定年退職した大学教授の新たな冒険

長らく勤めていた大学を2024年春定年退職しました。これまで研究に明け暮れ、それ以外全てを二の次にしてきた元教授が、世の中を体験していく様子をお伝えします。新しい発見や楽しい出来事の一方で、頭を抱えて戸惑うポンコツな瞬間もあることでしょう。彼の新たな冒険の日々をお楽しみください。

定年退職した大学教授の新たな冒険

長らく勤めていた大学を2024年春定年退職しました。これまで研究に明け暮れ、それ以外全てを二の次にしてきた元教授が、世の中を体験していく様子をお伝えします。新しい発見や楽しい出来事の一方で、頭を抱えて戸惑うポンコツな瞬間もあることでしょう。彼の新たな冒険の日々をお楽しみください。

最近の記事

化学の力で変わる道路メンテナンス最前線: 水で固まる新世代アスファルト (元教授、定年退職236日目)

現役時代は毎日車で大学に通っていました。車での通勤は私のささやかな楽しみであり、日々のモチベーションを高めてくれるものでもありました。我々の若い頃は、友人たちと車やバイクにどれだけ投資したかを競い合うような時代でした。給料に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」という言葉がありますが、私たちの世代は「車係数」の方が高かったかもしれません(笑)。車にまつわる話は長くなりそうなので、それはまた別の機会に。 さて、車を運転していて気になるのは、やはり道路の状況です。同じ道路でも、

    • もうポンプには戻れない? 「ビオレu 自動で出る! 泡ハンドソープ」を使ってみた (元教授、定年退職235日目)

      コロナ禍によって、私たちの生活は一変しました。マイナス面が多かった一方、プラス面も(探せば)少なからずありました。Zoom を利用した授業や会議の普及もその好例でしょう。先日も遠方からの研究相談を受けましたが、従来であれば研究員の方々が大阪まで出張する必要があり、短時間の相談のためにわざわざ来ていただくことに申し訳なく思っていました。しかし、現在はオンラインで効率的なディスカッションが可能となり、資料の共有や画面への書き込みもスムーズに行えるため、より深く議論できるようになり

      • 段ボールの進化がすごい! 驚きの梱包技術革新と多様な活用法 (元教授、定年退職234日目)

        コロナ禍をきっかけに、私はアマゾンや楽天などの宅配サービスをよく利用するようになりました。流通システムの安定化に伴い、現在ではノートパソコンのような精密機器さえも安心して購入できるようになっています。この背景には、梱包技術の進歩があります。 配送される商品のほとんどは段ボールに収められていますが、その内部は輸送中の衝撃や振動から商品を守るため、綿密に設計されています。従来は、商品を保護フィルムや緩衝材で包むのが一般的でしたが、最近では段ボール自体を緩衝材として活用する手法も

        • 救急車の「ピーポー音」誕生秘話: サイレン工場を訪ねて @探検ファクトリー (元教授、定年退職233日目)

          私の住まいの前には消防署があり、日頃からとても心強く感じています。消防署には様々な消防車が配備され、小さな子供たちが母親に連れられてよく見学に来ています。署員の方々は頻繁に訓練を行っており、特にハシゴ車の訓練時には何組もの親子が見上げては歓声を上げています。私も定年退職後は昼間に家にいることがあり、時折、一緒に眺めています(笑)。 私が救急車に乗ったのは、一度だけ、付き添いでの経験です。車内には様々な医療機器が整然と配置されており、とても興味深かったことを覚えています。特に

          進化する素材技術の最前線: 未来モノづくり国際EXPOレポート3 (元教授、定年退職232日目)

          約 30 年前、東京郊外に住んでいた私は、休日には時折都心を訪れていました。平日は通勤ラッシュで混雑する街も、休日の午前中は道路が空いていて、車で秋葉原の電気街や神田の古本屋街に出かけるのが楽しみでした。特に、当時の秋葉原電気街には、各種パーツを販売している店が立ち並ぶ狭い通路があり、宝探しのようでワクワクしたものです。奥様には「買いたいものもないのに」と呆れられながらも、毎回数時間をそこで過ごしていました。 先日、未来モノづくり国際 EXPO の「新価値創造展」を訪れた際

          進化する素材技術の最前線: 未来モノづくり国際EXPOレポート3 (元教授、定年退職232日目)

