「勝ち取る」の実現(李登輝)+私の台湾紀
恥ずかしながらまったく知りませんでした。台湾の戦後史がここに詰まっています。
私の台湾
私は仕事で一度台北に行ったことがあります。2006年、今から16年前のことです。
総勢5人での業務でしたが、1日だけ私が先に東京を出発し、ひとりだけで台北をウロウロしました。治安がいいと聞いていたので、空港からバスに乗り、駅からは地下鉄で移動しました。
当時は「原チャリ天国」みたいな状態で、道にはバイクがあふれかえっていました。バイクの店(修理屋)もたくさんありました。
たぶんそれが原因だと思います。1日で声が枯れてしまいました。あとから来た4人は、いきなり声がかすれている私に接し、「なんで???」と思ったに違いないです。
でもそれ以外はなんの問題もなく、買い物も簡単に出来るし食べものも美味くて、和民まである。冬でも暖かい。
最終日に乗ったタクシーではテレサテンさんの歌が流れていまして、
おおーテレサテン!
と言ったのですが運転手さんはキョトンとしていました。台湾ではテレサテンとは言わないのかも…
苦難の長き道のり
私は半分観光のような感覚でしたが、この地に住む方にとっての歴史は、それはそれは複雑なものです。日本の占領が終わったときからの戦後史を実に詳しく綴ったのがこの書です。
私のみならず日本人の大部分が、気がついたときには経済的に豊かな楽しい台湾か隣接していたというのが実状だろう
と書かれているが、全くそのとおりである。
李登輝氏は戦後台湾創設の先導者と言っても過言ではない方。終戦まで日本で生活もし、ご夫婦とも日本語を普通に扱い、夫婦間では日本語で会話をするという事にものすごい親近感を抱きます。
李登輝氏はもともと農学者だったこともこの本で初めて知りました。学者として生きるつもりでも、疑いの目をかけられる、周囲の厳しい束縛があった時代を生き抜き、時代の流れとともに「台湾を変える」側に立った、その歴史的経緯が、たくさんの方の証言も元にして書かれています。それを端的にあらわしたのが、この一文だと思います。
彼はいわば運命的に二重人格者の立場を余儀なくされた人物だ
今の台湾は住みよく自由ですが、それを勝ち取るためには長い苦難の道があったのですね。この方の芯の強さに、心から敬意。
そしてそれを支えた奥様の力にも感嘆しました。