映画へGO!「ネネ -エトワールに憧れて-」★★★★☆
(※多少のネタバレあります)
主人公は12歳の黒人少女ネネ。パリの団地で育つ労働者階級にいながら、何よりダンスが好きで、パリ・オペラ座のエトワールになることが夢。
オペラ座のバレエ学校に見事合格し、娘想いのお父さんとパリのストリートで踊りながら喜ぶネネだが、誰もが予感する通り、白人至上主義がいまだに残る学校での、先生や同級生にまつわる差別の試練が始まることになる。。
ざっくりとしたあらすじは以上の通りです。
ネネ役の女の子がとてもチャーミングで、スクリーンで生き生きと躍動しているのですが、だからと言って、その子役頼みにはなっておらず、ネネの成長の物語であると同時に、「旧態然としたバレエ学校は変わっていけるのか?」という組織の成長視点にもフォーカスがピシッと当たっていることで、映画としてのテーマの奥行きや、登場人物の造型の多彩さによる展開の華が生まれたのだと思いました。
ネネの他に印象に残るもう一人のキーパーソンとして、バレエ学校の校長マリアンヌがいます。
全く隙の無いファッションとメイクで登場しながらも、実は大きな秘密を抱えている彼女の葛藤を、コンタクトレンズのトラブルによる左右の眼の色のズレや、大怪我をする前後での圧倒的な印象の違いなどにより、ビジュアルでもセンス良く演出していました。
ネネとマリアンヌの関係でいうと、若干急展開過ぎる戸惑いは否めなかったのですが、こういう風になって欲しいという着地に最後は落ち着いていて、違和感もなく十分に楽しめたと感じます。
欲を言えば、バレエの世界を描いた映画なので、ネネをはじめ、学校の生徒たちによる、うっとりするような切れ味ある踊りのシーンも期待してましたが、そういう場面はあまり描かれない一方で、バレエ学校でのストイックなレッスンの緊張感は伝わり、芸術の世界ならではの競争の厳しさは体感できました。それは興味深いことです。
いろいろ書きましたが、全体を通していうと、主人公ネネの気持ちのアップ・ダウンに寄り添うようにわかりやすく物語を楽しむことができ、ちょっとしたさりげないいくつかのシーンでも涙腺が緩むような、丁寧に作られた良作だったと思います。
個人的評価:★★★★☆
とはいえ、ラストシーンはちょっと肩透かしでした。笑
成長したネネの完璧な踊りでキメて欲しかったですが、監督としては、”まだまだこれから成功をつかんでいく途中のネネ”として終わらせたかったのでしょうか?