおフリーランス法は、業種業界は問いません。すべてのフリーランスが対象になります。

「取引条件の明示」ってナニ?

一言でいうと「口約束はダメよ」です。
書面や電磁的方法(メール、チャット、SNSの DMなど)で、以下を明確に書かなければなりません。

  • 発注事業者とフリーランス双方の名称(ペンネーム・ビジネスネームOK)

  • 業務委託を合意した日

  • フリーランスにお願いする業務の内容

  • 作業日と納品日

  • 作業場所と納品場所

  • 仕事の内容に検品が必要な場合、検査完了日

  • 報酬の額と支払い期日

  • 現金以外で報酬を支払う場合は、その支払い方法

電話など口頭で伝えることは認められていません。
発注書や契約書でもOK。ブログやウェブページなどへの書き込みは、不特定多数に向けた発信になるのでダメです。

いつまでにギャラを支払わないといけないの?

納品日から起算して60日以内の、できる限り短い日に支払わないといけません。
そして、支払い期日は必ず守らなければなりません。

なお、業務の再委託の場合は例外があります

クライアントの仕事を引き受けて、自分を介してさらにフリーランスに業務を委託する場合も多いかと思います。クライアントからの支払いがないのに、フリーランスに報酬を出すのはキツいですよね。

その場合、例外が用意されています。
「再委託の場合における支払期日の例外」というもので、元委託支払期日から起算して30日以内のできるだけ短い期間内に設定することが認められています。

ただしその場合、

  • 再委託である旨

  • 元委託者(クライアント)の名称

  • 対価の支払期日

これらを明記しなければなりません。また、元委託者の支払いが遅れても、フリーランスへの支払いを遅らせることはできません。

禁止されている行為がある

フリーランスに仕事を依頼する場合、禁止されている7つの行為があります。

①受領拒否


フリーランスに責任がないのに、物品や成果物の受け取りを断ってはいけません。
例)お店がデザイナーにジュエリーの製作を依頼したのに、「売れ行きが悪いから要りません」と言う

②報酬の減額


フリーランスに責任がないのに、あらかじめ設定した報酬の額を後から減らすのはいけません。
例)出版社がライターに、合意がないのにも関わらず、銀行振込の手数料をギャラから差し引く(←あるあるですね!)

③返品


フリーランスに責任がないのに、物品や成果物を受領後にフリーランスに引き取らせてはいけません。
※不良品などの場合、受領後6か月に限って返品が認められています
例)イベント企画会社がフラワーデザイナーに、いったん受け取ったにも関わらず、売れ残ったブーケについて「いらなくなった」と引き取らせる

④買いたたき


通常支払われる対価に比べて、めちゃくちゃ低い報酬を設定してはいけません。
例)企業が映像クリエイターに大して、広告動画の制作を委託。見積書作成時よりも納期を大幅に短縮して発注したにも関わらず、見積書と同じ金額しか支払わなかった(←あるあるですね!!)

⑤購入・利用の制限


正当な理由がないのに、発注事業者が指定するサービスやモノをを強制的に購入させてはいけません。
例)制作会社が役者(フリーランス)に、演劇のチケットを目標枚数を定めて購入させる

⑥不当な経済上の利益の提供要請


発注事業者がフリーランスに、お金やサービス、その他の経済上のメリットを提供させてはいけません。
例)運送会社がドライバーに、荷物の運送のみをお願いしているにも関わらず、委託内容に含まれていない「荷物の積み下ろし」をタダでさせる
例2)音楽制作会社が作曲家に対し、採用した楽曲だけでなく、採用しなかった楽曲の知的財産権も無料で譲渡させた

⑦不当な給付内容の変更・やり直し


フリーランスに責任がないのに、費用を負担することなく、やり直しや修正、発注の取り消しを行ってはいけません。
例)番組制作会社が放送作家に台本の作成を委託したところ、もともとあったクオリティチェックを意図的に厳しくして、「お願いした内容と違いますよ」と言ってタダでやり直しさせる(←めちゃくちゃありそう!!)

フリーランスなら一度は経験するようなことですが、フリーランス法ではこれらの行為を発注事業者に禁止しています。

契約を途中で解約する場合、事前予告をしなければならない

6か月以上の期間でフリーランスに業務を委託して、「もうこの人に依頼するのを終わりにしよう」というとき、ありますよね。
契約をやめようとするときは、契約解除日(または契約満了日)から30日前までに「やめますのでよろしく」と予告しないといけません

またフリーランスが「理由を教えてください」と言う場合、ちゃんと理由を伝える必要があります

ただし、以下は例外です。

  • 災害などやむを得ない場合

  • 再委託の場合で、クライアントから契約を解除された場合

  • 業務委託が30日以内など短期間

  • フリーランスに責任がある場合

  • フリーランス側の事情で個別契約が締結されていない場合

何度かお願いしたフリーランスに「もうやめます」と言わなければならない場合

わたしもそうですが、フリーランスの中には「単発の仕事の依頼が断続的にあり、それが何年も続いている」ということが多いと思います。

フリーランス法は、契約期間の考え方を以下のようにしています。


フリーランスが断続的に業務を委託していて、それが6か月以上となる場合。「もうお願いしないや」と思ったら、30日前の予告が必要です

これを知らない編集者、めちゃめちゃ多そう……。よろしくお願いしますね。

ハラスメント対策が必要

フリーランスに業務委託をする場合、フリーランスがハラスメントで困ることのないよう、対策を講じなければなりません。

  • 「ハラスメントを行ってはいけませんよ」と方針を明確に言う、周知・啓発を行う

  • 苦情や相談に対して、相談窓口を設定する

  • ハラスメントがあった場合、迅速かつ正確に事態を把握し、速やかに対処し、加害者に適切な処置をする

注意!)ハラスメント対策は、従業員がいる法人に求められるものです。一人社長やフリーランスは対象外です

まだまだ課題山積のフリーランス法

わたしがフリーになったのは2012年。
無法地帯だった今までに比べて、ほんの少しだけれど、法整備が前進したと思います。

ただ、フリーランス法もまだ課題が多いですね。
ハラスメント対策なんかは、1人社長やフリーランスも対象とすべきだと思います。
私はかつて、1人社長にパワハラと報酬不払い(経済的嫌がらせ)を受け、少額訴訟を起こしたことがあります。
そのときは全部一人でやりましたが、法的手段を取るのがイヤだなと思う人も多いのでは。

フリーランス法は11月1日から施行されましたが、禁止行為をしている人や会社が現在進行形でいると思います。

特に出版業界には古い慣習が残っており、フリーランス法も下請法も知らない出版社や編集者がたくさんいます。

その会社や担当者にももちろん責任がありますが、「これって法律的に大丈夫なのか?」と考えることをほとんどしない、コンプラ意識の低い日本企業の商習慣そのものが本当におかしいと思います。

またフリーランス側も、「これは違法なのでやめてください」と言えるように、法律を学ぶ必要があるでしょう。

フリーランスの一人として、知識は武器であると、肝に銘じたいと思います。


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