          未来を変える3つの革新的金属加工技術: 未来モノづくり国際EXPOレポート2 (元教授、定年退職231日目)

          前回の報告では、第2回 未来モノづくり国際 EXPO 2024 での自動運転モビリティや電動アシスト台車など、新しいロボット関連技術を紹介しました。今回は、特に注目を集めていた「素材」分野の最新技術を2回にわたってレポートします。まずは、未来のモノづくりを大きく変える可能性を秘めた、3つの革新的な「金属」加工技術に焦点を当ててご紹介します。 展示会場の金属関係のブースを巡っていると、最初に目を引いたのが「最強の黒」と「歯のない歯車」の展示でした。 反射率1%の黒いステンレ

          未来を変える3つの革新的金属加工技術: 未来モノづくり国際EXPOレポート2 (元教授、定年退職231日目)

          未来モノづくり国際EXPOで見つけた驚きの技術: 自動運転モビリティから次世代台車まで (元教授、定年退職230日目)

          11 月 13 日から 15 日までの3日間、「第2回 未来モノづくり国際 EXPO 2024」 がインテックス大阪で開催されました。本展示会は日本国際博覧会協会の協力のもと、日本の産業技術を国内外に発信するとともに、2025 年大阪・関西万博への期待を高めることを目的としています。展示は、モノづくり基盤技術、ロボット関連技術、先端テクノロジー、水・ファインバブル・環境技術、ファクトリー建設/減災、Well-being Tech の6分野で構成されていました。 ま

          未来モノづくり国際EXPOで見つけた驚きの技術: 自動運転モビリティから次世代台車まで (元教授、定年退職230日目)

          KALDIで見つけた懐かしの味とスターバックスの豆かすリサイクル新戦略 (元教授、定年退職229日目)

          アメリカの前菜を日本で再現!?先日、近くのスターバックス(スタバ)から帰る途中、一駅隣にある KALDI に立ち寄りました(北大阪急行は初乗り 100 円と格安です)。そこで「無塩トルティアチップス」「サルサソース」「チリコンカン」を発見しました(タイトル写真)。以前の note(11/2)  でも触れましたが、この組み合わせはアメリカでの定番の前菜で、私が滞在していたとき、学生パーティーの最初に必ず登場していました。日本では入手困難だった無塩トルティアチップスは見つけた喜び

          KALDIで見つけた懐かしの味とスターバックスの豆かすリサイクル新戦略 (元教授、定年退職229日目)

          「真綿」って、高級なコットンじゃなかったの? (元教授、定年退職228日目)

          現役時代に、化学の授業で「化学繊維」について講義したことがあります。繊維業界は一見古い分野のように思われがちですが、実際には新しい機能を持つ繊維が今も次々と開発されています。たとえば、超極細繊維、形態安定繊維、ストレッチ繊維、光や温度で色が変わる繊維、体温調節機能を持つ繊維、吸水速乾繊維、防臭・防ダニ繊維、難燃性繊維など、多岐にわたります。私自身、ユニクロのヒートテックやエアリズムがなければ、冬も夏も快適に過ごせません。 また、天然繊維の特性を化学繊維で再現する研究も進んで

          「真綿」って、高級なコットンじゃなかったの? (元教授、定年退職228日目)

          ブラタモリ「東海道五十七次」 淀宿~大阪: 秘められた徳川の戦略 (元教授、定年退職227日目)

          約 40 年前、私が日本でポスドクをしていた頃、学会支部の工場見学でサントリーの山崎蒸留所を訪れました。詳細な記憶は薄れているものの、整然と並んだ蒸留塔の壮観さや、貯蔵庫に眠る無数の熟成樽の光景は、今も鮮明に覚えています。発売初期のボトルや当時の映像の展示、さらにはテイスティングまで体験させていただきました。当時、角瓶やオールドしか馴染みのなかった私にとって、その奥深い味わいはまさに衝撃でした。(下写真もどうぞ:注1) さて、本題に戻ります。今回は前回からの続きで、NHK

          ブラタモリ「東海道五十七次」 淀宿~大阪: 秘められた徳川の戦略 (元教授、定年退職227日目)

          永谷園のお茶づけ海苔と東海道五十七次への旅: 新たな発見 (元教授、定年退職226日目)

