「身分帳」本を読んだ感想
「身分帳」 佐木 隆三(著者) ☆4.5
殺人罪で13年旭川刑務所に服役した男が出所後、社会に馴染むために苦闘する姿を実話をもとに描いたヒューマンドラマ。
ちなみにタイトルの「身分帳」とは、刑務所に収容されている囚人一人一人に作られた台帳のようなものの名称で、それには囚人の経歴から所内での生活態度などあらゆる情報が記載されている(見れるのは刑務官のみで囚人本人ですら見ることはできない)。
主人公山川は何度も服役していて、世間から見たらクズなのかもしれないが、彼も一人の人間である。ただ全ての物事に全力であたりすぎて不器用なだけなのだ。そんな彼が普通の生活に馴染もうと奮闘する姿を見ていると応援したくなるし、だんだん彼のことが好きになってくる。
昭和が舞台なのでだいぶ情勢はかわっているとは思うが、それでも現代にも山川のような人間はたくさんいるはずだし、勾留されて実際にかれのような人間を目にした。
彼らをただ犯罪者、危険人物として拒絶するのではなく、彼らを受け入れ、支援する体制を強化しないと、再犯者は減らないし、彼らを救うことはできないのではないだろうか。