ショートショート:ラムネ炭酸寝顔
恋人はお酒が飲めない。
でも飲みに行くのが好きだ。
アルコールがなくても、雰囲気で酔えるんだって。
恋人は陽気だ。
恋人はお酒が飲めない。
でもいろんな人と食事に行く。
アルコールがなくても、腹割って話せる友だちがたくさんいるんだって。
恋人は素直だ。
恋人はお酒が飲めない。
でもおつまみを作るのが上手。
僕のために…、ではなく、美味しいものは何でも好きなんだって。
恋人は器用だ。
恋人はお酒が飲めない。
でも、
でも…。
「ねえ、重いんだけど」
「んー?軽いの間違い?」
恋人は隣に座る僕に、ぎゅーっと体重をかけてきた。安物のワインを飲む僕の横で、恋人はラムネを飲んでいる。
「飲んでないのに、酔ってるみたい」
「ふふ。酔ってない。甘えてるだけ。私の特権でしょ?」
恋人はふわりと笑って、そのまま大あくびをした。
「眠いの?飲んでないのに」
「飲んでなくても眠くなるの」
やがて恋人は穏やかな寝息をたて始めた。
飲みかけのラムネから、微かに炭酸の弾ける音がする。
(410字)
※フィクションです。
たらはかに(田原にか)様の企画『毎週ショートショートnote』に参加いたしました。裏お題です。
気分転換=飲み会、になりつつある。思い描いていた大人とは違うけれど、否定するほどのこともないね。