          子供の頃、私はよくおやつや夜食に「永谷園のお茶づけ海苔」を食べていました。柳家小さん師匠が CM を務めた「あさげ」や「松茸のお吸い物」も美味しかったですが、お茶づけ海苔に特に惹かれた理由の一つは、付録として付いてくる「東海道五十三次」カードの存在でした。当時の小学生は皆、何かを集めるのが好きで、学校でそれを自慢し合うのが常でした。 私もご多分にもれず、切手や東海道五十三次カードを集めていました。ただし、切手では「月に雁」や「見返り美人」などの希少なものは高嶺の花でしたし、

          永谷園のお茶づけ海苔と東海道五十七次への旅: 新たな発見 (元教授、定年退職226日目)

          シンバルが奏でる音の深み: 町工場の職人技に迫る (元教授、定年退職225日目)

          先日の note(9/22) で掲載した「街角ピアノ」の記事では、ピアニストの角野隼人さんを取り上げました。その中で、彼の特別な演奏として紹介したのが、ピアノ一台で挑んだ「ボレロ」でした。ボレロは、小さなドラムが「タンタタタタンタン」と反復リズムを刻むところから始まり、徐々に楽器の演奏が重なっていき、最後にシンバルが鳴り響く壮大な曲です。 「交渉人 真下正義」に見るシンバルの重要性一昨日視聴した「踊る大捜査線」のスピンオフ映画「交渉人 真下正義」では、そのボレロのシンバルが

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          ホタテ漁業の進化と廃棄貝殻のアップサイクルによる万博ヘルメット (元教授、定年退職224日目)

          先日の note(9/29,30)では、大阪産業創造館が発行した「『こんなもの』からアップサイクル」(下記写真、注1)をもとに、消防用ホースが野球バットケースに転用された例や、カニ殻を活用したナチュラルコスメの事例を紹介しました。近年、不要になったものを資源(原料)に戻さず再利用する「アップサイクル」が注目を集めています。本稿では、ホタテ貝殻から開発された万博公式ヘルメットについて解説します。 ホタテ産業の最新事情NHK テレビ番組「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」におい

          ホタテ漁業の進化と廃棄貝殻のアップサイクルによる万博ヘルメット (元教授、定年退職224日目)

          子供の頃の夢が広がる場所: スミソニアン航空宇宙博物館訪問記 (元教授、定年退職223日目)

          『兼高かおるの世界の旅』との出会い小学生時代の私にとって、日曜日の朝の楽しみは2つのテレビ番組でした。日本テレビの『ミユキ野球教室』と TBS の『兼高かおるの世界の旅』です。特に後者の番組では、兼高さんが紹介する世界各地の風景や文化がキラキラしていて、海外への夢を膨らませてくれました(この番組は、兼高さんの 73 時間世界一周という新記録の樹立をきっかけに始まったそうです)。 ナショナル・モール:憬れの博物館群前回の note では、30 年前のアメリカ留学中、正月休みに

          子供の頃の夢が広がる場所: スミソニアン航空宇宙博物館訪問記 (元教授、定年退職223日目)

          憬れのFBI本部を訪ねて: 30年前のワシントンDC旅行記 (元教授、定年退職222日目)

          映画『スティング』から始まった FBI への憧れ高校時代、私が初めて映画館で観た作品は、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演の『スティング』とスティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマン主演の『パピヨン』でした。どちらを先に観たのかは覚えていませんが、いずれも素晴らしい大作でした。特に、『スティング』はとても印象的でしたが、複雑なストーリー展開に戸惑い、上映後にトイレで横に立った友人と「結局、最後の FBI の捜査官は味方だったのか、それとも敵だったのか?」と、

          憬れのFBI本部を訪ねて: 30年前のワシントンDC旅行記 (元教授、定年退職222日目)

          「モノポリー」の街でのカジノ体験記: アトランティックシティの思い出 (元教授、定年退職221日目)

          アトランティックシティを訪れたのは 30 年前、アメリカ留学時の正月休みにワシントンDC を訪問した際のことでした。以前から憧れていたカジノを体験しようと、わずか1泊でしたが、急遽ワシントンから足を伸ばすことにしました。 アトランティックシティはラスベガスほどではないにせよ、東海岸最大のカジノがある観光都市です。ニューヨークやフィラデルフィアからも近く、海岸のリゾート地としても栄えています。車が街に近づくと、高層ホテル群が姿を現し、期待が否応なく高まりました(下写真)。

          「モノポリー」の街でのカジノ体験記: アトランティックシティの思い出 (元教授、定年退職221日目)