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三島由紀夫のやさしさを見る

映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」を見ました。

三島由紀夫の作品はほとんど読んだことはないのですが、その「人となり」はメディアでもたくさん出ていて、作家以外での多才さが目立っているようなイメージです。

今年は生誕百年だそうです。そのタイミングだったからなのか、アマゾンプライムを開いたら氏についての映画が出てきたのでクリックしました。

時は1969年、東大安田講堂事件等で学生運動がもっとも沸騰していた時期といえます。その年の5月13日、東大全共闘と、三島由紀夫が東大構内で対決。両者が繰り広げた「伝説的討論」を中心に、出席していた当事者等の証言を再度取材し、まとめられた作品です。

東大全共闘と三島とは思想の上では「真逆」で、ほぼ単身で東大全共闘の千人の群衆を前に語るだけでも恐怖なはずですが、三島は言葉で思いを伝え、それに対して東大全共闘の学生たちも言葉で質問を投げかけます。

私ではとても理解しにくい箇所もありますが、解説(とくに作家の平野啓一郎氏の)が的確にそれを補完しています。

アマゾンでたくさんの方がレビューしているので詳しい事は述べませんが、まず感じたことは、三島の人間味がすごく出ているなぁという事。

持論を語る時も学生に挑発されているときも決して感情的にならず爆笑も呼び込むユーモアを持っているのはすごいと感じます。今の質の低い討論番組とはまったく違います。そのなかで、芥正彦という人が「日本人である限界を超えることは出来なくなってしまう」と言い、それに対して三島は「ああ、出来なくていいんだよ。私は日本人であって日本人として生まれ日本人として死んで、それでいいんだ。あなたから見れば(私は)かわいそうだと思うだろうが、僕は日本人以外のものでありたいと思わない」と答えます。対して芥は自身について「(国籍を)脱却するというよりも最初から国籍はない」と言い、三島は「自由人として僕は尊敬する。僕は日本人であることを自分の宿命であると信じている」と言い、芥は「退屈だから帰る」と言って退場します。

芥正彦は、「全共闘きっての論客」と言われていたそうですが、正直、「こんな人が?」と感じます。
その後の(当時の証言者として語っている)映像を見ても、芥は「自分の国」で生きている雰囲気があります。
若さゆえの視点なのかと思っていましたが近影を見ても「自分が国王」的感覚を持ち続けているようで…
そういう人って世の中に少なからずいるのでしょうが、周りの人は大変だろうなぁ…と思います。

三島由紀夫が語ったこの国籍観?(日本人観?)は、すごく素直な感情だなぁと思いました。カリスマ的存在である三島が、置かれた状況を是とする素直さを知ることができた事が、この映画を見ての新たな学びです。


三島は対峙する若者に敬意を持って接している様子がうかがえ、学生に質問もして彼らの声を聞こうとしています。世に対するアプローチが違うので両者の「共闘」はないとしても、両者とも権力者に対する思いは共通しているように感じました。


先日、防衛省へ行ってきました。そんなタイミングでこのドキュメンタリー映画を見たことにも、不思議な縁を感じます。
そして、もうひとつ、三島由紀夫に関する学びを得ました。それはこちら↓


#映画感想文

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東の京の田舎市民
至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。

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