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映画へGO!「生きる/LIVING」 ★★★★☆
「黒澤明監督の普及の名作のリメイク・・・」と言われても食指は動かなかったかもしれないのですが、「カズオイシグロの脚本でリメイク」であることが鑑賞の強い動機となりました。
カズオイシグロさんの”わたしを離さないで”は、自分の好きな小説ベスト10に入ります。それは、イギリスの田園エリアの全寮制の学校を舞台にしているのですが、読み進めて行くうちに、非常に近未来で恐ろしい問題にシンクロしていく衝撃的かつ極めて切ない読後感の名作です。映画化・ドラマ化もされてますが、小説でじっくり味わうのがベストでしょう。
で、「生きる/LIVING」の主演のビル・ナイは、役柄としてはさえないロンドンの市役所の課長という設定。余命数か月であることを宣告されることにより、人生の意味を発見していくプロセスを描いているのですが、その3ピーススーツとハットのスタイルがあまりにビシッと決まっているので、さえないどころかむしろ憧れの眼差しを持ってスクリーンに引き込まれました。「かっこえぇ・・・」と(笑)。
演出のセンスも良いなと感じました。例えば元部下の女性との淡い恋模様、初めて酔っぱらって酒場で唄うところなど、印象に残るシーンを、絶妙にダサかっこよく描いてます。
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そして、自分の中でのクライマックスであり、ベストシーンは、主人公が仕事に復帰して、決意を持って部下たちを引き連れて現場に向かうところ。かなり手振れのあるライブな撮り方・光の入り方により、観ているこちらも武者震いして、「よっしゃー、頑張れ!」と心の中でエールを贈っていたのでした。。
人生は短いし、いつ終わるかもわからない。情熱を持って今を生きようじゃないか!という熱いメッセージを、抑制の効いた映像とスマートな脚本で表現した”静かなる名作”ですね。
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個人的評価:★★★★☆
かっこよく装い、かっこよく生きたいと思わせる大人向けビターな映画。