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ショートショート:会員制の粉雪

「え、大分って雪降るんすか?」
「そら降るよ、普通に」
「ええ~」
県外の、雪の多い地域から大分に進学してきた後輩は、大袈裟に目を見開いた。

「でも全然降ってないですよね」
「今年はこのへん降ってないけど…。内陸の方はたくさん降るんで」
「信じられないっすね~、ちなみに先輩、雪は見たこと…?」
「だから、あるって!」
「へへっ」
「何笑いよん」
「じゃ、先輩に雪を体験させてあげましょう」
「へ…?」

で、後輩に言われるがまま、コンビニでお菓子やらおでんやらを買わされたのち、アパートに連れていかれた。
こたつに座っていると、後輩が突然電気を消す。え?と思っていると、ワンルームに雪が舞い始めた。


「お前、家にプロジェクターあるん?」
「うわ冷めること言う~、雪ですって」
「良いな、プロジェクター」
もう、と後輩は膨れっ面だ。

「…誰にでも見せるわけじゃないんですよ」
呟くような後輩の声が聞こえた。うつむいた彼女の顔が紅く見えたのは、気のせいだろうか。





(410字)





※フィクションです。
今回もたらはかに(田原にか)様の企画『毎週ショートショートnote』に参加いたしました。ひとくちに「大分県」といっても、地域によって気候や方言はさまざまです。





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