映画へGO!「ある一生」 ★★★★★
(※多少のネタバレあります)
非常に胸を掻きむしられる良き映画でした。
単館系の小さなシアターで鑑賞しましたが、あちこちで号泣している人が多数。私もそのうちの一人となりました。
壮大な地球の歴史、人類の歴史からすれば、本当に取るに足らないある一人の男の一生を描いた物語。
ただしそこには、幸せに生きることの普遍的な意味がはっきりと示されていたように感じられました。
孤児として恵まれない境遇で生まれ育ち、厳しいアルプスの自然の中でただひたすらに一生懸命生きた主人公。
彼には人生で唯一愛した女性がいるのですが、悲しいかな自然の脅威にさらされ、若くして命を落としてしまいます。
主人公はそれでも、その妻とのピュアな思い出と共に生き、彼女に宛てた手紙を一生に渡って書き続けます。
そして最期は、幼いころ自分を唯一愛してくれたおばあさんと同じ格好で倒れ、そのまま天に召されるのでした。
主人公は「自分の一生は幸せだった」と思って死んでいったのだと確かに思える、迷いなき描き方としての力強さがそこにはありました。
物語の最後の方で、自らの過ごしたアルプスの自然をバスでゆったりと辿りながら、老年となった主人公が、自分の人生を走馬灯のように振り返るシーンで、私は涙腺が崩壊しました。
今の便利な時代と比べると、決して楽しく豊かな生活を送れたわけではありません。それでもシンプルに自分の一生の価値を振り返られる感覚。
映画館で心を震わされずにはいられなかった観客が多数いたのは、みなその価値にはっきりと共感できたからだと思うのです。
個人的評価:★★★★★
正直に言うと、特に注目していた映画ではなく、たまたまタイミング的に他に観たい映画がなかったので、消去法的に選んだ作品でした。
が、これは本当に観ておいて良かったと思えました。こういう本当にただのある男の一生を、映画として残してくれた監督に感謝です。