ショスタコーヴィチ「交響曲第6番」世界初録音
さて、まただらだらとクラシック音楽オタク話を書きますか。本日は珍しく数学の授業がありません。第5週ということもありますけど、家族サービス等で意図的に授業を入れなかった日を除くと、本日は、正月以来ではないかというくらいに久しぶりの「なにもない日」です。(それだけ仕事があるというのはありがたいことですね。感謝です。)ブログの予約投稿などはしました。もう、だらだらとオタク話をするくらいですね。また「好きなCD」の話をしますね。(まもなく本日の数学ブログは予約投稿されます。オタク話でないほうはそちらをどうぞお読みくださいませ。)
おそらく大学2年のとき(1995年)から持っている、つまり、28年くらい持っていて、いまでもひんぱんに聴く、好きなCDの話をします。ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団のSP時代の録音です。「First Recordings」と書いてあり、どれも世界初録音であるようです。シベリウスの交響曲第4番、「クオレマ」より「悲しいワルツ」、「テンペスト」より「子守歌」、そしてショスタコーヴィチの交響曲第6番です。
このシリーズでは、はじめてストコフスキーのフィラデルフィア管弦楽団時代の録音をご紹介すると思います。
なにしろストコフスキーは、ドヴォルザークの「新世界」すら世界初録音です。なにを録音してもかなり世界初録音だった時代なのではないかと思っています。ストラヴィンスキーの「春の祭典」しかり、私もすべては把握できていないものの、かなりのレコーディングが世界初録音なのでは、と思っています。
シベリウスの交響曲第4番は、1932年2月23日の録音と書いてあります。ストコフスキーは、シベリウスの交響曲でフィラデルフィア時代に録音したものが、この第4番しかありません。しかし、演奏会記録を見ると、たくさん演奏したようです。シベリウスの交響曲第5、6、7番をアメリカ初演したのはストコフスキーです(ただし、この順ではなかったな)。残念ながらシベリウスの5番、6番について、ストコフスキーの指揮した録音はひとつも残りませんでした。この第4番は、このほか、1962年3月16日のフィラデルフィア管弦楽団のライヴ録音が残されました。同じオケですから、区別に注意がいりますね。その1962年の演奏会は、ほかに、ウェーベルンのパッサカリア、ドビュッシーのグラナダの夕べ、ムソルグスキーの展覧会の絵、であり、すべて録音が残りました。第4番についてはこれだけです。第7番の録音は、全米青年交響楽団の1940年のものがあります(これも学生時代から持っている「好きなCD」であり、いずれ記事を書きたいです)。ほかに第7番は、ヘルシンキ市交響楽団のライヴがあります(1953年6月17日か18日。シベリウス・プログラムで、ほかにフィンランディア、交響曲第1番、ペレアスとメリザンド。CDになっていますが、音が悪くてあまり聴く気にならないです)。交響曲第1番の正式な録音は2度、1950年と1976年です。前者がものすごい名演奏で、これもいずれ記事が書きたいです。交響曲第2番は正式な録音は1度で1954年、ほかに1964年のライヴ録音が2つあります。
もっともフィラデルフィア管弦楽団時代のストコフスキーのシベリウス録音は、交響曲は第4番であるだけで、ほかに、このCDに収められた「悲しいワルツ」「子守歌」だけではなく、「フィンランディア」、「トゥオネラの白鳥」、ヴァイオリン協奏曲(ソロはハイフェッツ)があります。
このシベリウスの交響曲第4番は、私のシベリウス開眼の前後に聴いたものだと思います。私のシベリウス開眼は、自分で「フィンランディア」を演奏した(1994年の駒場祭)のよりあとで、1995年の夏、カセットテープで交響曲第6番(アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団)を聴いたときだと思います。そのころの購入だとわかるわけです。同じオケに、ショスタコーヴィチやシベリウスの好きな仲間がいて、彼の前で、この交響曲第4番の第3楽章冒頭のフルートソロを吹いてみせたことなどあることを思い出します。彼にスコア(当時はインターネットがありませんからね。IMSLPなんてないのです。彼から借りたスコア)を見せてもらって、この曲をCDで聴き、第3楽章の冒頭のフルートソロに聴こえたものは、2人で交互に吹いていることがわかったものです。とにかくこの交響曲第4番は気に入りました。
もともと、シベリウスの交響曲は、ある人が購入した第2番のCDから入門したわけです。そのとき私は中学生か高校生だったか。私がそのとき買ったのはマーラーの大地の歌(バーンスタイン指揮イスラエルフィル)で、さっぱりよさがわからず、マーラーとの不幸な出会いでした。とにかくそのシベリウスの交響曲第2番とフィンランディア、カレリア組曲の入ったアシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団のCDで入門したのでした。いい曲だと思いました。フィンランディアは、のちに採譜して、ピアノ連弾用にし、ある作曲家志望の同世代の仲間に見せたものです(その人、どうしているだろう。芸大の作曲科を目指していたけど)。とてもいい曲ばかりですが、後期シベリウスに目覚めたのはその1995年の交響曲第6番が最初だったと思います。しばらくシベリウスに夢中だったと思います。
このストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団の世界初録音では、第4楽章のグロッケンが、鉄琴とチューブラーベルで使い分けられています。のちにいろいろな演奏を聴くにつれ、だんだん傾向がわかって参りました。先述の1962年のライヴ録音では、すべてチューブラーベルになっています。また、この第4楽章は、のちに標準的とされるテンポより遅めのテンポが設定されており、このほうが私はしっくりきます。最初の刷り込みというのを超えて、このストコフスキーのテンポが最も曲にふさわしいと感じます。最後の最後でテンポを落とすところもすばらしい。自然な終わり方に感じます。オケもものすごくうまいですね。
自分でフィンランディアをやったときより、ストコフスキーのフィンランディアを聴いたのがあとであったのははっきり覚えていますので(そのCDもいまだに持っていて好んで聴いています。その記事もいずれ書きたいです)、それよりもこのCDはあとだろうと思いますね。この記事、だらだら書いているうち、だんだんこのCDの購入時期が特定されて来ています。1995年の夏の前後ですね。
「悲しいワルツ」は、はじめて聴いたのはいつだろう。ロスバウト指揮ベルリンフィルのCDを買ったときではなかったと思いますが…。ロスバウト盤は、フルートがニコレなのです。とくにこの悲しいワルツのフルートソロが絶妙なので大事に聴いています。このストコフスキー盤(1936年1月15日録音)が必ずしも絶対にいいと思っているわけではありません。ストコフスキーはこれを1949年に再録音しています。「子守歌」は逆にあまりほかで聴かない曲ですね。1937年11月7日録音。ストコフスキーはこれも1950年に再録音しました。
このほか、ストコフスキーは、シベリウスの作品では、「大地の賛歌」というのをアメリカ初演しています。長いことCDもなく聴くことのできない作品でしたが、YouTube時代になってようやく聴くことができました。ストコフスキーの録音はないと思います。
そして、ショスタコーヴィチの交響曲第6番が入っています。これも世界初録音です。1940年12月録音。フィラデルフィア管弦楽団としばらくの別れとなる直前の録音ですね。この曲はストコフスキーがアメリカ初演しました。ものすごく得意な曲です。生涯にわたってのレパートリーであり、1968年にシカゴ交響楽団でステレオ再録音をしています。そのときは、ほかにショスタコーヴィチの「黄金時代」組曲と、ハチャトゥリアンの交響曲第3番をレコーディングしており、同時並行で行われた演奏会のライヴ録音も残っています。ほか、このショスタコーヴィチ6番は、アメリカ交響楽団の最初の演奏会でも取り上げ(1962年10月15日。ほかにガブリエリのピアノとフォルテのソナタ、バッハのトッカータとフーガ、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番。録音は残っていません)、それからニューヨークフィルのライヴ録音もあります。
ストコフスキーは、ショスタコーヴィチの交響曲では、第6番以外には、第1番、第3番、第11番をアメリカ初演しました。ピアノ協奏曲第1番もアメリカ初演しています(ソロはユージン・リスト)。前奏曲変ホ短調を編曲し、録音もしています。(だいたい第5番を書く前のショスタコーヴィチに目をつけているところがすごいだろうと思うのですが。)フィラデルフィア管弦楽団では、第1番、第5番、この第6番をレコーディングしました。驚くべき演奏であり、とくに第5番は、現在、これが新譜として出ても驚異の演奏とされるのではないかという出来です。いずれこれの記事も書きたいです。そしてこの第6番。すばらしいです。例のショスタコーヴィチやシベリウスの好きだった彼に聴かせても(お互いに19歳くらいだったな。いまや48歳くらいになるが。彼も立派になってしまい、私のような、東大を出て落ちこぼれる人間は相手にしてもらえなくなった。まあいいや)、「屈指の名演でしょう」と言われて、わがことのように嬉しかったものです。さっきシベリウスのときに書いたことに似ていますが、第3楽章のテンポが絶妙で、いまの標準はこれよりだいぶ速いです(ムラヴィンスキーの影響かな)。このくらいのテンポがよい。最後でポコ・リットするところもよい。これは、その彼には評価してもらえなかったけど、先述のシカゴ交響楽団の再録音も好きなのですよね。それもいずれは記事にしましょう。ストコフスキーがフィラデルフィア時代にレコーディングを残したショスタコーヴィチ作品は、この第6番のほか、交響曲第1番、第5番、先述の前奏曲変ホ短調があるわけです。第3番はひとつも録音が残りませんでした。第10番はびっくりするような名演奏のライヴ録音が残った!第11番もライヴ録音でびっくりするようなものが残っている!第7番もすばらしいのが残っていますし、あと、私はあまり聴きませんが、第8番のカットだらけの録音が残っています。第1番も得意曲につき、ステレオ再録音があり、ライヴ録音も残っています。第5番はものすごく得意であり、1960年代の主要な客演レパートリーだったので、膨大なライヴ録音がありますね。
この1940年のショスタコーヴィチ第6番は、たとえば全米青年交響楽団の先述のシベリウス7番よりもあとの録音であり、ほんとうにストコフスキーのフィラデルフィア管弦楽団のしばらくの別れとなる直前の録音となります。オケがうまい!この、弦楽器のようになめらかな金管楽器はすごい。どうやって演奏しているのだろう。これは同時期の同じ第5番についてもそう感じることでして、すごいことです。歴史は繰り返さない。このような録音が残ることはもうないのではと思わされる、すごい出来なのです。
これは、購入から四半世紀以上がたつCDで、いまだによく聴いているものです。私がシベリウスやショスタコーヴィチの音楽に出会って親しむようになったのとずっと一緒に歩んできたCDです。宝ですね。
ごめんなさいね。ほんとうにだらだら書いていたら、ほんとうにだらだらした記事になった!なにが言いたいのか、さっぱりわからない記事ですね。とにかく、これが好きなのです。好きに理由はないのです。好きなものは好き。