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“日常に潜む異界”の窓が開く 『念力レストラン』 #613

「爆笑できる短歌」があると聞いて読んでみたのが、笹公人さんの『念力家族』でした。短歌をつくるようになったきっかけは、寺山修司だったそうなんですが、アクロバットな世界に大笑いしました。昨年8月に発売された『念力レストラン』は、念力シリーズの第7弾です。

なんで「第7弾」から?と思った方、するどいですね。探偵になれますよ。理由は、以前の巻が納戸の奥深くにあるからです……。

閑話休題。

短歌には「文語短歌」と「口語短歌」があるそうで、昨日ご紹介した池田理代子さんの短歌は文語短歌でした。

一方の笹公人さんの短歌は口語短歌ですが、もっとマジカルな感じです。

もし君がキエーーと奇声あげながらヤシの実割ったとしても 好きだよ。

その昔、「魔女になりたい」とマジメに書いていたわたしには、ビビットに響いた歌がこれ。

割り箸の袋に書いた復活の呪文がすべてだったあのころ

マジで、すべてだったんですよ……。わたしの場合はコクヨのノートだったけど。たぶんこの歌はファミコンのRPGゲームのことだと思われます。

すごく好き、というか、ニヤニヤしながらゾゾッとしちゃうのが「コックリさん」シリーズです。

コックリさんが帰ってくれない放課後の夕陽に咲いている少女たち

本の中で一番笑ったのはこちら。

「滑りきった!」「見事な滑り」テレビの音に耳をふさいだ受験生たち

耳をふさいでいた受験生たちは、どんな春を迎えたのかな。

本には、和田誠さん、大林宣彦監督との想い出を綴ったエッセイと、小説も収められています。

笹さんの短歌は「日常に潜む異界」というキーワードで語られることが多いのだそう。学校生活と軍隊、駅の風景に浮かぶ幽霊など、日々目にしている世界に、突如ポカリと穴が開いたようなんですよね。その穴が見えるのは、笹さんだけなのかもしれない。

短歌ってマジメな感じ……というイメージがありましたが、そんな固定観念をグルンとひっくり返してくれる一冊です。

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