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割れても末に… 〜鈴本余一会 覚書〜

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳院

気づけばあっという間に11月が来ておりました。
頭に、気持ちに、手が追いつかず、やりたい事に手が届かず、慌しく過ぎ去った10月。
少しだけ、その10月のことを。私の恋煩いの話を…寄席の覚書を。

じわじわとコロナ数値が上がった10月。その末日、ハロウィンの夜に、世のハロウィン・イベント中止、オンライン開催の流れに逆らって(?)久々にリアルなイベントに繰り出しました。
大きな赤い満月を横目に向かった先は鈴本演芸場。古今亭菊之丞師の余一会です。

前回=5月の余一会は、コロナ余波で無観客収録&web配信に。
それはそれで時代の記録として貴重なエピソードで、心に響く体験だったのですが、やはり淋しい気持ちがありました。
リモート落語の新しい可能性に大いに刺激を受けつつも、どうにもアテクシ、「落語は生!」体質なもので。。。
体調、仕事、家庭の事情で寄席参戦を見送る羽目に陥るたびに、
「マズい、禁断症状が〜っ」と悶えておりました。

今回、会場はそんな"ご同病"(勝手に認定)の方々でいっぱい。
コロナ対策として最前列の客席を使用禁止にし、入場時検温消毒マスク着用、飲食はソフトドリンクのみ。物物しいけれど、そのおかげで見慣れたはずの「ほぼ満席」の寄席を、久々に、本当に久々に、見ることができました。

鈴本余一会 古今亭菊之丞独演会 覚書
        (10月31日18時30分開演)
「狸 の 札」 古今亭まめ菊
「寄 合 酒」 三遊亭わん丈
「崇 徳 院」 古今亭菊之丞
    <お仲入>
 ギター漫談  ペペ櫻井
「柳田格之進」 古今亭菊之丞

天真爛漫さが気持ちよいまめ菊さんで幕開け。
お次は久々にお目にかかるわん丈さん、これが嬉しかった。
彼の「寄合酒」はテッパン根多…わかっていても毎度笑い転げてしまいます。今回も、コロナが逃げていきそうな勢いで笑って笑って、テンションUP。
笑っていれば、人生なんとかなる気がしてきます。
ちなみにペペ先生のギターを聞くと、人生なんでもいいような気がしてきます(笑)。

お目当て・菊之丞師の根多は、鈴本さんのお膝元を舞台にした二席。
個人的に思い入れのある根多、「崇徳院」は、上野の清水さまから始まる恋煩い騒動。
大根多「柳田格之進」は、湯島切通しの再会の場がクライマックス。
どちらも師匠の声で描き出される情景が鮮やか。噺とともに、ご当地感も満喫いたしました。

丞師の柳田は初聴き。噺自体がご無沙汰で、最後に聴いたのはさん喬師だったか。記憶にあるさん喬師の柳田より大分若い御仁ながら、所作と口調にこちらの背筋が伸びるような気品があって、印象的でした。

終演後、追い出し太鼓を止めて、重ねて来場御礼の挨拶をされた師匠。
どんなことがあっても、寄席の、演芸の火を消さない、という師匠の強い想いが伝わってきて、思わずほろり。。。
胸の中で、崇徳院さまの歌を繰り返し呟きながら、帰途に着きました。

この冬も、コロナとのせめぎ合いは続くと思われ。感染防止対策、新しい生活様式と、その他諸々の事情で、まだまだ落語との逢瀬には困難がともなう気配ですが…。
それでも、なんとか生活の中で寄席や落語との接点を増やして行きたい。
割れても末に、な気持ちは続くのです。

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PD * みふみ
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