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がんサバイバーの定義、課題について


このnoteはこんな方におすすめです

  • がんサバイバーとはなにか知りたい方

  • 日本にがんサバイバーがどのぐらいいるか知りたい方

  • 日本におけるがんサバイバーの課題を知りたい方

このnoteで得られる知識を1枚で!

がんサバイバーの定義

がんサバイバーとは文脈によって複数の定義があります。
米国国立がん研究所の定義では、がん診断を受けた瞬間からその方が亡くなるまでの状態を指します。
また、治療が終了し、再発や進行が抑えられ、ある程度の健康を回復した方を指す場合もあります。
このnoteでは前者の定義、つまり、がんと診断されたことのある全ての方をがんサバイバーと呼ぶことにします。

がんサバイバーは日本にどのぐらいいるか

日本には、がんサバイバーが何人いるのか、正確な統計はありません。

2022年の国立がん研究センターと国際がん研究機関(IARC)の共同研究では、日本で診断から5年間生存している有病者数は約341万人と推計されています。
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor4

この「有病者数」とは、「過去5年以内にがんと診断され、推計対象年に生存している者の数」と定義されており、罹患数に生存率をかけて算出されています。

がんサバイバーには5年以上生存している方も多く含まれるため、実際には341万人よりさらに多く存在すると考えられます。また、がん治療の進歩に伴い、今後もがんサバイバーの数は増加すると予想されます。

がんサバイバーの日本における課題

フォローアップ体制の不足

血液内科領域では「造血幹細胞移植後患者指導管理料」が保険収載されておりフォローアップ外来で患者指導を行うたびに、1回300点(3割負担の方で900円)で、1か月に1回算定ができます。
しかし、固形癌ではこのような保険収載はなくどれだけ生活指導を行っても病院には1円も入らない仕組みになっています。体制が整っていない状況下では固形がんサバイバーのフォローアップ・体調管理を体系的に行っていくことは難しいです。

指導内容が多岐にわたる。

全米総合がん情報ネットワーク (NCCN)は様々ながんの治療に関するガイドラインを出しています。このガイドラインは最新の知識を元にその領域の専門医により更新されるもので、世界中の医師が参考にしています。日本の医師のカンファレンスでも「NCCNガイドラインでは〜」とプレゼンすると、「まず間違いない知識だな」と判断される信頼できる情報ソースです。
NCCNが出す多くのガイドラインの中に、「サバイバーシップガイドライン」があります。全313ページからなります。ログインしたら誰でも読めます。

https://www.nccn.org/guidelines/guidelines-detail?category=3&id=1466

サバイバーシップの課題が1枚のスライドにまとまっています。

NCCNガイドライン survivorship guideline Version 2.2024

上の情報を元にがんサバイバーのマネジメントを分類すると以下になります。

  1. がん治療の後遺症:心臓の健康、不安・うつ、認知機能障害、疲労、リンパ浮腫、疼痛、ホルモン関連の症状、性生活、妊孕性

  2. 睡眠障害

  3. 健康的なライフスタイル

  4. 免疫と感染

  5. 雇用と仕事復帰

課題は皆さんが思っているより多く多岐にわたることがお分かりでしょうか。3の健康的なライフスタイル、の中に食事や運動といった小項目もあり、多くの課題があることがご理解いただけたかと思います。
がん治療医はその分野を専門としていますが上記の全ての知識を持っているわけではありません。一人のがん治療医が診察時間内に全ての説明を行うことは不可能に近いです。

がん治療医とプライマリケア医の連携不足

先ほどの1-5のうち、特に2-5は日本ではプライマリケア医が専門として実践しています。プライマリケア医とは「かかりつけ医」のことで、いわゆる町のお医者さんをイメージしてください。
がん治療が一段落すると、患者さんは数ヶ月に1回体調確認のためにがん治療医に受診することもありますが、多くの場合プライマリケア医に医療の比重は移っていき、検診や高血圧の管理、風邪を引いたときにはプライマリケア医を受診します。通常、がん治療医は主治医がプライマリケア医に紹介状を記載して引き継ぎをします。しかし、サバイバーシップに関する情報が十分伝達されていないことが多くあり、重要な検診やワクチン接種がなされずに数年が経過してしまう、ということがあります。

上記のように、がんのサバイバーシップの管理は課題が多くあり、がん治療医やプライマリケア医にお任せするだけでは十分な生活習慣管理ができない状況になっています。


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