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同姓同名体験
やらなければいけない事がある時に限って、やりたい事行きたい所がわんさか溢れ出てくる。
かと言って、それを実行するかというとそうではないところが、自分がフッ重である事を物語っている。
急に思い立って色々やるというのも自分の特徴らしい。そちらの方が多いから、長年フッ重の自分に気付かなかった。
でも最近は、思い立つが動かない。
次の休みに、また次の休みに…と引きこもりの休日。特に焦燥感などなく、むしろ最高と思う。
フッ重の沼にハマった。
しかし先日、その沼から這い上がれと言わんばかりに健康診断の日がきた。
「ラストマイル観に行こう!」と誘いがきたのなら、スキップして家を出るのに。
重い腰を上げて予約時間の8:30に受付を済ませた。
来たばかりなのに、「早く終わらないかなー」とつまらない顔で待っていると、扉の向こうから受付事務員とは異なるスタッフが、何やら神妙な面持ちで私の元にやってきた。
「マティ様、本日10:30から同姓同名のマティ様が来院されます。つきましては全ての検査でお名前と生年月日を確認させて頂きます」
との事だった。
検診を回るために持ち歩くファイルにも、名前の横には「同姓同名あり」みたいな付箋がデカデカと貼られている。
血圧や聴力、視力、腹囲測定などの小さな検査までにもひたすら「マティ何年生まれ」と呪文のように抑揚なく唱え続けた。
今では検査前に、名前生年月日を確認されるのは当たり前の事になったと思うが、同姓同名の事情を知っている本人としては少し違う気持ちなのであった。
もちろん同じ医療従事者として事情は重々わかるし、患者間違いなんてあってはいけないことも承知している。
しかしなんか…
「要注意人物」的な感覚というか。
でもまぁ2時間もあればもう一人のマティ様が来院される前に終わるだろうと、安易な気持ちもあった。
しかし私のそういう安易な気持ちは容易くいかないという事を忘れていた。
他の階で頭部MRIや胃カメラ、エコー検査などを済ませて受付の場所に戻ったのは10:50だった。
ということは、
この中にもう一人のマティ様がおられるのだ。
けれど私は全ての検査を終えたため、名前を呼ばれてシンクロする事は免れた。
あぁ、良かった。
スタッフの皆様、これで同姓同名対応は終了ですね、私も要注意人物から解放されて嬉しさでいっぱいです。と、来た時とは違う晴れやかな表情で座って会計を待った。
すると向こうの方で、
「マティ様〜」
と採血に呼ばれていたのを聞いてすぐ、
こちらから、
「マティ様〜」
と会計に呼ばれたのだった。
少し前に、「同姓同名」という小説を読んだ。
登場人物全員が、殺人犯と同姓同名というミステリ。
そこには犯人と同じ名前で苦悩する登場人物が、
同姓同名でクローンのように思えたとしても、生い立ちも、生年月日も、両親も、友達も、価値観も、考え方も、得意分野も、何もかも違う、別個の人間なのだ。
と書かれていた事が頭によぎった。
まさにその通り。
なのだが、そこまで深く考える事はない、人生初の同姓同名体験だった。
noteでの出会いに感謝します
☺︎マティ☺︎