映画へGO!「THE BIKERIDERS」 ★★★★☆
(※多少のネタバレあります)
1冊の写真集とその付録にあった被写体たちのインタビュー。
それをインスピレーションに、世界観とストーリーを構築した映画・・と聞くと、それだけでも興味を掻き立てられませんか?
ざっくりストーリーは以下の通りです。
1965年の米国・シカゴを舞台に、
バイクを愛するアウトローが集まるモーターサイクルクラブの変容を描く。
不良とは無縁だったキャシーは、無口で喧嘩っ早いバイク乗りのベニーと出会い、5週間で結婚を決める。
地元の不良たちを仕切るジョニーの右腕という一面を持つベニーは、群れを嫌っていたが、モーターサイクルクラブの噂は広まっていき……
(※「映画ナタリー」より要約)
で、基本的には、
やんちゃなバイク乗り集団による、バイオレンスもいっぱいだがバイク愛・仲間愛には溢れた、男臭い馬鹿チンな出来事・やり取りを描いているだけ、
と言えばそうなのですが、
写真集に着想を得ているだけあって、画面の構図や醸し出す空気がとにかくカッコ良く決まっています。
そして、いまのホワイト社会のレギュレーションから見ればアウトなのだろうけど、どこか人の気持ちを惹きつけ、ざわつかせてしまう、雰囲気いっぱいの映画なのです。
そしてもう一つ、この映画が魅力的に仕上がっているユニークな点があるのですが、物語が主人公ベニーの奥さん・キャシーの視点で、インタビューに答える形式で展開していることが挙げられます。
それによって、さまざまなエピソードが散漫にならなくなるだけではなく、映画全体が単なるホモソーシャルなチンピラドラマで終わらずに、
夫婦・家族・仲間ほかによる、人間関係の機微や心のひだが色々なカタチで浮かび上がって来るのと、キャシー役のジョディ・カマーの演技がチャーミングがゆえに、荒ぶる男どもの儚さとそれを見守る女性の芯の強さの対比もうまく表現されていると感じました。
印象的なシーンは多々あります。
例えば、痛めつけられたベニーの仇を打つ流れで、クラブのリーダー・ジョニーが街のバーに火を放ち、燃え上がる炎をみんなで見つめる場面や、
仲間の葬式に招かれざる客として、クラブメンバーみんなで駆け付け整列し、母親から唾を吐きかけられるシーンとか、
変な美談や予定調和には着地させずに、アウトローの感受性やそこに関わる環境をありのままに描いているように感じられるところがリアリティがあって好きでした。
さらにエンディングも素敵です。
紆余曲折あって、最終的にベニーはクラブを抜け、キャシーとよりを戻すのですが、
ラストシーンは、遠くから聴こえるバイクが走る音と、それを聞いたベニーとキャシーそれぞれのかすかな微笑み。
映画全体のビターなトーンをキープしながら、大袈裟な演出なく、うっすらとしたでも確かな余韻を残してエンドロールに向かいます。
そこには、実際の写真集にあったであろう、象徴的なモノクロカットが映し出されるのでした。
結果、「いい映画観たな・・」もしくは「映画っていいな・・」という気持ちが綯い交ぜになって、映画館を後にすることができたのです。
個人的評価:★★★★☆