日本各地の絶品蕎麦巡り: 蕎麦好き元教授が語る、こだわりの蕎麦の世界 (定年退職276日目)
新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
大晦日の午後にこの note を書いております。日本の年末といえば、多くの方が思い浮かべる風物詩の一つが年越しそばです。今回はそんな蕎麦について、気ままに語ってみようと思います。我が家ではここ数年、少々贅沢ではありますが、大阪の名店「道頓堀今井」の「おだしとそばを使った年越し鍋」を取り寄せています。本当は一回分ですが、到着した日には鍋料理として、翌日に年越しそばとしていただくという、「ちゃっかり+贅沢」な二日間を過ごすのが恒例となっています。今井といえばうどんが有名ですが、実は私はここの蕎麦も気に入っており、何より出汁が絶品なので、嬉しい年末です。
私は典型的な「蕎麦好き(蕎麦っ食い)」です。大阪でこれを言うのは「阪神ではなく巨人ファンです」と言うのと同じくらい勇気がいりますが、幼い頃から培われた味覚は変えられません。初めて蕎麦の魅力に気づいたのは、上野駅常磐線ホームの立ち食いそばでした。店の名前も定かではありませんが、天ぷらそばの美味しさに衝撃を受けたのが始まりです。大学時代は関西で過ごしたため、うどん文化に囲まれ、一時的に蕎麦から遠ざかりました。しかし、最初の就職先が関東の大学だったことから、再び蕎麦の本場に戻ることができました。
千葉県柏市に十数年住んでいた頃、友人から手賀沼を見下ろす「竹やぶ」という店を教えてもらいました。風雅な門をくぐり、つづら折の長い石段を登っていくと、隠れ家的な店が現れます。蕎麦の味に感動したのはもちろんのこと、蕎麦の産地だけでなく、醤油や薬味、水に至るまで全てにこだわる、その緻密な味わいに驚かされました。店主は蕎麦の名人とされ、「竹やぶ」系は数多くの弟子を輩出していると聞いています。(下写真もどうぞ)
江戸蕎麦の世界には「藪」「砂場」「更科」などの流派があります。東京に行くたびに、時間を作って蕎麦屋巡りをしていました。中でも印象的なのは「かんだやぶそば」です。注文が入るごとに店内に響く「せいろう~1枚~」と、唄う様に読み上げる声は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚えました。つゆは江戸前スタイルの辛口で(通の人が三分の一ほど蕎麦をつけてすするというのも頷けます)、実に美味です。他にも、日本橋の「室町砂場」(天ざるが絶品)、銀座の「よし田」(昔からあるコロッケそば)、大阪梅田の「永坂更科」(大阪で復活した)など、挙げているうちにお腹が空いてきます。(タイトル写真(注3)、下写真もどうぞ)
私の趣味である落語にも、蕎麦はよく登場します。師匠たちは噺の中で蕎麦をすする様子を、扇子を使って巧みに表現します(下写真)。師匠によっては、どう見てもうどんを食べているように見える人もいれば、見ているだけで蕎麦屋に寄りたくなるほど上手な人もいます。落語の「時そば」などで登場する「二八蕎麦」(蕎麦粉八割、小麦粉二割という配合)は、種物を二・八の十六文出提供するのが定番です。私が敬愛する柳家喬太郎師匠の「時そば」が最高です。
蕎麦の話を始めると尽きることがありません。以前、新潟の「へぎそば」の話を紹介しましたが(note, 6/12)、まだまだ日本各地に名物の蕎麦がたくさんあります。続きはまた別の機会にお話しさせていただきます。どうぞお楽しみに!
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注1:「竹やぶ」ホームページより
https://takeyabu.co.jp/kashiwa/
注2:「かんだやぶそば」ホームページより
https://www.yabusoba.net/
注3: DVD「落語 笑笑散歩(第一巻)」(Sony Music Direct)より
注4:「室町砂場」ホームページより
https://www.muromachi-sunaba.co.jp/