宇宙の神秘を感じる微生物のチカラ 『発酵する日本』 #256
「発酵食品」とは、微生物などの作用で食材を発酵させた食品のことです。
納豆やキムチ、ヨーグルトが思い浮かびますが、味噌汁のお味噌だって発酵食品。ぬか漬けも鰹節も発酵食品です。考えてみると、日本の食卓には発酵食品が多いんだなーという気がしますね。
発酵させた食品は、
・栄養が体内に吸収されやすくなる
・発酵の過程でビタミンやアミノ酸といった栄養成分が生成されるので栄養価がアップする
・風味や旨みが増す
のだそう。
(「発酵美食」より)
「発酵食品」は毎日のように食べてるけど、「発酵」する時の様子は見たことない。
微生物さんは、どんな風にがんばっているのか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクさんの写真集『発酵する日本』に収められた「発酵」の現場は、宇宙の神秘という感じでした。
本では、47都道府県の発酵文化にまつわる様々なシーンが紹介されています。日本は南北に長いので、地域によって発酵に関わる営みも異なります。雪景色、おばあちゃんの手のひら、薄暗い蔵、シロナガスクジラ漁の様子などなど、ホントに多彩。
表紙になっている丸っこい塊は、「せんだんご」という長崎県対馬の保存食です。サツマイモを発酵させて、でんぷん質だけを取り出して作る伝統的な食べ物で、「千の手間がかかるから“せんだんご”」と呼ばれるほど、口にするまでたくさんの工程が必要だそうです。
原料となる孝行芋(コウコイモ)の芋掘り体験ツアーもあるようですよ。
日本全国の、未知なる食べ物の生まれる場所。遠景の写真もあれば、しょう油桶や明太子のアップもあります。微生物やもろみを間近で見ていると、プツプツプツという発酵の音が聞こえてきそう。
著者の小倉さんがキュレーションされたイベントの動画がありました。ぜひ、音を聞いてみてください。微生物が呼吸しているみたいです。
『発酵する日本』は、青山ブックセンターの出版プロジェクト第1弾とのこと。小倉ヒラクさん、印刷会社の藤原印刷、そして青山ブックセンターの共同制作です。
誰もが無理や損をすることなく、本屋としても通常の2倍以上の粗利を得ることができます。いい棚を作ることは大前提として、出版を通して、これからの本屋の形の一つとして風穴を開けていきたいと考えています。
わたしは本を紙で読む派だし、待ち合わせ場所は必ず本屋さんにするほど本が好きなのですが、「町の本屋さん」がいかに厳しい状況かは見聞きしています。
その最前線にいる方々が、嘆いているだけでなく、自分たちで行動を起こしたのですから、応援しないわけにはいかない。
印刷会社というと、一般人にはあまりなじみがないですが、藤原印刷は、以前、イベントで本を拝見したことがありました。ページがグラデーションになっていたり、穴が開いていたり。
「ちょっ、ムリ!ww」
という難しい注文の本を手がけている会社です。そんなおもしろい印刷会社の作った本が、普通なわけがない。
背の部分にカバーがないんです。この綴じ方なので180度ペタンと開いて、写真が見やすい!
上の写真は、フグの卵巣を漬け込んでいる、ぬか漬けタンクの表面に生える微生物です。そう。猛毒があるフグの卵巣も、発酵させると安全に食べられるようになる。微生物の力、恐るべし。
食べることは学ぶこと。つくることは思い出すこと。
発酵の旅をしているような気分を味わいつつ、先人の知恵とその恩恵に、想いをはせてしまう。
心から感謝したい。
わたしはこんな、「一冊入魂」の本が読みたかったのです。
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