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映画へGO!「ボレロ 永遠の旋律」 ★★★★☆

(※多少のネタバレあります)
フランスらしい、男女の濃密な距離感と絶妙な対話の官能性を、映画全体にうまく纏わせながら、とはいえ一般的なラブロマンスには収斂させずに、「愛の対象が女性ではなく、音楽であった」ことを貫ぬく、ラヴェルの苦悩に満ちた生涯を描いたとてもユニークな作品でした。

というのも、男女の愛の物語と音楽が生まれる物語が、時に絡み合い、時に離れていきながら進行していくのですが、最後の最後にスポットライトを浴びるのは、その物語の真ん中にいる主人公ラヴェルではなく、圧倒的で唯一無二の存在感を示す名曲「ボレロ」そのものに感じられ、とてもアイロニックなエンディングだと受け止めました。

そして、そのラヴェル自身をも飲み込んでしまう「ボレロ」の存在感こそ、映画としてのコアに据えられたメッセージであるような気がします。
映画のリズムも、まるで「ボレロ」の楽曲が乗り移ったかのように、演出上の無闇な緩急が付けられることがなく、ずっと一定のテンポを保ったまま描かれている気がしたのは、監督の意図なのかどうなのか?確認したくなりました。

もちろん、それは映画として退屈だったという意味では決してありません。例えばラヴェルとその生涯のミューズであったミシアとのギリギリの感情の交歓によって、スクリーンは幾度も引き締められますし、その他ちょっとしたニューヨークのストリートの風景とか、頻繁に登場するラヴェルが神経質に煙草をくゆらすシーンや、パトロンであるイダの癖の強い立ち居振る舞い、娼館で心を許すラヴェルの独特の過ごし方・・などの象徴的なシーンの連鎖が相まって、むしろ全体のテンションや官能性が高い状態でキープされていて、とても入り込めました。

最後に。ラヴェルを演じた俳優、ラファエル・ペルソナはお見事でしたね。大変綺麗な顔立ちで正面だけでなく横顔も良い。心を病んでしまうくらいストイックな主人公を、やり過ぎな演技ではなく、自然に演じておられました。

個人的評価:★★★★☆
フランスの官能性が伝わる映画は、どこか後を引くところがありますね。
しかもキャピキャピした若い女の子ではなく、大人の女性がセンターにいると、格調も高く感じます。




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