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映画へGO!「I Like Movies / アイ・ライク・ムービーズ」 ★★★☆☆

(※多少のネタバレあります)
タイトルがあまりにストレートな言葉遣いなので、”映画愛”の押し付けみたいな作品だったらどうしよう?ましてやその方向性が自分の感覚とあまりにかけ離れていたら・・・と恐る恐る観に行きましたが、その心配は杞憂に終わりました。

もちろん映画に対する愛情(時にオタッキーでもある)は、全編に溢れているのですが、それはインフラのような役割であって、描かれていることはむしろ”人間の成長”です。

そして、その成長というのは、主人公である青年ローレンスはもちろんのこと、彼に寄り添い、時に導いてくれるアルバイト先の上司の女性、アラナにも当てはまるのでした。なかなか上手くまとめています。

鑑賞後に知ったのですが、本作品は女性監督のチャンドラー・レバック自身が高校時代にアルバイトをしていた、レンタルDVDショップでの体験をローレンスのものとして置き換えた物語でもあり、その時に実際にいた上司に今の自分を一部重ね合わせて描くことで、過去の自分と現在の自分とが対話をするような感覚もあったとのこと。

ですので、とてもシンプルな映画のように見えて、実は主人公の視点と監督自身の視点が交錯する、自然な二重構造の物語であることが、作品の味わいの深みを決め、惹き付けられる大きな要因のような気がしました。

映画体験として振り返ると、主人公のローレンスは、正真正銘に映画にしか興味がない高校生で、あまりにその偏った考え方や言動には、正直閉口させられ、ローレンスに共感の糸口を探しながら観ているのですが、なかなかそういう気分にもなれず、どうなっちゃうんだろうとヤキモキしながら進んでいくのですが・・・いよいよエンディングに向かうエピソードを通じて、自らのトラウマや葛藤を乗り越える成長の兆しが生まれ、最後にはほっこりとした甘酸っぱい気分に着地できます。

さらに、脇役が良き彩りを与えてくれる印象的なシーンも多々あります。
女性上司アラナが、自らのトラウマを告白するシーンは、舞台劇でのモノローグを彷彿させるアクティングのムードを演出としてうまく使っていたり、
ローレンスの母親の息子に対する無償の愛。バリカンで思い切り良くローレンスの髪の毛を刈り込むシーンも素敵でした。
あと、親友だったマットとの距離感が近くなったり、離れていったりする思春期特有の気持ちの機微だったりもうまく表現されていました。
これらの脇役の熱演もこの映画の魅力の柱です。丁寧に作られていました。

最後に。ローレンスの部屋に大きく貼られていた「マグノリアの花たち/スティール・マグノリア」のポスターが効いてましたね。
そこまで描かれてきたいろんなものが象徴されていると受け取りました。
ローレンスの映画愛。人の考え方を受け入れる姿勢。アラナへのほのかな愛情と敬意。自らの成長の証。などなど。

個人的評価:★★★☆☆
鑑賞前の予感とはずいぶん違う印象の後味ではありましたが、なかなかの佳作良品でした。








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