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1970年大阪万博の遺産: 万博記念公園の散策と国立民族学博物館で出会う世界の文化 (元教授、定年退職291日目)

万博記念公園とエキスポシティを巡る

前回、2025 年大阪・関西万博と 55 年前に開催された 1970 年大阪万博について少しお話ししました。私の自宅は 1970 年万博の会場に近く、時折、万博記念公園やエキスポシティを訪れます。先日、「ニフレル」にテッポウウオを見に行きましたが (note, 12/27)、その「ニフレル」もエキスポシティ内にあります。(下写真もどうぞ)

1970 年大阪万博(注1)
テッポウウオを見に行った「ニフレル」


エキスポシティの前身であるエキスポランドには、大学入学後の5月に「合ハイ」で訪れました。「合ハイ」とは、当時流行した合同ハイキングの略で、いわゆる「合コン」のハイキング版で、健全な交流(?)を目的としていました。男女十数人で行ったことくらいしか覚えていませんが、高校時代に女子と話せなかった友人を応援した記憶があります。淡路島出身の女性に、彼がようやく発した言葉が「淡路島には山がありますか?」だったため、周囲は大爆笑しました。それだけは鮮明に覚えています。

万博記念公園は、万博が開催された広大な跡地に多くの植物が植えられ、豊かな自然公園となっています。春には花見の名所にもなり、コロナ禍以前は毎年のように訪れていました。大きな広場では、コンサートやイベント、陶器市なども開催されています。研究室のバーベキューでも何度か利用させていただきました。また、万博記念公園の奥には日本庭園があり、以前に note(6/12) でも紹介した蓮の茎を使った「象鼻杯」などの催しが行われています。


国立民族学博物館で出会う異文化への驚き

万博記念公園の内外には文化施設がいくつかあり、「大阪日本民芸館」や「国立民族学博物館」が代表的です。国立民族学博物館は「民博(みんぱく)」の愛称で親しまれ、民族学・文化人類学を中心に研究・展示を行っています。34 万点を超える所蔵品は世界最大級で、建物の設計は黒川紀章さん、初代館長は『知的生産の技術』などで知られる文化人類学者の梅棹忠夫さんでした。


私も何度か訪れ、アフリカや南アメリカ、アジアなどの文化に触れ、大いに刺激を受けました。民博の最大の特徴は、その圧倒的な規模と展示内容の豊富さです(下写真)。世界を9つの地域に分け、各地域の特徴に沿ったテーマで文化(衣食住、宗教、芸術など)を実物資料や映像、音声を活用して紹介しています。

圧倒的な規模と展示内容の豊富さ(注1)


今回この博物館を取り上げたのは、先日 NHK の番組「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪」で特集されていたのを見たことがきっかけです(下写真)。特に印象的だった展示を二つ紹介します。

「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪」(注1)


・民族音楽の力:特にアフリカや東南アジアでは、打楽器が特別な力を持つとされ、時には神と人々を結びつける(精霊との交流)手段として用いられます。番組では東南アジアの楽器ゴング(どら)を出演者らが演奏していましたが、その独特の音色は心地良いものでした(下写真)。

東南アジアの楽器ゴングを出演者らが演奏(注1)


・銃で作られた自転車:長い内戦が続いたアフリカ南部のモザンビークで作られた自転車のモニュメントが紹介されました。驚くべきことに、全てが「銃」でできていました(下写真)。この地域の内戦は終結しましたが、その際に使用された大量の武器を新たな表現へと昇華させた「民族の歴史と平和への願いを刻んだ」展示物です。

モザンビークで、銃で作られた自転車のモニュメント(注1)


文化遺産の保護と未来への持続可能性: 国立民族学博物館の役割

みんぱくは 100 年、200 年後も活用できるよう、文化財の保護や保存方法など多くの作業に取り組んでいます。例えば、外部から収集した資料には特殊な殺虫処理などが施され、万全が期されています。また、40 を超えるデータベースを作成や、資料のデジタルアーカイブ化なども行われています。手軽に異文化を体験できる「みんぱっく」という学習キットもあり、全国の学校や教育現場に貸し出され、学生たちが実際に手に取って学ぶ取り組みです。(下写真もどうぞ)

外部から収集した資料には特殊な殺虫処理などが施される(注1)
手軽に異文化を体験できる学習キット「みんぱっく」(注1)


みんぱくのミュージアムショップでは、多くの書籍や民芸品を購入できます。私が、アルパカの毛で作られた手触りの良いアルパカの置物を手に取っていたところ、奥様がそれをこっそり購入し、後日、私の誕生日プレゼントとして贈ってくれました。その置物は今も棚に置いてあり、時々その感触を楽しんでいます。

アルパカの置物


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注1:NHK番組「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪:国立民族学博物館」より


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