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映画へGO!「パリ、テキサス」(4Kレストア版) ★★★★☆

(※多少のネタバレあります)
40年近く前に鑑賞したはずの「パリ、テキサス」。

正直内容はあまり覚えていなかったのですが、観終わったあとの味わいのようなものがやけに自分の心に刻まれていて、さらに言うと、同じくヴィム・ヴェンダース監督のとても感銘を受けた「パーフェクト・デイズ」のエンディングが、この「パリ、テキサス」のラストと重なっている感覚があったので、それを改めて確認したい気持ちにもなり、正月早々に映画館に足を運びました。限定上映のようですね。

「アメリカのテキサス州に、パリという場所がある」という、何てこと無いのだが、かすかに人の心を反応させる事実から名作が生まれているというのも、監督のインスピレーションとして流石だなと思っています。

で、観直してみた感想としては、ロードムービーかくあるべしという、やはり素敵な映画体験でした。
自然も街も乾いた風景の中で、人と人の様々な出会いと感情が交錯し、成長とまではいかないかもしれないが、主人公の変化や、一歩でも前に踏み出していく感じを丁寧に描いていく。
チャプターが変わるたびに、ちょっと引いたアングルで抒情を掻き立てる、俯瞰的な旅のシーンが挿入され、都度息をのむ。
物理的な移動としての旅ではなく、主人公のココロの旅を捉えていることに自然と気づかされるのでした。

登場人物の少ない映画です。
が、主人公だけでなく、元妻役のナスターシャ・キンスキー、子役、弟夫婦役とすべてのキャラクター造型が明快で、隅々までいろんなことが回収されていくわけではないものの、各シーンの瞬間瞬間のリアリティが積み重なっていき、最終的に映画の奥行きが醸成されていくのでした。
親子で道路を挟みながら、学校から家に歩いて帰る道すがらの、心を通わせていく描き方など、ほんとに素敵です。

エンディングで言うと、同じような人生の苦みを噛みしめている、「パーフェクト・デイズ」では変わらないルーチンで日々を生きる主人公、「パリ、テキサス」では同じ場所にとどまれず心の傷が癒えない主人公、それぞれが涙とうっすらとした微笑みを見せることで幕を閉じます。

決して劇的ではないのですが、どちらも人間や人生に対する、監督の深いところでの肯定感を味わうことができるのでした。

思いのほか、新鮮な気持ちで鑑賞することができて良かったです。

個人的評価:★★★★☆
ハーフミラーを通したやり取りなど、いま観ても古さを感じさせない、エモーショナルな演出でした。






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