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【わたしのこと】花屋のおばあちゃんの押し売りと笑顔
不安障害になって、仕事をやめてしばらく、休眠期間をおいていた。
働かず、したいときにしたいことをする。
波はありながらも復調してきたタイミングに、始めたことがある。
お金がなくても花を買うこと。
毎週たった一輪。誰でも知っているようなバラやカラーなんかを部屋に飾る。
体調がどん底を脱した後に、「なにか美しいものを世話する」という自分の心の余裕を、目に見える形で保っておきたかったからだ。
今も、連勤後の疲れた帰り道に、花を買うことがある。
アーケード街の昔ながらの花屋。
扱っているのは菊などの仏花が主で、たとえばミモザなんかは店頭にない。
鰻の寝床みたいな店内に、ところ狭しと花がさしてある。
すみません、と呼び掛けると、祖母に似ている店主のおばあちゃんが愛想よく出ている。
「狭くてごめんね 」が毎回の挨拶。
以前わたしがつまずいたからだろう。
おばあちゃんは
「明日は休み?」と聞く。翌日は土曜日だ。
「いや、仕事です。」と答える。
おばあちゃんは笑顔で、
「わたしも仕事だよー、がんばろうねぇ」という。
なんだかこの人は、お地蔵さまみたい。
だいたい花は一輪100円。こちらが何にも話さないと「これを買いなよ、いいよー。安いんだよ」と選択肢を与えない。
だいたい小振りで、庭に咲くような花だ。おすすめポイントは持ちの良さ。
それでもわたしは買う。
おばあちゃんの何気ない一言は、わたしの心に栄養をくれる。
お店の主人と客、という関係でも、会話は5分間でも、人の心を救う仕事はできる。
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