映画へGO!「ゴンドラ」 ★★★★☆
(※多少のネタバレあります)
奇妙といえばそうなんですが、なんともかわいく、ほっこり笑顔で映画館を後にすることができる、不思議な魅力のある映画でした。
ちょっとした社会風刺的な要素はあるものの、基本的には、人と人との交流から生まれる、人間の普遍的でプリミティブな幸せの感情を、まるで映像絵本のように、適度なリズムと映像構成のパターンで、さまざま丁寧に紡いでくれています。
そこには映画の醍醐味がありました。台詞がなくても全く退屈しない!
ストーリーとしては、ジョージアの山間部で運行されている、ロープウェイのゴンドラの車掌さん女性二人が主人公なのですが、上りのゴンドラと下りのゴンドラが運行中に中空で一度すれ違う、その瞬間のやり取りの連鎖で物語は進んでいきます。
この基本的アイデアの着想からして「おもろい!」という予感がプンプンしてしまうでしょ?(笑)
最初はちょっと照れながら合図を交わすくらいで始まったやり取りですが、お互いの心が通うようになると、やがてそのネタ・コンテンツが少しづつ大喜利的にエスカレートしていき、最後の方は明らかに「それ、やり過ぎやろ!」と突っ込み入れたくなるようなそのユーモアのセンスと二人の芸達者ぶりに、思わず吹き出してしまうことが何度か。ズバリ、楽しい!
さらにその合間には、村の子どもたちの胸キュンな恋模様とか、のんびりペースのチェスの対戦とか、お互いへの贈り物のような音楽の演奏とか、眼下にいる村人たちとのコミュニティ感とか・・、さりげなき人間賛歌の要素の積み重ねが、映画としての情感を段々に盛り立ててくれるのでした。
エンディングに向けては、車いすの老人を吊り下げての運行(おいおい!)、主人公の女性二人の恋愛感情のもつれ、村をあげての大団円的パーティーシーン、横暴な上役の末路など、一気に畳みかけてくる構成なのですが、最後の最後で単なるファンタジックなおとぎ話に陥ることを拒否して、ヒューマンドラマとして踏みとどまっているのが、個人的にはとてもしっくりきました。
まるで「シザーハンズ」のような・・・?
おとぎ話と現実世界のゆらぎを行ったり来たりしながら、でもいま自分たちの生きている世界も捨てたもんじゃないと感じ取れるような、素敵な後味だったのでした。
個人的評価:★★★★☆
二人の主演女優がとてもチャーミングでした。そして、大き過ぎることが起きないことがこの映画の肌感であり、魅力です。